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笹川 陽平
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10月1日(金) [2010年10月01日(Fri)]

10月1日(金)

 08:00 海洋政策研究財団・今義男理事長

 09:30 日本海事科学振興財団・森田文憲理事長

 10:00 創立記念・挨拶、永年勤続表彰

 10:30 ブルーシー・アンド・グリーンランド財団・広渡英治専務理事

 11:30 村田良平大使を偲ぶ会 於:帝国ホテル

 17:00 佐々江賢一郎・外務次官

 17:15 外務省・藪中三十二顧問

「混乱する日・中関係を考える」 [2010年10月01日(Fri)]


政府間交流がストップした時期も継続してきた防衛交流(1998年9月)


「混乱する日・中関係を考える」


日本財団や姉妹財団の笹川平和財団、笹川日中友好基金、日本科学協会、東京財団などは、なぜ中国との交流のために活動するのでしょうか?

その前に少し、主だった事業を紹介します。

約20年前から

1.2,000人を超える中国人医師の日本への留学
2.中国有名10大学への奨学金制度
3.日本図書240万冊を各大学に寄贈
4.毎年、中国における日本知識のクイズ大会の開催
5.日本に関する作文コンクール
6.近代日本を知る本100冊の翻訳出版
7.北京大学学生と東京大学・早稲田大学の修士課程及び博士課程の学生との留学生交換
8.北京大学国際関係学院支援
9.人民解放軍と自衛隊の佐官級クラスの交流事業
10.延べ1万人を超える各種交流事業

等々を実施してきました。


中国人医師の日本留学は新たな仕組みで継続


日本と中国の関係は、今や右や左、好き嫌いのレベルではありません。地政学的に離れ難い隣国・中国。グローバリゼーションの激流の中、政治体制をはじめ、異なる中国とどう向き合い、平穏な関係を構築するかです。

「日・中間は同種同文、一衣帯水、子々孫々に至る日中友好の促進」と、政治指導者は機会あるごとに声高に発言し、小沢一郎率いる政治家を含め600人の代表団が人民大会堂で胡錦濤主席と会談したのは昨年10月の出来事です。

温家宝首相が小泉靖国参拝後の修復のため、氷を解かす目的で来日したのは2007年4月でした。日・中間は穏やかな良好な関係になったと、特に中国人は喜んでおりました。にもかかわらず、尖閣諸島に侵入した漁船たった一隻で日・中間に鋭い傷跡を残しました。この問題が解決したとしても、日・中間にはいつ燃え盛るか分からない火種がいくらでもあります。その多くは中国側にあるといっても過言ではないでしょう。

実は、韓国と中国との間でも漁業を巡る争いは絶えず、中国漁船の多くがだ捕されていますが、大問題として日本で報道されることはありません。

今や、日本と中国の貿易額は輸出入ともトップです。経済は相互補完関係にあり、お互いの協力は必須となっています。これはレアメタルだけの問題ではありません。中国にとっても、日本には環境産業をはじめ、喉から手が出るほど必要な技術やノウハウが山ほどもあります。にもかかわらず、なぜ日・中間はオーバーヒートするのでしょうか。

中国は今やネット社会。政治指導者は常にネットユーザーの動向を注視しなければなりません。そして日本にとって残念なことは、中国共産党は抗日戦争に勝利して今日の中国が存在すると人民に宣伝してきました。したがって、学校教育では今でも抗日戦争の歴史は重要なテーマで、テレビでも同じテーマの番組が頻繁に登場します。抗日戦争勝利が現政府のレーゾンデートル(存在理由)になっているからです。

高度成長下で惹起した貧富の格差、農村・農業・農民の三農問題等、さまざまな社会矛盾は誠に深刻ですが、政府への直言や行動は厳しく制限されています。しかし愛国無罪の言葉もあり、日本への非難行動は愛国運動であり、報道統制下にある中国では勢い、日本への非難が過激になるわけです。

