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招致したいたばこ規制国際会議 [2010年10月03日(Sun)]



【正論】日本財団会長・笹川陽平 
招致したいたばこ規制国際会議
2010年10月1日
産経新聞 東京朝刊


1日からたばこが値上げされた。日本たばこ産業(JT)によると、わが国の2010年の男性喫煙率は、36・6%(男女平均23・9%)と引き続き減少した。しかし、国際的には依然、高い数字で、値上げ後の価格も先進国の中では最低の水準にある。

禁煙をめぐる議論の高まりで、受動喫煙を含めたばこの健康被害を否定する意見は姿を消したが、一方で、日本は世界保健機関(WHO)の「たばこ規制枠組み条約」を批准しながら、たばこ産業を保護育成する「たばこ事業法」を温存する。このような国は寡聞にして知らないし、わが国のたばこ対策が徹底を欠く原因にもなっている。

たばこ事業法は即刻廃止されるべきである。その上で、所管を財務省から厚生労働省に一本化し、12年の「たばこ条約締結国会議」を日本に招致するよう求める。それが、脱たばこ社会に向けたわが国の決意を内外に示すとともに、健康面に絞ったたばこ対策の強化と「たばこ1000円」の早期実現につながる。

◆事業法の即刻廃止を
1日からの値上げ幅は、1本当たり平均5円で、人気のセブンスターは300円から440円となる。しかし、1箱1000円ほどの価格が定着した先進国に比べれば、その安さは際立ち、広告規制などの遅れも目立つ。

04年に日本が締結国となった、たばこ規制枠組条約は、その目的を「たばこの消費等が健康に及ぼす悪影響から現在および将来の世代を保護する」とした上で、広告・販売促進の禁止やたばこ税の引き上げなどの価格対策を求めている。厚生労働省が「国民の健康の観点から、たばこの消費を抑制する」として、来年度の税制改正要望に引き続き、たばこ値上げを盛り込んだのは正しい。

日本のたばこ対策が徹底を欠く大きな原因となっているたばこ事業法は1984年、たばこ専売制度の廃止に伴って公布された。第1条で「たばこ産業の健全な育成を図り、もって財政収入の安定的確保及び国民経済の健全な発展に資する」とうたっており、国がJT株の過半を保有する根拠にもなっている。

◆所管は厚生労働省とすべきだ
国がたばこ産業を育成する、としているわけで、たばこ条約の趣旨とは明らかに矛盾する。条約に批准した時点で廃止するか、大幅に見直す必要があった。事業法が現在も維持されているのは国家意思の分裂であり、いびつな状態を解消するためにも政府はJT株を売却し、たばこ産業を完全民営化に移すべきである。所管が厚生労働省に移れば健康面に絞ったたばこ対策が強化できる。

現在、日本のたばこ消費量は年間約2400億本、税収は約2兆1千億円。これに対し、喫煙に伴う肺がんなど医療費の増加や労働力の減少、出火原因の3位を占める火災被害など社会的損失は税収を大きく上回る、というのが各種調査で一般的になりつつある。たばこ税はこれまで、手ごろな調整財源として使われてきたが、こうした現実を前に、これ以上、財務省がたばこ関係を所管していく理由はない。

日本財団が運営する公益コミュニティーサイトCANPANが世界禁煙デーの5月31日前に行ったアンケートで回答を寄せた約2万人のうち30・5%は1箱1000円またはそれ以上が「妥当な価格」と答え、喫煙者の79・9%は1000円になったら喫煙を「やめる」「多分やめる」と回答している。たばこ1000円を適正価格とする声が広がっている現実と、過去何度か当欄で指摘させてもらったように、1000円がたばこ離れを促進する有力な手段であることを裏付けている。

◆締結国としての本気度を
たばこ条約はすべての締結国に対し、今年2月までに公共の施設や機関を禁煙とするよう求め、日本に1年遅れて条約に批准した中国も、分煙方式ながら広大な上海万博会場の禁煙対策を強力に進めている。徹底を欠く日本は今や、たばこ対策後進国である。

たばこ条約締結国は、2006年、ジュネーブに110カ国の代表・オブザーバーが集まって開催した第1回以来、3回にわたる国際会議で、たばこ規制の強化や関連するガイドラインの作成などを進めてきた。締結国は現在164カ国で、第4回会議は11月15日から6日間、ウルグアイのプンタデルエステで開かれ、日本政府も出席する。期間中に2年後の第5回会議の開催地も決まる予定で、政府はぜひ、開催地として名乗りを上げてほしい。国際会議は、とかく情報発信、外交の弱さが指摘されるこの国の考えを広く世界にアピールする好機でもある。

たばこに関してはとりわけわが国の取り組みの弱さが指摘され、条約締結国としての本気度が疑われている。会議の誘致は積極策に転じ国際的信用を獲得する格好の契機にもなる。たばこ事業法の廃止と民営化、たばこ1000円の早期実現を合わせ政府の決断と迅速な行動を切に希望する。(ささかわ ようへい)
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