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魚資源枯渇の危機 [2011年01月23日(Sun)]


東京大学と共同で海洋教育促進研究センターを立ち上げた

[論点]海洋外交を国家戦略に
魚資源枯渇の危機

2011年1月18日
読売新聞

新しい年を迎え、日本財団では深刻化する魚資源の枯渇と、初等・中等教育での海洋教育の普及強化に関する二つの研究プログラムをスタートすることになった。

世界の魚資源はマグロなど大型魚を中心に大幅に減少している。昨年3月、当財団が東大海洋アライアンスと共催したシンポジウム「食卓に迫る危機」でも、2008年の刊行以来、世界で注目される「魚のいない海」の著者の一人で、仏地中海・熱帯漁業センターのフィリップ・キュリー所長が衝撃的な見通しを披露した。

「世界の漁獲量は過去30年間減り続け魚の小型化も進んでいる。このまま推移すると2048年に壊滅状態になる」というのだ。年間約600万トンもの魚を輸入する日本への疑問も出た。

これを受け、プログラムでは海洋研究で世界の先端を行くカナダのブリティッシュ・コロンビア大と共同で、9年間にわたる総合研究「未来の海を考える」をスタートさせることになった。ケンブリッジ、プリンストン、デューク、ストックホルムの欧米4大学、日本の研究機関にも参加を求め、将来の海の科学的予測を進め、適切な漁業資源管理など積極的な提言を各国政府に行っていく考えだ。

一方、初等・中等教育での海洋教育は07年に施行された海洋基本法が海洋教育の推進や人材育成を打ち出しているものの学習指導要領に「海洋」の言葉はなく、小、中、高校の授業に海や海洋の科目もない。プログラムでは、東大海洋アライアンスを拠点に横浜国立大、琉球大など全国5、6大学と実践校となる小中高校、当財団がネットワークを組み、13年春までにあるべき海洋教育の姿を提言にまとめ次期学習指導要領にも反映させたいと考えている。

拠点となる東大海洋アライアンスは07年、当財団などの支援で学長室直轄の全学横断的な機構として発足、現在約200人の教授陣が大学生や院生と幅広く海洋学を研究しており、今後、教育学ともドッキングした新しい形の研究が進められる予定だ。

世界の人口は50年には100億人に膨れ上がる。魚資源の需要はヘルシー志向の高まりで世界的に増加し、限られた魚資源を各国が奪い合う時代を迎えつつある。昨年、尖閣諸島沖と黄海で、中国漁船が相次いで海上保安庁の巡視船や韓国海洋警察の警備船に体当たりした事件の背景にも、中国での爆発的な魚需要の増加がある。

私はこれまで途上国を中心に125か国を訪問し、多くの国で生活・工場排水や廃棄物が海に流れ込む姿を目撃してきた。このままでは、母なる海は人類のゴミ捨て場になる。

17世紀のオランダの法学者グロチウスは、「海は無限」「海洋漁業で生物資源が枯渇することはない」と言った。しかし、今や海は有限であり、海洋資源は枯渇の危機に瀕(ひん)している。

我々はマラッカ海峡の航行安全の確保や北極海航路の開発、各国の海洋関係の人材育成など幅広い海関連事業を手掛けてきたが、国際社会の危機意識は低く、民間団体の力は限られている。今こそ日本の出番である。積極的な海洋外交こそ日本の責務であり、とかく外交力の弱さが指摘されてきたこの国が、国際社会に存在感を示す好機である。これこそが日本の国家戦略にほかならない。
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