「ちょっといい話」その2 ―特別天然記念物『マリモ』― [2012年08月06日(Mon)]
「ちょっといい話」その2 ―特別天然記念物『マリモ』― スカンジナビア日本笹川財団は、スウェーデン、デンマーク、フィンランド、ノルウェー、アイスランドの北欧5ヶ国との間で文化、学術交流を始めて28年になる。毎年一度、帰国報告会を行っているが、これが異分野の交流の場となり、事務局・二川美樹女史を中心にネットワークも出来つつある。 先約のため今回の報告会には欠席したが、報告書の中に興味を引く面白い研究があった。 研究者の若菜勇氏によると、北海道・阿寒湖の大型球状マリモがアイスランドのミーヴァトン湖にもあることが発見された。マリモは淡水の湖沼や河川に生息する緑藻類の一種で、大型生物としては極めて稀な球状の集合を形成している。生物としてのマリモは北半球の高緯度地方に広く分布するが、球化するためには特殊な環境が必要で、大型の球状マリモが群生する湖は世界でも限られるとのことである。 阿寒湖のマリモは特別天然記念物として保存されてきたが、今や数が激減し、絶滅危惧種に指定されている。また、アイスランドにおいても2006年に国の保全対象種に指定されたが、やはり減少傾向にあるらしい。 若菜勇氏はこの状況に危機感を持ち、アイスランドとの共同研究をスタートされた。DNA解析と広範囲な生態調査から、球状マリモが群生するのは世界で阿寒湖とミーヴァトン湖だけであることが判明したという。今後は世界自然遺産登録を目指して活動を強化する予定である。 ささやかな研究助成ではあったが、大きな成果を上げて下さった。若菜勇氏の努力に敬意を表したい。 昨年もノーベル文学賞受賞作品・スウェーデンの詩人トーマス・トランストロンメル氏が書いた「悲しみのゴンドラ」が受賞前にこの財団の助成で日本語に翻訳されていた。 本当にささやかな財団ではあるが、事務局と元スウェーデン大使の内田富夫氏、日本財団・田南立也の炯眼により、多数の応募の中から選考されたものである。 「ちょっといい話」なのでご紹介しました。 |