しかし、中国もそろそろ反日教育のトーンダウンの必要性があります。国内矛盾の矛先を外国、特に日本に向ける政治手法は、グローバリゼーションの今日、古い手法となってしまいました。このような中国政府の安易な対応は、怒れるネット族の矛先がいずれ中国政府に向かい、社会混乱を引き起こす方向に向かうでしょう。「桑の木をさして槐の木を罵る」の例え通りです。

したがって、最も困難な立場にあるのは日本ではなく中国政府当局にあるのです。かつての日本もそうでした。弱腰外交は売国奴と批判され、民族運動は過激となり、政治指導者を困惑させるのです。

思い出して下さい。昨年のイタリアG8サミットに出席中の胡錦濤主席。世界で最も面子を重んじる中国の最高指導者が、ウイグル族の騒動で急遽帰国したのです。何故でしょうか。13億とも15億人とも言われる多民族国家の中国においては社会秩序の維持が最重要の課題だからです。中国の指導者は弱腰外交、売国奴といわれないよう、強行姿勢をとりながらネット族の沈静化を待っているのです。

その証拠に、南沙問題では、中国はゲーツ国防長官の中国訪問を拒否しました。しかし、如何でしょう。先般、温家宝首相はニューヨークでゲーツ国防長官の訪中を要請しました。中国の指導者はしたたかで有能です。原理・原則を主張しながらも現実的な対応を、タイミングを見て行動しているのです。

ここでは日本側の対応は申しません。既に多くのメディアが批判報道しているからです。ただ、日本は法治国家であり、国際法を順守する平和国家であることを世界にアピールする必要があります。

「文明の衝突」でハンチントンが指摘しているように、日本は中国から影響を受けながらも異なった文明として発展し、世界八大文明の一つとして位置付けられており、日本と中国は同種同文ではありません。

過去日本が中国から大きな影響を受けた事は事実です。しかし、日本も中国に大きな影響を与えてきました。共産主義に関するマルクス・レーニン主義をはじめ、外国の図書はほとんど日本語からの訳といっても過言ではありません。

国名の中華人民共和国のうち中華を除けば「人民」も「共和国」も日本から輸入した言葉です。共産党、労働、経営、哲学、美術、芸術等々、1400を超える日本の言葉なくして中国の現代社会科学は存在しなかったのです。日・中は異なる文明ですが、お互い補完関係にあるのです。

今一度述べます。

経済は完全に補完関係にあり、深刻な事態は一方ではなく、両方が傷つくのです。あえて申せば、中国が受ける悪影響の方がより深刻です。日本政府は独立国家として腰を落ち着けて毅然とした態度で堂々と交渉すべきです。

そろそろ結論に入ります。

日・中は異なる文明です。したがって、日・中の関係は異文化交流です。異文化交流の最重要性はお互いの異なる点を認め合い、なぜ異なるのかを研究し、少しでも相互理解が発展するよう努力することです。

私は、異文化の日本を中国人に理解してもらうため、特に日本語や日・中研究を勉学する若者をサポートし、彼らを通じて一人でも多くの中国人の日本理解につなげたいと念願しています。親日家の養成ではありません。日本を良く知る知日家の養成なくして平穏な日・中関係は生まれないでしょう。

これは日本人にも言えることです。異なる文明の中国を知る努力とそれに従事してくれる日本の若者が必要なことはいうまでもありません。30年、50年、100年、両国はお互い良く知る努力、そして孔子の「自分にして欲しくないことは相手にもしない」という2500年前のこの言葉は今も生きています。

中国知識人の日本人観は、1945年、ルース・ベネディクト著の「菊と刀」のまま止まっています。報道規制の厳しい中国とはいえ、我々日本人は等身大の日本を中国人民に知らせる努力を怠ってはなりません。

日・中関係に即効薬はありません。私は民間の立場から、粘り強く何十年も努力を続ける覚悟です。

この私の所感が、中国の多くの友人に読まれることを期待しています。


次代を担う若者が日本語を通じて等身大の日本を理解し始めている



(次回10月4日は、「川端康成と笹川良一の見えない糸」です)
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