「たばこ一箱1000円、タバコ一箱1000円」その35
―たばこは有害か?―
たばこの有害性については、WHOの各種データを見るまでもなく、世界の医学界では常識となっているが、驚くべきことに日本ではそうではないらしい。
ここに「たばこは有害であるという根拠は怪しい」とする名取春彦氏(獨協医科大学放射線科医師)と、有害論の祖父江友孝氏(国立がんセンター、がん情報・統計部部長)の両氏の意見を、週刊現代8月2日号の記事を借用して掲載する。
読者の判断や如何に・・・
====================================================
名取春彦 独協医科大学放射線科医師・『たばこ有害論に異議あり!』著書・58歳
たばこは有害であるという根拠は怪しい
嫌煙は権利かファシズムか
「健康に悪影響」のもととなった疫学調査の“隠された部分”
「たばこは有害である」という論理は、いまや一般常識のようになっていますが、私はそもそも、その根拠となっているデータに疑問を感じています。
日本の禁煙・嫌煙の理論的裏づけは、1966年から1982年にかけて行われた、生活習慣と病気との関係を追った大規模疫学調査の結果によるところが大きいのです。この調査は、当時の国立がんセンターの疫学部長・平山雄氏と厚生省が中心になって行ったものですが、「たばこは有害だ」という結論が先にあり、それに結びつくデータしか採用していないという点が問題だと思うのです。
そのことが顕著に表れている具体例があります。掲出した表は、平山氏の論文中のデータをもとに、男性のがんによる死亡人数を示したものです。表中の「調査対象人数」とは、平山氏が言う“延べ人数”のことで「調査人数×観察年数」を表しています。
「その他」の欄は、私が平山氏のデータから数値を算出し、新たにつけ加えたものです。注目すべきは「その他」の欄の「10万人あたりの死亡人数」。これに当てはまるのは、「毎日喫煙する」のでも、「喫煙しない」でもない人、つまり「ときどき吸う人」です。この「10万人あたりの死亡人数」が264人と、「喫煙しない人」の304.4人も低くなっているのです。
このデータは、平山氏の論文中には記されていません。つまり、“たばこは有害である”という理論に反する結果が、隠蔽されているのです。
このほか、受動喫煙に関しても、疑問視すべき点があります。@「夫婦共に非喫煙の場合」と比較して、A「夫のみが喫煙者の場合」は、妻の肺がん死亡率が約2倍になるというデータが平山氏におり1982年に発表されました。この結果が多くの論者に引用され、受動喫煙被害が騒がれるきっかけとなったのです。
ところが、平山氏が発表している死亡率から、実際の死亡者数を算出してみると、@の場合の妻の人数は2万1895人で、そのうち肺がんで死亡したのは2人、Aの受動喫煙とされている妻の人数は6万9645人で、そのうち肺がん死亡者数は11人。この数値で、統計学的に有意差があると言えるでしょうか。@の場合で2人が3人に、Aで11人が10人に減ってしまえば、その差はなくなってしまう程度の数値なのです。
このように、平山氏の研究は都合のよい結果だけを強調することで、たばこの影響力が非常に大きいように錯覚させているのです。「たばこ有害である」と主張するのであれば、他のものと比較すべきです。例えば、たばこと同時にアルコールのデータを同じように並べる。そうすれば、少なくともたばこと酒ではどちらがどの程度健康に害を及ぼすか、ということは証明できるはずです。
現段階では、たばこが酒や他のものよりも健康に影響を与える、とは断言できないでしょう。
=========================================
祖父江友孝 国立がんセンター がん情報・統計部部長・49歳
統計がすべてを物語る―
喫煙する人は
吸わない人に比べて
がんになるリスクが高い
肺がん4.5倍
喉頭がん32.5倍・・・・・・
たばこはやっぱり
身体に悪いんです
たばこを吸い続けることで、寿命は縮まるのです。
ご存じの方も多いと思いますが、これは調査に基づいた事実です。イギリスで1950年代から50年間にわたり調査されたデータによると、喫煙者は非喫煙者に比べて寿命が10年早いと指摘されています。日本でも複数の調査が行われており、男性では約5年、女性では約4年、寿命が縮まるという結果が出ました。
たばこは、健康への影響が非常に大きい。喫煙とがんの関連については、これまで動物実験や疫学研究など、さまざまな研究が行われてきました。それらの研究のどのデータを見ても、肺がんをはじめとした病気と喫煙との間には因果関係があると言われています。
現在、日本においては、20歳以上の男性の45.8%、女性の13.8%がたばこを吸っています。これだけの人が、疾患のリスクを高める物質に接している例は、他にはありません。アスベストなどによって肺がんなどのリスクは、約2〜3倍になりますが、社会全体から考えると、極めて頻度が少ない。たばこを吸う人数とは桁が違うわけです。
また、たばこを吸っている人は、吸っていない人に比べて病気にかかるリスクが高いということが言えます。次のページの表を見ていただければわかるとおり、男性ですと、非喫煙者と比較して、肺がんのリスクが4.45倍。喉頭がんでは、なんと32.5倍にもリスクが上がっています。これは、1966年〜1982年に約30万人の日本人を対象に行われた調査を元に出された数値ですが、その後の研究でも、喫煙ががんのリスクを上げるということが示されています。
また、喉頭がんは、すべての患者の中で喫煙が原因である割合が96%にも上る。食事や大気汚染などが要因で健康に表れるリスクは、1.5倍以下の場合が多く、それに比べるとたばこのリスクは明らかに高いのです。
たばこが主な原因だと考えられている呼吸器疾患に、COPD(慢性閉塞性肺疾患)があります。たばこを吸うことで肺の組織が破壊されてしまうのですが、肺の組織は一回破壊されると簡単には再生しないので、酸素の交換能力が減っていき、常に息苦しい状態となる。最終的には酸素ボンベを常時携帯していないと呼吸できない体になってしまいます。これは、50年程度の長期間たばこを吸い続けた人は必ず発症すると言っても過言ではない病気です。そして、現在の医療では極めて治りにくいのです。
これから、喫煙し続けている70歳以上の高齢者に、COPD患者がますます増えていくでしょう。今後、高齢化が進むなかで、社会問題化していくと考えられています。COPDはがんのように進行して亡くなるわけではなく、息苦しい時間が長期間継続するのです。
こうしたたばこによるリスクは、禁煙することで改善できます。吸うのをやめて、一番早くリスクが減少するのが循環器疾患。狭心症や心筋梗塞は、ヘモグロビンに一酸化炭素がくっついて酸素運搬能力が衰退することが発症の一因ですが、喫煙をやめれば、2〜3年で元の状態に近づきます。がんの場合は、いくつかの重要な遺伝子に異常が起き、それが蓄積することで悪性化していく。それだけ時間をかけて進行していくので、リスクが減る時間も少し長いのですが、肺がんだと禁煙後10年で、リスクが半分に減ることが統計的にわかっています。
生活習慣の改善で、病気のリスクが減少するということは、たばこでしか実証できていません。塩分の多い物を食べると胃がんになりやすいとか、運動をしている人に大腸がんが少ないというのは事実です。しかし、運動していなかった人が運動を始めて、実際に大腸がんがどの程度減ったかを実証したデータはありません。その点、たばこは禁煙したことで病気になるリスクが減少することが現実のデータで示されている数少ない例のひとつです。
病気にかかるリスクが高くなる、寿命が縮まる、ということがわかっているうえに、禁煙したらそのリスクが低くなる―。ここまで条件がそろっているのですから、やはり禁煙したほうがいい。たばこを吸っている方も、今日から禁煙すれば、まだ間に合います。