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resize.png日本財団はハンセン病の差別撤廃を訴える応援メッセージサイト「THINK NOW ハンセン病」を開設。皆様からのメッセージを随時募集・配信しています。
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3月17日(土) [2012年03月17日(Sat)]

3月17日(土)

9:45 成田空港着

11:00 成田発

10:30 ニューヨーク着

1.jpg
ニューヨークは春の陽気


11:40 ホテル着

18:30 関係者との昼食

インド各州ハンセン病担当官会議 [2012年03月17日(Sat)]

インド各州ハンセン病担当官会議
スピーチ要旨


2012年2月9日
於:インド・ゴア


ここインドでは、保健省やWHO、その他NGOなどの関係者が一丸となって努力した結果、2005年にWHOが定める「登録患者数が人口1万人当たり1人以下」という制圧目標を達成しました。これは歴史的な偉業であり、世界中が敬意と賞賛をもってこのことに注目しました。しかし「制圧」を果たしてからは、以前のような勢いで患者数が減ることはなく、ここ数年はほぼ横ばい状態が続いています。

あらゆる問題に対して言えることですが、人々はある明確な目標があるとそれに向かって懸命に努力を続けます。しかし、いざ目標を達成してしまうと、たとえそれが最終的なゴールではなかったとしても、問題解決に対するエネルギーやモチベーションが弱まってしまうことがよくあります。
ハンセン病の問題に関しても例外ではなく、制圧目標達成後に政府や行政の対応が一段落し、予算や人材が減らされ、他の疾病対策に比べ相対的に優先順位が下がってしまう状況を世界各国で見てきました。

ここインドでも、いくつかの県ではハンセン病対策を担うポストが空席になったままだとか、ハンセン病の専門知識を有する医療関係者が少なくなっただとかいうことを耳にします。しかし、このような状況を単に見過ごしていては、患者の数は減っていかないどころか、増えてしまうことだって考えられるのです。現に関係者の一部からは、今の停滞状況を表す患者数より、実際はもっと多いのではないかと危惧する声もあがっています。

皆さんには改めて言うまでもありませんが、「制圧」はハンセン病のない世界に向けてさらに対策を促進するためのマイルストーンに過ぎず、ゴールではありません。私は、「制圧」を達成したことで、予算面などでハンセン病対策の相対的な優先順位が下げられるようなことがあった場合、それによってハンセン病問題の本質的な重要性までもが下がってしまうと関係者に誤解されることが心配です。「制圧」を達成したからといって手綱を緩め、もし病気が再度蔓延するような事態を招いてしまったとしたら、6年前に称賛されたインドの成功は水の泡となってしまいます。

そこで、ぜひ皆さんには、もう一度各州でハンセン病に携わっている方々と強いコミットメントを共有し、インドのハンセン病対策に再度活力を入れていただくことを期待します。
もちろん、6年前に制圧を達成した時と今とでは、色々と状況も変わっているでしょう。例えば、患者とのリーチはより困難な状況にあるのかもしれないし、予算の減少でハンセン病対策の推進体制が縮小傾向にあるのかもしれない。そのような中で、皆さんには、これまで以上に創造的で戦略的なアプローチをとっていただかなくてはなりません。
広大な土地を持つ多様性に富んだこの国においては、それぞれの州や県レベル、さらには町や村レベルでの施策が必要です。しかし、そこでどのような施策を打つのかは、それぞれの状況をよく承知している皆さんに知恵を絞っていただくしかありません。

なぜ私が、公衆衛生上の目標としてハンセン病の制圧を達成した後もなお、患者を減らすことにこだわるのかというと、病気に苦しむ患者を減らすことは、病気の治癒以外にも重要な意味があることだと考えているからです。なぜなら、ハンセン病を取り巻く問題は、単に病気自体だけではなく、病気に起因する偏見や差別という深刻な問題を伴うからです。ご存知の通り、ハンセン病患者・回復者はこの偏見や差別に何世紀にもわたって苦しめられてきました。私は世界中の至るところで、ハンセン病患者・回復者に対する厳しい差別を目の当たりにし、その撤廃を目指して、様々な活動を行ってまいりましたが、残念ながら、ハンセン病を患うということは、同時に差別の対象になるということが、今尚、変わらぬ現実なのです。

皆さんが新たな患者を増やさないこと、そしてできるだけ障害が残る前に治療をするということは、差別に苦しむ患者や回復者を減らすということにも繋がるのです。つまり、皆さんの活動は病気と差別の2つの問題を解決するという非常に重要な役割を担っているのです。
皆さんの取り組み一つ一つが、ハンセン病に苦しむ一人一人の人生を救うことになるということを忘れないでほしいと思います。数値上の目標も重要ではありますが、それ以上にハンセン病対策に携わる皆さんが目にする数字のひとつひとつの背景に、患者や回復者一人一人の人生があることを日々想いながら取り組んでほしいと思います。

この会議で、各州、各県の状況に応じた対策について闊達に意見交換をし、それぞれの改善点や創意工夫すべき取り組みなどをぜひ共有していただきたいと思います。皆さんの活躍により、一人でも多くの人がハンセン病によってもたらされる苦しみから救われることを強く期待しています。


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