※1月15日、日本財団ビルにおいて、「マラッカ・シンガポール海峡基金創設」に向けた記者会見を行いました。私の報告内容を掲載いたします。「マラッカ・シンガポール海峡基金創設」に向けた記者会見
2008年1月15日17時〜
於:日本財団ビルマラッカ・シンガポール海峡(マ・シ海峡)は大変狭い海峡です。
近年、中国や
ベトナム等は経済発展が大変顕著で、この海峡の航行量は飛躍的に増加しています。そのため、航行の安全確保は大変重要な問題となっています。
過去40年にわたり、この
海峡の航行安全のための支援の大部分を日本財団が行ってきたといっても過言ではありません。
当時、テレビコマーシャルで“マラッカ海峡は日本の生命線である“という言葉を使ったときはテレビの倫理委員会に否定されるかと思いましたが、認められました。しかし“マラッカ海峡はまさしく日本の生命線である”と理解されたのはつい最近のことです。
マラッカ海峡は公の海峡です。
海峡の沿岸国である
マレーシア、
インドネシア、
シンガポールの三国と海峡利用国との間では安全航行に関する措置が必要とされています。これは海洋法条約43条で規定されていることです。しかし、これが上手く実現しにくい状況にあります。
来日した沿岸三カ国の代表
私は、さらに進展させるための方法として、長年努力している、世界からハンセン病を制圧する活動で見出した手法を取り入れることを考えました。すなわち民間セクターのステークホルダーをこの問題に巻き込むことで問題解決に大きな役割を果たすということです。そして民間サイドからのアプローチの方法について真剣に考えてきました。
17世紀の海洋法学者である
フーゴー・グローティウスは“海は無限であり、船舶は無害航行権を持つ”と説いています。すなわち海の利用はタダであるという伝統が今も生きているのです。
人間の歴史は陸を中心に作られた歴史です。そのため、地球上の四分の三を占める海、海洋についての人々の認識は非常に限られたものであったといわざるを得ません。
しかしながら、日本では“母なる海”という言葉があるように、全ての陸上の生物、植物を含め、海の恩恵なしには成り立たないということを私たちは認識しなければなりません。そして、そのような時代に入っていると私は認識しています。
このような観点からみたときに、果たして“17世紀以来の伝統である無害航行権は現在も成立するのか”ということを考えました。その結果、私たちの“母なる海”を守るためには、それぞれが応分の負担をしていく必要があるということに結論付いたわけです。
多くの船会社、海運団体にとって、マインドを変えるということは大変難しい状況下にあります。しかしながら、一つの切り口として、企業のCRS活動、すなわち社会貢献活動という切り口を使うことを考えました。
海に生き、海の恩恵を受けて生活を立てている人たちが、航行安全そして環境保全を守りながら、持続的に海事活動をしていくということです。
世界が目覚しい経済発展をとげる中で、海を航行する船は飛躍的に増大しています。私は昨年12月にロンドンで、CSR活動の観点から世界の有力な海運4団体である国際独立タンカー船主協会、国際乾貨物船主協会、ボルチック国際海運協議会、国際海運会議所に協力を呼びかけました。そして4団体全てが私の意見に賛同してくれました。
そして今回、インドネシアからは運輸省海運総局のユリ航海局長、インドネシア外務省条約局のベベブ次長、マレーシア運輸省のアブドラ・ユソフ海事局長、シンガポール海事港湾庁のイー政策局長を含む9名の代表団が日本財団を訪れました。
昨年、IMO(国際海事機関)が主催したシンガポール会議で日本財団は
航行安全のための基金を創り三分の一を負担する意思があることを伝えました。沿岸三国としては今後の対応について議論するために今回来日しています。
産油国の一部には自分たちの商品である石油が消費者により正確に安全に輸送されるためには応分の負担をすべきであるという意見が出てきています。そして、この航行援助施設基金にかかる資金がどのくらいになるのかということを早く知りたいというところまで世論が熟してきました。
私たちとしては早急にこの基金を設置する必要性に迫られてきました。今回はマ・シ海峡にある51カ所の航行援助施設である灯台、発光ブイ、発信ブイ等の更新に要する資金について、三カ国で至急調査をしていただき、国際的な枠組みである基金を創ろうということになったのです。
推計調査にかかる費用150万米ドルについては、日本財団が負担します。今日の会議では、基金の早期設置をさらにスピードアップをしていこうということが一つの結論となりました。
今秋には産油国で海運4団体と日本財団が主催する会議の開催を予定しています。さきほどハンセン病の制圧活動を例に話しましたように、石油を使う電力会社、あるいは様々な産業界、あるいはステークホルダーを巻き込んだ国際会議を考えています。そして沿岸三国が主役となりますので、この会議への参加を要請しました。
海運4団体と日本財団と沿岸三国との会議を早急に立ち上げる中で、私たちは三カ国政府と海運4団体との間の触媒の役割を担うことについて合意しています。
強制力のない民間の自発的な発意によって国際的なスキームが完成されようとしています。これが成功すれば様々な国際問題の処理についての枠組み、あるいはスキームをつくる上で大きな参考になるだろうということで、この実現に向かってまい進しているところです。
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