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「プーチン首相来日」 [2009年05月08日(Fri)]

赤の広場、クレムリン(ロシア・モスクワ)


「プーチン首相来日」


5月11日にプーチン首相が来日するが、今のところ、メディアの報道は低調である。懸案の北方四島問題に進展はあるのだろうか。今一つ盛り上がらないのは残念だ。

私見ではあるが、ロシアの内情についてはドイツのメディア報道が最も秀れていると思う。プーチン首相を戴くロシアの現況はどうなのだろうか。

事実上のロシアの最高指導者・プーチンの経済政策は破綻に近い状態で、ロシアに比べ日本の立場ははるかに優位である。プーチン首相と会談する日本の政治家は、彼の苦悩と背景を理解した上、自信を持って交渉してもらいたいものである。

2月12日のドイツのツァイト紙「ロシア経済の苦境」の記事は、今でも賞味期限が切れていないと思うので、日本財団・特別顧問だった村田良平・元外務事務次官が記事の要旨を翻訳、コメントもされているので、プーチン来日を前に、ロシアの現況の参考として供したい。


*記事要旨

モスクワを世界金融の一中心市場としようとの野望は脆くも潰え、GDPを2013年までに倍増するというプーチンの夢の計画も流れ去った。モスクワの近代発展研究所(Insor)は、ロシアが初めての経済危機を経験しつつあると認めた。

グローバリゼーション研究所の所長デルヤギンは言った。「ロシアでは、政府と人民との間に黙約がある、生活水準が向上する限り、選挙結果を誤魔化したり、テレビで嘘をついても構わないというものだ、プーチンは石油収入がある限りこれを続け得た」と。今次経済危機はこの黙約を壊したかに見える。しかし、世論調査で見る限り、民衆はまだこの認識には達せずにいるようだ。

2008年の成長率は、5.6%と、まずまずだった。しかし、年末には様子が怪しくなった。工業生産指数が10.3%落ちたからだ。鉄道輸送は20%減り、過去10年間で、初めて財政が赤字となった。ルーブルも過去半年間にドルに対し35%減価した。

このほかにも悪いニュースが相次いでいる。例えば、ロシア最大のアルミ製造企業Rusalは、生産を11%落とし、近く労働者の馘首へ踏み切るという。

サンクト・ペテルブルクでは、動物園、地下鉄、多くの幼稚園や病院の建設は全部ストップされた。新年には経済成長率は5%マイナス、工業生産は20%の減少、そしてインフレ率は30%と予想されている。しかし大臣連中はまだ古い頭で、二四半期もすれば、また良くなるのではないかなどと言っている。

8年間石油ブームが続いたため、多くの人々は、石油価格は永久に上がると考えていた。世界経済が相互依存であることも、昨年9月までは認識されていなかった。多くの市民は、株式価格の急激な下落をSchadenfreude(他人の苦しみを喜ぶこと)をもって見ていた。ロシアでは、百人に一人も株というものを持ったことがないのだ。

危機の開始以来、ロシアは、外貨の三分の一を、ルーブル、銀行、企業の買い支えのため使って来た。Rusal一社で、45億ドルが使われた。本年のロシア企業群の対外債務は1200ないし1400億ドルとなると予想されている。

丁度中央銀行の保有外貨と同額だ。政府は、陸軍、ガスプロム社、鉄道には支援を約束している。財政赤字は1000億ドルに達しよう。昨秋には、大蔵大臣は、外貨は7年分あると言ったが、11月末には3年分と修正した。最悪の場合、経済学者は1年内に外貨は底をつくと予想している。

Insor研究所は「新しい研究所、開発の手法の研究、国立の各種銀行の強化、企業による起債市場の育成といったことが、近年全く無視されてきた」と主張する。1200もある銀行の再編もなされず、取引所も西側のモデルのように資本取引の場としての機能は持っていなかった。「ロシアの株式市場は、小さ過ぎ、三分の二までは外国人に依存していた、外国人が資金を引き揚げるとともに、市場自体が崩壊した」という人もいる。

