「ちょっといい話」その1
―石巻から届いたカマボコ―
3.11東日本大震災では、即断即決でいち早く被災地の死者・行方不明者1名につき5万円の見舞金を、日本財団とその関連財団、モーターボート業界の協力のもと、自己完結型で17,597名(91.5%)の方々にお支払いしたが、夫と妻が別々の場所で受領したことがわかりわざわざ返還においでくださった方と、行方不明だった家族が病院で保護されていることがわかり返還された方はあったが、二重取りは皆無だったことは既に報告した通りである。
団体若手職員・梅村岳大は、現地で活動中老女に5万円を手渡したが、「帰路途中で紛失してしまった。何とかならないでしょうか」との切羽詰まった悲しい顔に、咄嗟に個人の身銭4万円手渡した。心温まる話である。このことが下記のように新聞報道されました。
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【from Editor】石巻から届いたカマボコ
2012/07/13 産経新聞 東京朝刊
東日本大震災が発生した翌日の平成23年3月12日から被災地に入り、ボランティア活動を続けている日本財団が1年2カ月の記録をまとめた冊子が届いた。「ボランティアかく戦えり」の詳細な記録の中で、同年4月4日から始まった「いますぐ被災者に現金を」という項目が目を引く。「明日の10万円よりもきょうの5万円」として、死者・行方不明者の親族に弔慰金・見舞金を届けた。
自治体の死亡行方不明者リストと親族の証明となる身分証明書を照合し、配布。着の身着のままの人も多かった。「証明するものはお持ちですか」と尋ねると、60代くらいの女性が首を振る。ふと足元を見ると、使い古した作業靴にかすれたインクでカタカナの名前が書かれている。サイズもぴったり、とても他人の物とは思えない。すぐさま5万円を手渡した。自己申告のため、悪質なケースも想定できたが、やむを得ない。別々の会場で別の親族が二重に受け取り、返却に訪れたこともあった。死者・行方不明者の親族のうち91.5%に届けることができた。
受け取り欄に名前を書く際、突然、泣き出す人もいたが、多くは「ありがとうございます」と淡々と受け取った。その姿にスタッフは余計心を打たれる。父母、弟の弔慰金を受け取りにきた17歳の男の子もいた。
避難所に帰る途中、70代の女性がお金を落とし、配布会場に戻ってきた。紛失したという理由で再配布すると、同様のケースがあった場合に対応できなくなる。たまらずスタッフが財布から4万円を取り出し、受け取れないと遠慮する女性に握らせた。
「何一つ持ち出せず、妻ともども家屋を流失してしまいました。妻の弔いに使わせていただきます」「まだまだ心は晴れませんが、多くの方々の優しい援助で少しずつ前を向いていけるようになると思います」「お見舞金は母の供養に充てさせていただきます」
感謝の言葉が日本財団に届いた。5万円の使い道はさまざまだろう。スタッフはこう話した。「生きているお金だ。何に使われようと、生きているお金ってあるんだということを初めて知った」
石巻から後日、カマボコが届いた。5万円を落とした女性からだった。夫が遺体で発見されたという報告とともに、「ポケットマネーをいただいたことは一生忘れません。石巻は復興の兆しが見えてきました。カマボコはその証拠です」。そう書き添えられていた。
(社会部編集委員 将口泰浩)
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日本財団の職員は温かいハートの持ち主ばかりです。被災者が仮設から個人の住宅に落ち付くまで、まだ4〜5年の支援が必要です。まだまだ資金は必要で、今も募金は続いています。
引き続きのご支援・ご寄附をお願い致します。