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写真:ハンセン病の現場から「アフリカ・ピグミー族」

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「野口英世賞記念シンポジウム」 [2010年03月20日(Sat)]


「野口英世賞記念シンポジウム」


3月9日、ガーナの首都・アクラで、皇太子殿下の御臨席を仰ぎ、野口英世記念シンポジウム「アフリカの将来/貧困と疾病」が開催された。

ご高承の通り、野口英世博士はコッホから始まる細菌学の権威の一人で、世界的に著名な医師・研究者であった。ガーナのアクラで黄熱病の研究中に自身も感染し、51歳で客死された。

2006年2月、小泉純一郎首相がガーナを訪問した折、「野口英世賞」(5年に一度 賞金1億円)が発表された。

2008年5月、第四回東京アフリカ開発会議が横浜で開催された折、第一回の受賞者が決定した。一人は英国人・ブライアン・グリーンウッド博士、もう一人はケニアのAIV救済活動家・ミリアム・ウェレ女史である。

今回、5年に一度では忘れ去られる恐れがあり、また、日本のプレゼンスを維持するため、現地でのシンポジウムとなった。

ガーナで貧農に増産指導の仕事を開始してから24年になる。かつて、亡父・良一と共にガーナの野口英世博士の墓を訪れた折、雑草に覆われていた墓地を父と二人、吹き出る汗をものともせず清掃したことを思い出す。

そんな縁を感じながら、下記のスピーチを行った。

*****************




「アフリカの将来/貧困と疾病」
原文・英語


2010年3月9日
ラパーム・ロイヤル・ビーチ・ホテル国際会議場



本日は、皆様とアフリカの将来について考える貴重な機会をいただき感謝いたします。私はNGOの一員として飢餓、貧困、疾病といった人々が直面する基本的諸課題の解決、或いは社会発展を担う人材の育成などに長年取り組んでまいりました。

野口英世博士と同じ現場主義を信念とし、今も1年の3分の1は開発途上国で活動しています。本日は、アフリカの貧困や疾病の問題について、長年アフリカで農業開発を進めてきた経験を踏まえながらお話をしたいと思います。

今日ここにお集まりの多くの方が、アフリカの人々の脅威となっているHIV/エイズ、結核、マラリアなどの感染症といった問題に対し、新たな治療法の研究、薬やワクチンの提供など献身的な取り組みをされています。

皆さまの努力により、どれだけの人の命が救われ、痛みや苦しみから解放されたことでしょう。病に苦しむ人々を救いたいという想いは私も同じで、私の場合は栄養失調で体力と抵抗力が弱まっている人々が食糧を確保し、病気になりにくい身体を作れるようにしたいというアプローチから疾病の問題に取り組んでいます。

具体的には、サハラ以南の人口の7割を占める小規模農家のための農業開発プロジェクトを24年間に亘って行っており、食糧増産を目指しています。恐らくそういうことで、今回私にお声をかけていただいたのだと理解しております。

この農業開発プロジェクト「笹川グローバル2000(SG2000)」は、少量の化学肥料と優良な種子を利用した計画的な農業を、現地の農業普及員と共に農民に根付かせ、栄養価の高い農産物を生産するものです。現地の農民にとっても決して無理のないこの新たな農法を取り入れることで、収穫高が以前の2〜3倍以上に増えることが実証されています。

そしてSG2000による増産の成功が、農民たちの健康増進に大きく寄与することも分かっています。それまで空腹で力の入らなかった農民たちが食べられるようになったことで活力が生まれ、さらにその活力により増産が進んだことで、余剰分を市場で販売できるようになりました。

そして手にした現金で必要な食糧や薬を購入したり、クリニックにも通えるようになりました。農民やその家族の体力が強化されたことで、乳幼児死亡率も確実に低下しています。また、適正な技術を使うことにより単位面積当たりの収量が増え、その結果、農民や子どもたちの労働負担が軽減しました。