クレムリンは、経済危機への対策として、政治体制や管理制度をいじくった。プーチンの知事選挙の廃止、独立の裁判官団の解散、メディアの独立の廃止、法に縛られない国立公社の設立等がそれである。ソーニン教授は、「これらは、一時的には成長を助けるかも知れないが、経済全体の弱化とともに、底なしの墜落の道を辿るのではないか」と評している。

ロシアの輸入ブームは消費物資中心だった。インフレ及び賃金の30%もの上昇が過去2年間に起こって、国内で生産される商品は儲けがなくなった。加えてある種の怠け癖がでた。モスクワのドイツの企業家は、ロシア人のパートナーに「学ぶ意欲、技術を開発せんとする意欲」が共に欠如しているのに呆れている。

プーチンが行った寡占経済の規制は、オープンな経済を齎しはしなかった。国営企業も規模ばかり重視された。危機が進むにつれ、国営化が更に進んでいるが、それは国が債務を抱えてしまった企業の部分を買い入れるという形で進んでいる。このようにプーチンによって進められている国有化は、財政に一層の負担となる。一例として、技術分野の巨大企業Rostechinologiiは、国に資金と保障として合計72億ドルを求めているという。

垂直的な権力構造のもとで、私企業は、国営企業に包囲され、公正な競争は行われない。汚職はプーチンの支配下で、主要要素となった。「中国なら銃殺される、インドなら投獄される、ブラジルなら解雇される、ロシアでは、汚職を拒む公務員は危険にさらされる。なぜなら、彼は周囲の邪魔になるからだ」といわれる。

本年の最大の問題は失業の増大であろう。現在560万人が失業しているが、年末には倍増すると予想されている。しかも、操業短縮、あるいは給与カットのまま働く者は失業者には数えられないのだ。

嵐のごとき抗議デモはまだ起こっていない。社会学者によれば、ロシア人の行動は受け身である。状況の悪化は認めるものの、改善のための動きが起こらない。一部のロシア人は、極めて苦労に耐える能力を持つ。よって、クレムリンにとり、政治的危機はまだ現れない。

ロシアが危機を構造改革に活用する公算は乏しい。98年の経済危機に際しては、ルーブルの切り下げが積極的効果を生んだが、今回はかかる期待は出来ない。当時と異なり、現在は、近代的コストですぐ操業を始めうる遊休設備というものもないのだ。

90年代に、工業から商業、サービス、不動産などの分野に移ってしまった技術者が、現在、再び工業へ戻ってくる公算はない。グリンベルク氏は言う。「今や、すべて新たに始めねばならないのに、錠前工、旋盤工、溶接工などは一人もおらず、ブローカーや金融業者がいるだけだ。職業教育体制も極めて不十分だ。ものを言うのは、足の速い金のみとなってしまった。

*村田氏コメント

この記事どおりの経済が、ロシアの実情であろう。よって、救いは見えない。何時かは石油やガス価格は、再び上昇する。しかし、それのみでは、有機的な国民経済は生まれないことは、今次危機が証明した。プーチン登場以前は、それでも米国やドイツに学ばんとする社会層があった。

また、能率は悪くとも、共産主義のもとでは、集団指導体制だったから、経済や技術にそれなりに特化した指導層の幅があった。情報機関出身のプーチン個人は、マクロも、ミクロも経済についての経験はゼロで、また大局的な「勘」(西側大国の指導者は概ね持っている)も、彼の言動を見るかぎり持ってはいない。

メドヴェージェフも同様であろう。警察や軍といった物理的力しか用い方を知らず、ロシアにも数は少ないがまだいる経済の専門家に、うんと高い地位と権限を与える用意もなさそうであるから、何時かは解らないが、プーチン政権の寿命はその内尽きてしまうであろう。
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