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resize.png日本財団はハンセン病の差別撤廃を訴える応援メッセージサイト「THINK NOW ハンセン病」を開設。皆様からのメッセージを随時募集・配信しています。
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8月12日(水) [2015年08月12日(Wed)]

8月12日(水)

3:30 ホテル発

4:00 空港着

@ 朝食は空港にて.jpg
朝食は空港にて


5:30 クイアバ発

8:00 ブラジリア着(空港待機約2時間)

10:30 ブラジリア発

12:40 ブラジル・レシフェ着

A海外沿いのレシフェに到着.JPG
海沿いの町、レシフェに到着


13:30 ホテル着

14:45 ILEPコーディネーター

15:00 イラン・コスタ(Dr. Iran Costa)州保健局長との面談及び
    保健局のハンセン病担当者からの州のハンセン病対策に対するプレゼンテーション

B保健局長との会合.JPG
イラン・コスタ州保健局長との会合


16:40 Globe TVインタビュー

Cテレビのインタビュー.JPG
TVインタビュー


20:00 コスタ州保健局長との夕食会

D局長との夕食会.JPG
局長との夕食会

「ハンセン病制圧活動記」その28―大国インドからハンセン病がなくなる日まで― [2015年08月12日(Wed)]

「ハンセン病制圧活動記」その28
―大国インドからハンセン病がなくなる日まで―


東北新生園機関誌『新生』
2015年6月


 時はさかのぼるが、2013年8月28日から30日の3日間、インドのニューデリーを訪れた。私が第2の故郷と呼ぶインドへは、今回の訪問で47回目を迎えた。2泊2日、48時間の短い滞在であった。

 今回の目的は、今後のハンセン病対策についてインド政府保健省の事務次官と面談、昨年10月に発足したハンセン病国会議員連盟の会合への出席、そしてハンセン病回復者の経済的自立に向けて活動を展開しているササカワ・インド・ハンセン病財団の理事会に出席することであった。

 初日、朝一番にWHO東南アジア地域事務局にて世界のハンセン病制圧活動の責任者であるサムリー事務局長と面談。前月7月24日からの3日間、バンコクで国際ハンセン病サミットがWHOと日本財団との共催で開催された。近年ハンセン病の患者数の減少が停滞している懸念から、年間1000人以上の新規患者数を持つ17ヶ国から政府代表が参加し、専門家、NGO、ハンセン病当事者などあらゆるステークホルダーとともに、ハンセン病対策に力を入れることへのコミットメントが表明された。本サミットの共同提案者であったサムリー事務局長にサミットが成功裏に終わったことへの謝礼と、特に患者数の多いインド、ブラジル、インドネシアの3ヶ国に重点を置き、各国においてバンコク宣言のフォローアップに力を入れていくことを再確認した。

 国際ハンセン病サミットにおいてただひとつ残念だったことは、世界最大の患者数を抱える大国インドから政府の代表が姿を見せなかったことである。そこでインド政府保健省の事務レベルのトップであるケシャブ・デシラジュ保健次官、アンシュ・プラカーシュ次官次席、国家地方保健計画を担当されているアヌラダ・グプタ局長、ハンセン病局長のC・M・アグラワール博士、局長代理のA. K. プリ博士と、保健省内の関係者と並んで面談。一方、WHO側からは世界ハンセン病プログラムのチームリーダーであるスマナ・バルア博士、コンサルタントのランガナサ・ラオ博士、東南アジア地域事務所のハンセン病プログラム担当アドバイザーであるジーザズ・パウロ・ルイ博士、そしてWHOインド事務所のナタ・メナブデ代表が同席。ハンセン病当事者、回復者の代表であるナショナル・フォーラム(現 インドハンセン病回復者協会)のナルサッパ会長もハイデラバードから駆けつけ、バンコク会議の報告とインドのこれからのハンセン病対策についてさらなる活動の強化を要望した。

 インドでは2010年より、年間新規患者数発見率が1万人に1人以上である209の県を定義し、重点的に新規患者を発見するための活動を行っている。2012年〜2013年の1年間で報告された13万人のうち、実に2万人もの方々は保健ワーカーやボランティアの家庭訪問で発見されている。結果的に患者数は昨年より5%上昇。表面上患者数が増えたことは危惧すべきサインではあるが、それまで診断がされていなかった隠れた患者が診断され、治療が行き届くようになったことは歓迎すべき流れともいえる。

 一方で、1軒1軒家を回るような新規患者発見のための活動は費用対効果が非常に低いことから、通常の一般統合医療の中で診断・治療を可能にしなければ、ハンセン病対策のサービスが持続的とはいえないと指摘する専門家の声もある。

 発展途上国のインドの国土は日本の9倍以上あり、ハンセン病対策のサービスを広い国土の隅々まで行き届かせることは容易なことではない。対策を講じるにもまずは現状を把握することが不可欠であり、現在のハンセン病患者数を正確に把握するためには、各州レベル、県レベルにおいて患者発見活動に力を入れていくことが第一歩となるだろう。患者数の多い蔓延州において州政府のコミットメントを促すためにも、これからもインド各州への訪問が欠かせない。

