大徳寺・真珠庵における音禅とツトム・ヤマシタ 笹川日仏財団シリーズ その3 [2008年05月09日(Fri)]
「大徳寺・真珠庵における音禅とツトム・ヤマシタ」 〜笹川日仏財団シリーズ その3〜 世人を寄せつけない大徳寺・真珠庵で、はじめて『音禅』法要が催された。
ツトム・ヤマシタ氏によるサヌカイトによる演奏と、一休愛用の短尺・尺八による演奏は、7人の僧侶による読経と合体して『音禅』として法要が営まれた。
ツトム・ヤマシタ氏は、パリのシャトレ劇場で開催された笹川日仏財団15周年記念コンサートで新作を演奏し、絶賛を浴びた。
1947年、京都生まれの打楽器奏者で、世界的に有名なニューヨークのジュリアード音楽院を首席で卒業。ベルリン・フィルハーモニー、フィラデルフィア交響楽団、シカゴ交響楽団等、世界有数のオーケストラとの共演もあり、雑誌『タイム』から「打楽器のイメージを変えた人」と称賛された。
1973年、グラミー賞の作曲、プロデュース両部門にノミネートされたこともある。
その後、精神世界の探求のため国際的音楽活動から身を引き、京都・東寺で仏教音楽を研究し、仏教的世界観を持つ音楽を生み出した。
今回使用されたサヌカイトという石は、香川県の讃岐で産出され、昔から美しい音を出す石として一部では知られていた。
東京オリンピックの開会式開始を世界中に告げたのは「サヌカイト」の音色
1986年、彼は香川県坂出市の前田仁氏と出会う。前田氏は当時、銅が用いられる以前に僧侶が使っていた楽器の音の再生をサヌカイト石で試みて打楽器を考案した。
ツトム・ヤマシタのサヌカイトとの出会いが、探求していた精神世界に適合する新しい音楽的創造の道をもたらすことになった。
音楽のことは詳しくないが、ツトム・ヤマシタ氏によると、西洋音楽の基礎はピアノの88鍵に対応する88の音であり、これが絶対的な音の世界を構成しているという。
サヌカイト楽器は110鍵で西洋音楽の中では不協和とされる相対的な音をほぼ無限に生み出すことが出来る。サヌカイト楽器は西洋音楽の基礎となっている合理主義を越えて音楽的探求と精神的探求を両立させることが出来るようになったという。
この音禅は、サヌカイト楽器による柔らかくやさしく澄んだ不思議な音色が読経と重なり合い、雑踏の巷で生活している私にとって、しばし癒しの世界に導いてくれた。
この前代未聞の『音禅』法要に同席できたことは、大徳寺・真珠庵の大英断であり、冨永重厚日仏財団理事長の努力なくして実現しなかったことである。 心から感謝申し上げたい。
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