第8回日本財団「18歳意識調査」
―大学入試問題―
若者の大都市への集中、とりわけ東京への一極集中の是正に向け東京23区にある大学の定員増を10年間、原則として認めないとする地方大学振興法が制定され、2020年に廃止されるセンター試験に代って導入される大学入学共通テストの英語科目に民間試験の導入が検討されるなど「大学」をめぐる新しい動きが出ている。
日本財団・18歳意識調査の第8回で、そんな動きに対し17〜19歳の意見を聞いたところ、東京など大都市の大学の入学定員抑制に関しては賛成29.4%、反対41%、英語科目への民間試験導入は賛成46%、反対26.1%と双方とも意見が割れた。ともに30%近くが「その他」を選択、判断に迷っている姿もうかがわれ、さらに検討の必要性を示す調査結果となった。
地方大学振興法の正式名称は「地域における大学の振興及び若者の雇用機会の創出による若者の修学及び就業の促進に関する法律」。10年間の時限措置として東京への一極集中の是正を目指しており、地域における大学の振興が地方創生の要でもあるのは言うまでもない。現実に全国の学生総数の40%が首都圏、26%が東京に偏っている現実は国の形として“いびつ”であり、何らかの打開策が必要と思う。
しかし、昨年6月の公布後、東京都や日本私立大学連盟などから実効を疑問視する声が出されている。進学先を決めるのはあくまで本人であり、首都圏への人の流れは大学生に限らない。東京で学んだ学生がIターンやUターンなど地方を目指す傾向も出始めている。調査でも「その大学に入りたい学生が進学できなくなる」、「進学したい学生の気持ちを考えていない」といった反対意見が挙がっている。
一方で「大都市の私立大学に進学できなかった人が地方に来る可能性がある」、「大学定員が減れば学生のレベルが上がる」といった賛成意見も。どちらにも一理ある気がするが、まずは大学が地元の高校生や都会の高校生にも魅力ある場に生まれ変わる自助努力こそ先決であろう。そうでなければ地方大学振興法も“絵に描いた餅”に終わりかねない。
一方、大学入学共通テストの英語科目への民間試験の導入には、いくつかの国立大学が「必須」としない方針を打ち出し、報道を見る限り大学の足並みはそろっていない。調査でも「英語を積極的に学ぼうとする人が増え、グローバル社会に貢献することになる」といった賛成意見の半面、「受けられる家庭と受けられない家庭が存在する以上、格差拡大を防止するためにも導入すべきではない」といった反対意見も目立つ。いずれにしても地域や経済的事情で民間試験を受ける機会に差が出るようでは公平性に問題が残り、大学の対応がバラバラなまま強行すれば受験生も混乱する。調査結果からも、さらなる検討が必要な気がする。