「良書を探すには」
―週刊読書人―
テレビ、インターネット、趣味の多様化などにより、読書をする人は急激に減少し、出版業界は右肩下がりを続けている。
かつては私も町の本屋を訪ねるのが楽しみだったが、次々にシャッターが下り、次第に本屋まわりも少なくなった。好奇心は森羅万象に及ぶが、良書に出会う機会は思いの他少なくなった。そのため新聞の書評欄を参考にしたり、私の読書指南番である日本財団評議員・鳥井啓一氏からの推薦本を頼りに読書を続けてきた。
一昨年、私を主題として作家・高山文彦氏が書かれた『宿命の子』が、御厨貴・東大名誉教授よって『週刊読書人』(280円)に書評が掲載されたのを機会に愛読者になった。どちらかといえば左翼寄りかも知れないが、私にとって問題ではない。
8ページ立ての新聞は実に読み応えがあり、たっぷり時間が必要である。昨年12月22日付の年末回顧総特集号は、私の個人的意見ではあるが、新年の五大新聞紙全てを合わせても遠く及ばない充実した内容であった。
宮台真司、苅部直、渡辺靖による鼎談「民主主義は不可能な思想か」は2ページ半に及び、深く議論を掘り下げた内容であった。2017年度の文藝の総括では、外国文学:イギリス、アメリカ、フランス、中国、ラテンアメリカ、韓国、ロシアの翻訳本のすべての紹介があり、ノンフィクション、児童文学、短歌、俳句、ミステリー、詩、SF、時代小説、女性科学、科学技術、マスコミ、論潮、経済学、哲学、社会学、芸術では美術、演劇、写真、映画、音楽について、歴史については東洋史、日本史、西洋史等々の書評があり、誠に読み応えがあった。
その上、朝日、毎日、読売、日経、産経の書評案内まである。また、2017年度の文学賞(小説、評論、児童文学、詩、短歌、俳句)や文化賞には大宅壮一賞、菊池寛賞、講談社出版賞など、閑遺しにいくつあるか数えてみた。
文学賞(小説、評論)は芥川賞、直木賞を初め72もあった。児童文学賞も以外に多く37。中には産経児童出版文学賞のように10名以上の受賞者がいる賞も幾つもある。
詩、短歌、俳句では斉藤茂吉賞、中原中也賞など67。文化賞にいたっては芸術選奨、日本芸術院賞にはじまり、日本自費出版文化賞や料理レシピ本大賞まで137もあり、数百人が受賞している。
読者の急減、出版文化の危機とはいうものの、出版文化に関する賞は隆盛期とかわらないのが可笑しい。販売促進のツールとして必要なのであろうか・・・
私の知識不足のせいではあるが、それぞれ特色ある良書を出版している零細出版社が意外に多いことを『週刊読書人』で知った。早速『立山信仰と三禅定』(福江充著 岩田書院)」を見つけた。8800円と多少高値ではあるが、発行部数はたったの300部。三禅定とは富士山、立山、白山のことで、三霊山巡礼の習俗について江戸時代の実態を記した書物である。
日本の出版文化を力強く支えているのは、大出版社は勿論のこと、多くても数十人、場合によっては10人程度で、志高く赤字覚悟で活躍されている多くの零細出版社のお陰であることを教えてもらった。
読み応えある『週刊読書人』は、月刊雑誌に優るとも劣らない質量であり、良書に出会う機会も数多くある。
是非一読、そして購読をお勧めしたい。