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危機感あおる報道でいいのか [2009年05月16日(Sat)]


【正論】日本財団会長・笹川陽平 
危機感あおる報道でいいのか

2009/05/11
産経新聞 東京朝刊

 ≪メディアは最大の権力≫

本紙6面の「from Editor」欄に3月末、「『自虐メディア』にグッバイ」と題する社会部長名の記事が掲載されていた。記事はメディアの役割が「健全な社会構築のための批判精神にある」としながらも、現状を「厭世(えんせい)感を漂わせるようなニュースの占有率が高いと思う」としたうえ、「人々が『ヨシ!』と奮起できるような記事を少しでも多くお届けしたい」と結んでいる。

同感である。私は新聞をこよなく愛する立場から、1月の本欄で新聞が自虐的な悲観主義と決別するよう訴えた。日本をヨイショすべきだというのではない。ありのままの日本、等身大の日本を踏まえ、前向きの報道、問題提起、提案をしてほしいということだ。

世界は今、金融危機、同時不況の真っただ中にある。米国の一極支配が終焉(しゅうえん)しつつあり、新しい秩序の中での発言力確保に向けた各国の主張は激しさを増している。その一方で、わが国は相変わらず政治の混迷が続いている。政局が優先し景気・財政対策が後手に回れば国際社会の中での存在感は一層希薄になる。

確固たる明日の日本を築くためには、劣化した政治の再生が不可欠であり、そのためにも世論形成に大きな影響力を持つメディアが変わる必要がある。メディアは今やその影響力の大きさから言って「第4権力」ではなく、「最大の権力」である。役割と責任の重さが、あらためて自覚されなければならない。

≪数字は一要素に過ぎない≫

例えば昨年秋以降の政治報道。私は東京都内で配達される日刊紙全紙に目を通すが、各紙とも政権交代に向けた与野党の駆け引き、解散時期をめぐる記事が大半を占めた。解散−総選挙が焦点であるのは否定しないが、有権者にとって何よりも必要なのは投票の際の判断材料である。

不況が深刻化する複雑な国際社会の中で、巨額の財政赤字に直面する「日本丸」のかじ取りをどの政党、どの政治家に託すのか−。求められるのは与野党の景気対策の違い、財源面を含めた実現の可能性、問題点などを分かりやすく分析した記事である。

同じ意味で世論調査の扱いにも疑問を感じる。世論調査、とりわけメディアが行う政党や内閣支持率調査は数も多く、近年、政局ばかりか政権の存続をも左右する。新たなリーダー選びでも近年はキャリア、実績より世論調査の人気が先行する。指導者に国民の人気があった方がいいのは言うまでもない。

しかし、これらの数字は政権や政治家の人気を占う一つの要素であっても、すべてではない。「支持率が20%を割り、政権は危険水域に」などと危機感をあおるメディアの報道に各党が一喜一憂する政治が果たして国民のためになるだろうか−。

数字がすべてとなれば、政治は腰を据えた長期政策論議より迎合主義に走りかねず、麻生首相と小沢・民主党代表の支持率を合わせても50%前後で低迷する現状では、だれが首相をやっても長持ちせず、政治は安定しない。

各種世論調査で政治に対する不信・不満が高い数字を占めているのも、本音が見えない政治の現実を反映した結果であり、これまでになく政治に対する国民の関心が高まっているのに、相変わらず投票率が低迷する政治の現状は危機的である。

≪大局欠く「小さな正義」≫

幕末から明治維新にかけてキラ星のごとく偉人が輩出したのは、有能な人物がたまたま揃(そろ)っていたのではない。沸騰する時代の熱気がそれを可能にした。戦後のメディアは「庶民の声」を民意として最大限に尊重するが、庶民の声は「小さな正義」であっても時に大局を欠く。国づくりには小さな正義より大義を優先させなければならない局面もある。

同様に庶民感覚に照らした品行方正、清潔感だけでは時代が必要とする器の大きな政治家は育てられない。麻生首相も就任時、ホテルでの飲食が庶民感覚から離れていると批判されたが、リーダーに求めるべきは国をリードする気概、政策である。ホテルのバーで飲む一杯の酒で気力・体力が充実できるのなら大いに結構ではないか−。

私は1年の3分の1近くを途上国の現場で過ごす。その体験を踏まえれば、日本が世界で最も安全で豊かな国であるのは間違いないし、国民の大半も同じ認識を持っている。メディア関係者は自らが描く自虐的、悲観的な日本像と読者の認識に大きな落差があることを自覚してほしい。

記事を読むのは国内の読者に限らない。翻訳して各国に紹介され、日本を見る外国の目線にも反映する。それが政治、外交に影を落とし、国際社会での日本の地位、発言力にも影響する。

世界が大きく変動する中、日本は国際社会の中で、いかなる存在であるべきか、難しい選択の時代を迎える。メディア関係者には、国民が自信と誇りを持って生きていくための建設的な記事を切に願いたい。(ささかわ ようへい)
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