ラムバラン・ヤーダブ大統領(写真・右)とハンセン病について意見交換
「混迷を深めるネパール情勢」その2
〜ラムバラン・ヤーダブ ネパール大統領〜
ラムバラン・ヤーダブはネパール王制崩壊後の初代大統領である。1990年の民主化運動で3ヶ月の投獄経験。医師で保健大臣も2期務めた。ハンセン病制圧活動の理解者でもある。
ネパール政界最大の実力者・ネパール会議派のコイララ元首相の初代大統領就任の夢は、他党の反対で挫折。急遽擁立したヤーダブが統一共産党、マデシ人権フォーラム等の支持を得て決選投票で辛勝、大統領に就任した。
2009年5月、毛沢東派のプラチャンダ首相が毛派民兵組織(ネパール人民解放軍)の国軍統一を画策し、反対するカタワル陸軍参謀総長を解任。ヤーダブ大統領は解任を取り消し(解任権限は大統領にあり)、首相を非難しプラチヤンダ首相は辞任。第一党である毛沢東派との連立は崩壊し、ネパール政界は5月の憲法制定の公約を直前にして混迷を深めている。
大統領との会談もメディア同席のため平凡な表敬訪問となってしまった。
ご参考のため要旨は以下の通り。
なおWRとはアレックスWHOネパール代表のことである。
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笹:保健省とWHOの協力によりハンセン病制圧を達成されたことに対し、お喜び申し上げたい。以前保健大臣でいらっしゃったので、最も成功を喜んでいるのではないか。
困難の中の制圧達成は、国際社会も高く評価している。しかし、制圧は撲滅へのマイルストーン。秋の国連人権理事会で、ハンセン病患者、回復者、その家族への差別撤廃ガイドラインが採択されるよう努力している。スティグマ(差別)の問題にも関心を持って欲しい。
今後も医療と社会的スティグマの両面の課題解決のため、ネパールを訪問するつもりだ。他の公衆衛生問題と比べると患者数は少ないが、最古からスティグマを伴う病気であり、優先順位を高く保って欲しい。
大:訪問を歓迎する。ハンセン病制圧のための支援に感謝する。人類史上、昔からハンセン病は大きな問題であった。差別も伴う。笹川会長がこの問題および教育や農業の問題に関心を持ち、ネパールのみならず世界で努力していたことを知っている。
ネパールも沢山の支援をいただいた。ネパールでは健康は大きな問題だ。ハンセン病制圧は笹川会長やWHOの支援によって達成出来た。さらに患者数を減らすべく努力の継続が必要だ。
笹:父がネパールを訪れたのは30年以上前。親子二代で仕事をさせていただいている。
WR:病気の制圧は、技術以外にロジや政治的コミットメントが必要となるために難しい。他にもカラアザールやフィラリアを制圧・撲滅しないといけない。保健省の努力でハンセン病は制圧に成功した。笹川会長は、バッテリーが少ないときにチャージをしてくれる。
大:90年代、エイズも顕れ、努力をしてきた。政情は混乱したが、保健政策は継続、問題に取り組んできた。幼児死亡率改善のプログラムも成功しており、ハンセン病の政策も実施してきた。
笹:社会問題山積の中、ハンセン病制圧という成功例は、今後のネパールでの問題解決のモデルになるのではないかと思う。保健省の情熱の成果だ。明日はフィールドを訪問するが、現場のヘルス・ワーカーは情熱を持って活動している。インド国境の平野部もしばしば訪問した。憲法制定に関し、5月に向かって成果を上げて欲しい。
大:ネパールの社会安定には課題が多い。まず、和平プロセスとして新しい憲法を作ること。連邦制度のもと、国を再建することである。和平プロセスは現在のところ、いろいろと障害が多い。政治的な問題は、政治に関わる人間が一つになって解決しないと進展は見いだせない。
摩擦があってはいけない。憲法制定委員会の結果に期待するとともに、国際社会の支援も得て解決していきたいと考えている。和平プロセスが一番の大きな問題。私はあきらめていない。希望を持って問題解決にあたっていく決意だ。
(次回は2月17日、ギャネンドラ元国王)