「ちょっといい話」その98
―三 題―
日本財団では、古民家などをユニークな方法で活用し、障害者が活躍する場としてくれる団体を支援しているが、既にこの2年ほどで全国に18カ所が開業している。その中の直近の例を紹介したい。
一つ目は、京都府長岡京市の18世紀半ばに建造された有形文化財「中野家住宅」の活用で、旧西国街道に面する住宅は、木造2階建てで農家と町屋の特徴を持つ見事な屋敷である。この建物で今年11月、地元の京野菜や丹後の鮮魚などを生かしたおばんざいが楽しめる茶房「なかの邸」がオープンする。一般財団法人「暮らしランプ」が18〜50歳代の障害者10人を雇用し、都会の喧騒から離れ、緑豊かな静かな庭園を眺めて安らいだ気分を味わいながら古民家空間で食事を楽しめる新名所にしたいと、代表の森口誠さんは張り切っておられる。
日本財団は2,405万円を支援した。
なかの邸
二つ目は、京都市中京区の有名な錦小路市場に開店した日本料理店「斗米庵」。屋号は、ここに青物問屋の長男として生まれた伊藤若冲の別号から取った。若冲は作品一点を米一斗と交換したため名乗るようになったという。京の食文化の原点である錦市場で、料理人を目指す障害者を育て、社会に送り出そうという構想に共鳴いただいたミシュラン2つ星「祇園佐々木」の主の全面的協力のもと開店した。以来、連日観光客を中心に予約がいっぱいだという。修行中から法定最低賃金以上の給与を得、さらに高みを目指そうという全国初の事例であり、今後にますます期待したい。
日本財団は8,586万円を支援した。
斗米庵
三つ目は、福井県若狭町の熊川宿にある江戸末期から銀行や酒蔵として利用されてきた古民家を改修した「熊川宿若狭美術館」で、就労の場となるばかりでなく、障害者や子どもの美術作品、現代美術作品等も集め、地方からの芸術文化の発信拠点として地域の活性化を図り、障害者アーティストの発掘・支援も行うと、長谷川光城理事長の志は大きく、成功を大いに期待したい。
日本財団は4,240万円を支援した。
若狭熊川美術館