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産経新聞【正論】一億総活躍の取り組みこそ先 [2018年09月26日(Wed)]

一億総活躍の取り組みこそ先―

産経新聞【正論】
2018年9月5日

 政府は6月に閣議決定した「骨太の方針」(経済財政運営と改革の基本方針)で、これまで原則禁止としてきた「単純労働」分野での外国人就労を受け入れる方針を打ち出した。

 建設や介護分野などの人手不足は深刻で、新方針を否定するつもりはない。しかし、外国人労働者の受け入れだけで急速な少子高齢化・人口減少に対応するのは不可能。政府が掲げる「一億総活躍社会」こそ、この国が目指す新しい社会の姿であり、実現に向けた取り組みが急務である。

 ≪多くを期待できない外国人就労≫
 安倍晋三首相はその姿を「若者も高齢者も、女性も男性も、障害や難病のある方々も、一度失敗を経験した人も、みんなが包摂され活躍できる社会」と説明している。外国人労働者の受け入れも、その一環として位置付けられるべきで、拙速な対応は「その場しのぎ」「付け焼き刃」になりかねない。

 日本財団では2015年、「はたらくNIPPON!計画」を立ち上げ、誰もが参加し活躍できる多様性のある社会のモデルづくりを目指してきた。関連して学識者らが行った試算では、障害や難病、ひきこもりなどが原因で「働きづらさ」を抱え、就業を希望しながら職を得ていない人は、15〜64歳の生産年齢人口に絞っても1600万人を超す。

 労働力は国の要であり、国の安定的発展を図る上でも、こうした潜在労働力の有効活用は何にもまして必要である。骨太方針では、最長5年の技能実習訓練を終えた外国人がさらに5年間、日本で働ける新たな在留資格を来春までに設け、25年までに人手不足が特に深刻な建設など5分野で50万人超の外国人労働者を受け入れるとしている。

 日本で働く外国人は昨年10月時点で約128万人。10年間で2.6倍に増え、産業界の需要も高い。しかし、労働力不足は不法移民問題で揺れる欧州連合(EU)も含め先進国共通の課題で、言語や生活習慣の違いなど他の先進国に比べ日本のハードルは高い。技能訓練生の多くを期待する東南アジア各国も高度成長に伴う国内の労働需要の高まりで早晩、外国への労働力供給は難しくなる。

 わが国の生産年齢人口は今年1月時点で7484万人と初めて全人口の60%を切り、国立社会保障・人口問題研究所によると、高齢人口がピークとなる40年には5787万人とさらに20%以上減る。5分野以外の食品加工や水産、物流分野などでも人手不足が進み、「2025年には583万人が不足する」(パーソル総合研究所)といった分析もある。

 ≪1600万人を超す潜在労働力≫
 一億総活躍社会の実現こそ抜本的な解決策につながる。前述した1600万人には障害者や難病患者のほか、職を持たない若者や2年以上の失業者など幅広い層が含まれる。今や国民の4人に1人を占め、近年、健康寿命が延びている高齢人口を例にとると、70%が定年後の就労を希望しているのに対し現実に職を得ているのは6人に1人に留(とど)まり大きな余力がある。

 現在、150万人が働く看護の世界も、職を離れている潜在看護師が約60万人存在する。今後、人工知能(AI)ロボットや遠隔操作で動く分身ロボットが発達すれば、寝たきりの患者や育児や介護で自宅を離れられない主婦らが就労する道は広まる。

 NIPPON計画では「身体」「知的」「精神」を合わせ約860万人に上る障害者の就労支援に取り組んできた。障害者総合支援法に基づき全国で約26万人が働く就労継続支援事業は、労働契約を結んで働くA型事業所が約3600カ所、障害の程度が重いB型が約1万700カ所整備され、現時点では、働く意欲を持つ人々の就労を促進する上で最も充実した受け皿となっている。

 A型の月平均賃金が7万3000円、最低賃金制の適用を受けないB型の工賃が同1万5000円と、その低さが問題となっていたが、高単価の事業の発掘を中心にモデル事業所づくりを進めた結果、賃金や工賃が増え、生活保護から脱却、自立する障害者も出始めている。

 ≪人口減少社会の世界モデルに≫
 計画では、障害者支援事業を参考に、より多くの人が働ける就労モデルの確立に向け、今秋にも学識者や経済界、厚生労働省の協力を得て、その在り方を研究するプラットホームを立ち上げる予定だ。試算では、少なくとも対象者の30%、500万人近い新たな労働力が期待できるという。

 最終的には、より広範な人々の就労−社会参加を実現する「ダイバーシティ就労促進法」(仮称)の制定が目標となる。こうした活動が「働き方改革」につながり、多くの人が生活保護から脱却すれば社会負担の抑制も期待でき、タックスイーターから一転してタックスペイヤーになる人も出よう。

 多くの国が日本と同様、高齢化と人口減少を迎える。一億総活躍社会が実現すれば、間違いなく新たな世界モデルとなる。
(ささかわ ようへい)


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