「アフリカ開発会議」その1
―TICAD Y―
8月27日〜28日の二日間、日本政府主催によるアフリカ開発会議(TICAD)が初めてアフリカのケニアで開催された。
TICADオープニング会場
今まで横浜で開催されてきたので、日本政府の指導で会議や警備のあり方、首脳会談等々、自主的に判断して日本流の几帳面な手順通りの運営がなされてきた。しかし、今回はケニア政府の協力を必要とするため、外務省の担当者とケニア政府との協力体制の確立と、何よりも二日間での40ヵ国以上のアフリカ諸国の大統領、首相等との会談設定、移動の警備等々、新幹線タイムといわれる日本の時間厳守のスケジュールとはいかず、開会式が30分も遅れるハプニングが象徴するように、日本側関係者の苦労は想像を絶するものがあったと思われるが、結果は、安倍総理のスピーチの評価は高く、会議全体の評価も良好で、関係者の努力を多としたい。
日本への関心は高く、JICAをはじめ、各企業の出展ブースには多くの関係者が見学に訪れていた。近年のアフリカは、資源獲得を目的とする中国の援助攻勢が凄まじく、そのため多くのトラブルも発生しており、「中国第二のアフリカ」(ハワード・フレンチ著)や「喰い尽くされるアフリカ(欧米の資源略奪システムを中国が乗っ取る日)」(トム・バージェス著)を読むまでもなく中国の新植民地主義かといわれ、警戒感を持つ識者も多い。しかし、中国指導者の頻繁な訪問と圧倒的なODAの額は、正直、日本は対抗出来ない。
ただ、これは表面上の事で、日本が長年に亘り支援してきた反対給付を求めないODA支援は、アフリカ諸国で高い評価を受けていることも事実である。
TICAD分科会で発表
日本のODAによる道路、港湾、飛行場、その他建築物等の品質は高く、ハードインフラ支援も大切ではあるが、中国のODAと金額で争うのはまったく意味のないことで、日本の得意なソフトインフラと呼ばれる人材育成のためのJICAの専門家研修、文部科学省の官費留学生受入れ、海外青年協力隊の活動の評価はきわめて高く、アフリカ諸国28ヵ国を訪ねた筆者の経験では、各国の大臣、高級官僚にはこのシステムによって来日、学んだ人が予想以上に多く、日本での研修を誇りを持って語ってくれた。我々日本人はもっとこの事を知るべきだし、この分野への支援に力を注ぐことこそ、中国ODAとの差別化に必要だと考える。
「人を育てるのは100年かかる」との言葉があるが、人材養成こそ、彼らによる彼らのための真のアフリカ諸国の発展につながるものと確信する。戦前、日本はアジア諸国から優秀な南方留学生を受け入れ、多くの逸材を輩出した経験がある。
又、日本の諸外国への情報発信の遅れは、政府も懸命に努力しているところではあるが、中国、韓国に比べて大幅に遅れているのが現実である。日本の支援で学んだアフリカ諸国の方々の人的ネットワークを結成し、日本の情報発信の強化をはかっていくことをアフリカ支援の柱としていくことも、20〜30年後、真にアフリカ諸国に信頼され、頼りにされる日本になるためには不可欠ではないだろうか。
あせることはない。とかく国際会議でのコーヒーブレイクでは「アフリカは何をやっても駄目だ」との悲観論がささやかれるが、そんなことはない。私はアフリカで30年間汗をかいてきた。リンカーンの言葉ではないが、日本の人材養成によって、「アフリカ諸国民の アフリカ諸国民による アフリカ諸国のための国造り」は可能と、私は考えている。