「寄付文化の醸成」
―世界一はミャンマー―
日本は財政的には1000兆円を過える借金をかかえ、家計に置き換えると月給50万円の人が40万円の借金をして月々90万円の生活をしているわけで、これがいつまでも続くわけのないことは小学生の算数でもわかることである。しかし政治家も国民も、ダチョウのように危機が迫るのに頭を砂の中に隠して見ぬ振りをしている。
このような財政事情の中で、残念ながら社会には格差が広がり、解決しなければならない社会課題が多く現出してきた。
日本財団が手掛けている事業、望まない妊娠による出産児の養子縁組問題、多くの孤児の施設生活から家族の愛情の中で育てる里親制度の充実、刑務所からの出所者の再犯防止への取組み、IQが高く、普通の学校になじめない子供は不登校児となっており、この異才児の教育問題、また、2020年のオリンピック、パラリンピックへの話題だけは先行するが、障害者が健常者と共に活躍する社会はお題目だけである。そして、これらは多くの社会課題のほんの一部でしかない。
官だけが民を支える時代は既に終わった、これからは民が官の不足している所を補い、民が民を支える社会に転換しなければならない。
戦後70年、民主主義の名の下、国民は権利の主張・獲得を当然のこととし、政治家も一票欲しさにばらまき行政に終始してきた。その結果としての借財1000兆円である。心ある人々は、これでは駄目だとNPOを中心に多くの社会活動家が努力されている。しかし、これにも財政的な限度がある。
かつて、亡父良一は、金のある者は金を出し、知恵ある者は知恵を出し、金も知恵もないものは体力を出し、皆で社会のために働こうではないかと訴えていた。日本財団もなんとか国民の寄付文化を醸成したいと努力してきたが、力不足、努力不足は否めない。方法論を含めて、国民への寄付文化の醸成への啓蒙活動こそ日本財団の大切な活動の一つであると考えている。
イギリスのチャリティーズエイド財団が、160カ国を対象にワールド・ギビング・インデックス(最も施しをした指標)を発表した。
それによると、2014年はミャンマーとアメリカがトップを分けた。次いでカナダ、アイルランド、ニュージーランドと続く。
この財団はチャリティーでの寄付を促進するため財団で、他人を助けた人口の数をベースに独自のランキング手法を使って国のランキングを決めている。その指標の元になるのが、アカの他人に対して寄付(ほどこし)をする、ボランティアにどれだけ時間を費やしているかが元になっている。
トップにアメリカが入ることはGDPの高い国ということで理にかなっている。しかし、比較的貧困として位置づけられているビルマ/ミャンマーは、長きにわたり独裁政治が続き、近年ようやく民主化に舵を切ったばかりの国であり、驚きである。
ミャンマーの場合は文化宗教的な観点でトップになったと思われる。ミャンマーの場合はかなり多くの人たちがお金の寄付を主にする国民性である。それは上座部仏教(テーラヴァーダ)が根強く、おおよそ50万人の僧侶が一般の人から喜捨(Donation)を受けていると言われている。上座部仏教というのは恵みを得るためには僧侶に喜捨することが重要であるということ。これがその文化に根付いているからであろう。
そしてお金の寄付の金額ランキングによると、アメリカは9位である。ですが、この寄付金額は過去1カ月間に何パーセントの人が寄付したかという情報に基づいているからである。ということは、この結果には大口ドナーが入っていない可能性もあり、アメリカが9位になっていると考えられる。
World Giving Indexランキング
@ ミャンマー @アメリカ Bカナダ Cアイルランド Dニュージーランド
Eオーストラリア Fマレーシア・・・・日本は90位、韓国60位、中国128位
下記3項目の合計点(いずれも過去1カ月に)
@ 手助けの必要なアカの他人へほどこしをしたことがあるかないか。
A 寄付したことがあるかないか。
B ボランティアしたことがあるかなか。
*トップ20にG20の国は5カ国しか入っていない。
2009年以降、世界の寄付金は男性より女性の方が多い。女性が社会進出していない国があるにも関わらず女性の方が多くが寄付をしているのが世界の兆候である。
この記事は2014年11月19日付、ワシントンポストを参考にしました。