 日本財団では毎年世界ハンセン病デーに合わせてハンセン病回復者への差別撤廃に向けたグローバル・アピールを世界各界の著名人の協力を得て発表しているが、来年2014年は各国の国家人権委員会からの賛同をもらうべく準備を進めており、インドからも協力を得るため、インド国家人権委員会バラクリシュナン委員長を訪ねた。インド国家人権委員会はハンセン病の問題について深い関心を示してくださっており、2012年10月にインドにおいてハンセン病と人権国際シンポジウムのアジア大会を開催した際にも出席された。また同年には国家人権委員会が主催し、ハンセン病をテーマに各州の人権委員会代表を集めたワークショップも開催された。夏期と冬期、年2回の恒例となっている法律や人権を専攻する学生によるインターンシップにおいてハンセン病をテーマとしたセッションを設けたり、デリー首都圏内の中学校においてササカワ・インド・ハンセン病財団が差別撤廃の啓発のための授業を行う活動資金も提供されている。

パラクリシュナン委員長(中央)とナルパッサ会長.JPG
パラクリシュナン委員長(中央)とナルサッパ会長


 八木日本大使に表敬後、午後には再びWHOインド事務所にメナブデ代表を訪ね、インドのハンセン病の現況について詳細な説明を受けた。

 夕方は、デリー中心地にあるディネシュ・トリベディ国会議員の自宅へ。私の長年の夢であるインドにおいてハンセン病問題の啓発をはかるための国会議員連盟の集まりがあった。鉄道大臣と保健家族福祉副大臣を務められた経験のあるディネシュ・トリベディ議員が発起人となり、合同発起人であるマドゥ・ヤスキ議員を始め52名の国会議員が連盟に参加。今回の会合には国会会期中にもかかわらず16人の議員が参加し、ナショナル・フォーラムの代表のナルサッパ氏も同席した。トリベディ氏の挨拶に続き、40年来取り組んできたハンセン病との闘いについて話したところ、皆さん熱心に耳を傾けてくださった。

トリベディ議員が中心となった会合 (2).JPG
トリベディ議員が中心となった会合


 議員連盟では、ハンセン病問題を優先課題として取り組むよう国会等で積極的に取り上げていくこと、一般に向けた医療面社会面両方の啓発活動、そして低所得者層に向けた政策や各国会議員が持つ地域開発基金をコロニーの環境改善のために役立てることなどを目標として取り組んでいくことが決定されており、ハンセン病患者、回復者の生活向上と差別撤廃に向けて大きな支援者を得たことになった。

 翌日、30日は、朝食後にまずハンセン病回復者の全国組織ナショナル・フォーラムのナルサッパ会長とヴェヌゴパールと会い、彼らの活動の現状についての報告を受けた。

 続いてはササカワ・インド・ハンセン病財団(通称SILF)の理事会。財団の理事会というと、議事次第通りに書類が回覧されて承認される風景を想像されるかもしないが、この財団の理事会は一味もふた味も異なる。まず議論される書類の量は実に88ページに渡る分厚い資料。事務局長からの報告に対して各理事が真摯に意見を出し合い、熱い議論が繰り広げられ、会議が予定時間を超過することも珍しくない。

 SILFは「インドのハンセン病コロニーから物乞いをなくす」という壮大な目標のもと、2006年の設立以来、ハンセン病回復者の経済的自立を最大の柱として活動を展開。民族服サリーの販売やリキシャ操業など、各コロニーの立地と回復者のスキルを生かしたビジネスを立ち上げるための資金を提供しており、現在ではインド国内16州において約150のビジネスが立ち上がっている。

SILF理事会のメンバーと.JPG
SILF理事会のメンバーと


 近年は第二世代であるハンセン病回復者の子どもたちの教育支援にも力を入れて取り組んでいる。教育支援プログラムは、女性を対象とした看護師養成奨学金と、男女両方を対象とした職業訓練プログラムの2種類。

まず看護師養成については、インドステート銀行とサー・ドラブジ・タタ基金からの寄付をいただき、2011年より35人の子どもたちに国の認定を受けた看護師養成コース4年間の受講を可能にしてきた。インドでは、女性にとって看護師は伝統的にとても人気の職業であることから、この奨学金は希望者が多い。応募資格の条件には合うものの資金が限られていることから断らざるを得ないケースが多いことは残念であり、なんとか一人でも多くの希望者に報いるため、インド企業の寄付協力先を増やさなければならない。

 職業訓練プログラムは、10年生までの教育を修了した人たちを対象に、さまざまな店の販売員やファストフードの配達など、雇用が足りていないサービス業に就職しやすくするための基礎的なトレーニングを行うもので、2012年よりそれまでに66人の若者たちが修了し職に就いていた。加えて、2013年新たに国立職業開発協会より新たに350人分のトレーニング費用の寄付が決定し、各州を回って希望者を募っていく予定となった。

 インドのハンセン病の社会面の問題においては、当事者の経済的自立をどう進めていくかという課題と並んで、第二世代である若者の社会参画をどう実現するかという課題がある。全体の数から見れば一部ではあるものの、ハンセン病コロニーの出身者であるというレッテルを外して、一般社会の競争の中で成功できる若者が出てきていることはとても明るい兆しであり、我々が設立した財団がその機会を提供できたことは非常に嬉しく思う。

 関係者の努力の甲斐あって、インドにおけるハンセン病とそれにまつわる差別をなくしていくための闘いは、国会議員や人権委員会など、さらに幅広い層を巻き込んで展開されている。しかし問題が解決したといえるようになるまでの道のりはまだまだ遠く、手綱を緩めることはできない。今年は特に各州への訪問に力を入れ、ハンセン病対策が隅々まで行き渡るようになるまで、またハンセン病回復者が尊厳をもって生きられる社会となるまで、引き続き関係者と手を携えて取り組んでいく覚悟である。
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