ただし、実際にこの農法を実施しているのはアフリカの一部の国や地域であり、食糧不足は依然アフリカが抱える大きな問題の一つです。そして食糧不足による栄養不良という状態が、疾病を含むあらゆる健康問題の改善を妨げる大きな原因となっています。栄養失調の患者たちは、マラリア、下痢、結核などの合併症を患っていることが多く、既に栄養失調で体力と抵抗力が弱まっている、特に子どもたちの容態を一層悪化させています。

世界における5歳未満の死亡数はおよそ年間880万人とされ、そのうち栄養不良の関連で亡くなる5歳未満の子供たちはその半数にのぼるとも言われています。まさに、食糧不足が引き起こす問題の深刻さを実感します。

国際社会は2000年、貧困の撲滅や感染症、保健衛生といった途上国が抱える深刻な問題の解決に立ち上がろうとミレニアム開発目標(MDGs)に合意しました。

しかし、アフリカにおける貧困状況などは依然厳しく、MDGsの達成も程遠い状態にあると言われています。ここにいる皆さまも日々頭を悩ませていることと思いますが、アフリカにおける貧困や疾病対策が一筋縄ではいかないのは、ご承知の通り様々な問題が複雑に絡み合っているからです。

24年続けてきたSG2000の活動も、アジアで成功した「緑の革命」のように進捗しているわけではなく、今のやり方が本当に適切なのかどうか自問自答を繰り返しています。少量の化学肥料を使うことに対し、環境保護団体や学者などからは、化学肥料を使用するべきでないだとか、有機農法のみで行うべきだとか、批判、意見を受けることもあります。

私はこのような批判、意見に対して分かったふりをするのではなく、まずは真摯に耳を傾ける姿勢が大事だと思っております。なぜなら様々な角度からの指摘は、自身の活動を見直す上で大変貴重であり、実際に新たな気づきを与えてくれることもよくあるからです。その時に、我々ドナー側の視点だけでなく、現場の視点も含めて検証をするということが非常に重要です。

先ほどの化学肥料や有機農法の例でいうと、「降雨があてにならず灌漑設備が整っていない状況で、人々が十分に食べられるだけの量を生産できるのだろうか」、「単位収量が減ることで耕地拡大が必要となり、森林伐採を促進してしまうのではないか」という新たな問題についても考えなくてはなりません。

また実際に現場を見てみると、農民の手元に残ったごく限られた農産物は貴重な動物の飼料として使われ、有機農法に必要な排泄物は主に燃料として使われていることが分かります。このような実際の現場の状況や現地の人々のことを考え、現時点では総合的な判断により適量の化学肥料を使用する農法を採用しています。

しかし、アフリカを取り巻く環境も目まぐるしく変化しており、この方法が今後いつまでも最善の策だと決め付けている訳ではありません。野口博士がそうであったように、私は自身の活動に満足し、独りよがりになった時点から堕落が始まると信じているからです。

最後になりますが、私は試行錯誤を繰り返す中で、共通の目的に向かって複数の協力が大きな成果を生むことを実際に経験しています。それは私が長年取り組んでいるハンセン病の制圧活動です。

当初は全く先が見えないところからのスタートでしたが、WHO、各国政府、製薬会社、NGOが1つの目標に向かって連携することに合意し、それぞれが果たすべき役割のために立ち上がった結果、1985年には122カ国あった未制圧国も、今は残り2カ国となりました。

当初53もの未制圧国があり、決して容易ではないとされていたアフリカにおいても、現地の人々の努力と協力により、全ての国で制圧に成功しています。こういった経験があるからこそ、私はアフリカが抱える問題に対しても絶対に諦めたくないのです。

現場を大切にすること、そして諦めないということは、アフリカの医療問題に取り組まれていた野口先生の基本姿勢でした。この野口先生の想いを、同じようにアフリカの問題に取り組んでいる皆さまとともに引き継ぎ、共通の目標に向けて協力し、解決に近づけていきたいと思います。


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