「日本財団記者発表会」
2014年4月10日
於:日本財団
日本財団では、説明責任と透明性を確保するため、毎年4月に当年度の事業計画や予算について報道関係者に説明する機会を設けている。これは曽野綾子前会長の発案ではじめたものである。
現在進めている事業4件と、新年度からの2件の内容について、概略を説明したい。
【災害復興支援特別基金】
これは東日本大震災で問題になった『義援金』と『支援金』の相違とも関係する。
『義援金』は被災者に渡されるお金で、専門家や有識者といわれる方々で構成される会議で配分方法や配分額が決定される。多くの国民、企業、外国からの支援を含めると、私の推定だが、4500億以上の巨額の浄財が集まったものと思われる。公平・公正さが求められるため、阪神淡路大地震の時には配分の遅れが指摘され、国会でも問題になった。今回も国民からの批判があり、急遽、厚生労働省で会議が開催され、2〜3時間で配分額が決定したようであった。
『義援金』に対して『支援金』は、災害発生時に現地で活動してくれるNPOやボランティアの派遣に必要な費用で、日本財団ではNPO支援だけで1件100万円、約7億を拠出した。
南トラフ問題から、太平洋沿岸ではいつ地震や津波が起こるかわからない。日本財団では東日本大震災の経験から「備えあれば憂いなし」、日頃からの準備が大切だと考え、300億円の災害復興支援特別基金を6年間で積み立てる計画で、広く国民や企業からもご支援願いたいと熱望している。
*基金で想定している主な事業は下記の通り。
NPOボランティア団体が行う支援活動への助成
企業・学生ボランティアの派遣
要援護者への支援
被害者の住居などの復旧支援
臨時災害FM局の開設、運営支援
避難所のアセスメントの実施
災害ボランティアリーダーの養成とネットワーキングの形成
等々。
【第3回国連防災世界会議への対応】
2015年3月14〜16日、東日本大震災から4年が経過して仙台で開催される防災世界会議は、各国首脳、国際機関代表、NGO等、約4万人の参加が期待される10年に1度の国際会議である。
日本財団では、東日本大震災での障害者の死亡率が住民の約2倍であったことを重視。今までの防災会議では検討されてこなかった『障害者と防災』について議論と提言を行うべく準備をしている。
今年4月22〜23日には、せんだいメディアテークで、日本財団、国連アジア太平洋経済社会委員会、リハビリテーション・インターナショナルとの共催で、2015年の防災世界会議で提言する『障害者と防災』についての準備会議を開催する。
【日本財団在宅看護センターの設置】
高齢者の在宅ケアの需要が急増している。日本財団ではこの要望に応えるべく、笹川記念保健協力財団と共に『日本財団在宅看護センター』を起業・運営する人材を養成。将来的には全国200ヶ所に設置して全国的なネットワークを築くことを目標にしている。受講者には奨学金、生活費、交通費の支援もあり、起業には建物、車輛整備等、必要な支援を行っていく。
*詳しくは下記にお問合わせください。
公益財団法人
笹川記念保健協力財団 事業部(ホスピス緩和ケア担当)
〒107-0052 東京都港区赤坂1-2-2日本財団ビル5階
TEL:03-6229-5390 FAX:03-6229-5395
E-mail:smhf_hospice@tnfb.jp
【アール・ブリュット美術合同企画展】
アール・ブリュットは障害者の優れた芸術作品のことだが、日本財団はこの立場をとらず、「優れた芸術作品の作家がたまたま障害者であった」との考えである。ボーダレス・アートミュージアムNO-MA(滋賀県)の北岡氏とともにパリで行った展覧会は、会期を延長するほどの人気で、日本でもようやくその存在を評価する動きが出てきた。
日本財団では、パリ展に出展した多くの優れた作品の寄贈を受けたり購入したりして約700点を保有している。日本財団が各地に支援したこじんまりとした美術館4館が、日比野克彦氏の監修で8月〜9月にかけて合同企画展を開催する。
*参加美術館は下記の通り
みずのき美術館(京都府)
鞆の津ミュージアム(広島県)
はじまりの美術館(福島県)
藁工ミュージアム(高知県)
*お問い合わせ先
日本財団 公益・ボランティア支援グループ
アール・ブリュットチーム TEL:03-6229-5161 Fax:03-6229-5160
以上、長々と記者会見で行った総括説明の一部です。
次の2件は新規プロジェクトとして記者発表したものです。
【未来のエジソンを!! 異才発掘プロジェクト】
沢渡一登を中心にした若手のアイディアにより、東京大学先端科学技術センターに協力し、突出した能力はあるが現状の教育環境に馴染めず、不登校傾向にある小・中学校生を選抜し、継続的な学習保証及び生活サポートまで提供することで、将来の日本を代表する人材を養成するものである。当面、東京大学に『日本財団基金』を5年間で5億円提供する。全国から毎年10名程度を抜粋し、5月に募集、7月に決定の予定である。
夢は大きく、未来のエジソン、アインシュタイン、スティーブ・ジョブスやゲイツを育てたいと願っている。
正式名称は『ロケットプログラム』(ROOM of CHILDREN with KOKOROZASHI and EXTRAORDINARY TALENTS)である。
読者のご近所に神童がおいでなら下記に連絡下さい。
*問い合わせ先
東京大学先端科学技術研究センター 人間支援工学分野 担当:平林、新谷
〒153-0014 東京都目黒区駒場4-6-1 先端研3号館 309号
TEL:03-5452-5064 E-mail:roket@bfp.rcast.u-tokyo.ac.jp
日本財団 異才発掘プロジェクト(ROCKET) 担当:沢渡、高島、吉田
〒107-8404 東京都港区赤坂1-2-2
TEL:03-6229-5111 (代表)
E-mail:cc@ps.nippon-foundation.or.jp
【民間養子縁組団体への支援協力】
日本は養子縁組では後進国である。日本財団では、不運にも施設に預けられた赤ちゃんや幼児を「施設から暖かい家庭へ」をモットーに活動を展開している。最近では、特に産みの親が育てることのできない赤ちゃんが、できるだけ早く温かい愛情のある家庭で育てられる社会を目指して特別養子縁組に力を入れている。
昨年は養子縁組活動に努力されている団体が200万〜300万の料金をとっているとの厳しい批判が話題となった。しかし、非営利のこの種の団体でも、カウンセリングや面談などの人件費や団体の運営費は必要で、諸外国では政府がこの費用を負担している例も数多くある。日本財団は、昨年、この有料による養子の斡旋批判を真摯に受けとめ、なお遅れている特別養子縁組の拡大普及のためにこの種の団体への資金協力(1000万円程度)を行い、養子を迎える夫婦への研修やアフターケアの提供、予期せぬ妊娠をした女性への相談窓口の開設、特別養子縁組の周知啓発や政策提言に努力して行きたいと考えている。