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産経新聞【正論】北極海問題で日本の存在感示せ [2018年04月11日(Wed)]

北極海問題で日本の存在感示せ

産経新聞【正論】
2018年3月16日

 ≪10年後の夏場は氷が姿を消す≫
 北極海の温暖化が他地域の2倍の速さで進んでおり、10年後には夏場の氷が完全に姿を消す可能性が高くなった。海氷が融解し北極海航路が実用化されれば、アジアとヨーロッパの距離はマラッカ海峡・スエズ運河を経由する南回り航路に比べ30%以上短縮され、北極海に眠る石油、天然ガスの活用も現実化する。

 一方で温暖化に伴う海水温上昇や酸性化、グリーンランドなどの氷床融解に伴う海面上昇など地球環境全体、とりわけ人類の生存基盤である海の危機も深刻化する。

 わが国は国立極地研究所などの各国に先駆けた研究観測で、国際的にも高い評価を得てきた。法が支配する適正な北極海の利活用に向けたルール作り、地球環境全体に大きな影響を与える北極海の気象予測など幅広い国際貢献を一層、強化する必要がある。

 北極に関しては1996年、ロシア、カナダなど北極圏8カ国が北極評議会(AC)を設立、持続可能な開発や環境保護などを話し合い、非北極圏国13カ国がそのオブザーバー国となっている。わが国も2013年、中国、韓国とともにオブザーバー国に選ばれている。

 同じ年、8カ国の1つアイスランドのグリムソン前大統領の呼び掛けで各国の北極担当者や研究者、ビジネス関係者らが集まる北極サークルも立ち上がり、昨秋の第5回サークルには50を超す国から2千人以上が参加、北極に対する関心の高さをうかがわせた。

 北極には南極のように平和利用を定めた個別の法的枠組みや国際条約はなく、ACも軍事・安全保障に関する事項は扱わないのを原則としている。しかし新たな航路、膨大な資源が持つ戦略的・経済的価値は大きく、各国の動きも激しさを増している。

 こうした中、日本財団も一昨年、笹川平和財団海洋政策研究所、政策研究大学院大学と北極の未来に関する研究会を立ち上げ、2月上旬、AC諸国やオブザーバー国から100人を超す関係者を集め「北極ガバナンスに関する国際ワークショップ」を開催した。

 ≪「一帯一路」に結び付ける中国≫
 グリムソン氏も基調講演のため初来日し、筆者との対談では、北極海に対する中国の積極的な姿勢を話題にした上で、日本の一層前向きの対応を求められた。

 中国は今年1月、初の北極政策白書を発表、北極政策の目標と基本原則を打ち出すとともに北極海を通る航路を「氷上のシルクロード」として中国の広域経済圏構想「一帯一路」と結び付ける考えを示し、世界の注目を集めている。

 これに比べると日本の取り組みは確かに弱い。南極に比べ北極に対する関心の低さを指摘する声もある。科学的な調査研究で先行しながら、中韓両国が既に配備し2隻目を建造中の北極観測用砕氷船もいまだに所有できていない。

 筆者は1993年から6年間、海洋政策研究財団(現・海洋政策研究所)がロシア、ノルウェーの研究機関と進めた国際共同研究プロジェクトの委員長として、北極海の通年運航は技術的には可能との研究成果をまとめた。

 当時は北極海航路の実現を2050年前後と予測したが、温暖化の速度は予想をはるかに上回り、政府の取り組み強化は待ったなしの情勢だ。北極の未来に関する研究会でも1月、日本が取り組むべき課題と施策を提言にまとめ内閣府に提出した。

 ≪海洋国家としての総合戦略を≫
 北極政策は外交、安全保障から環境、資源まで幅広く、関係省庁が分散している現状では統一した国の政策を打ち出すのは難しい。提言では内閣府の総合海洋政策推進事務局を司令塔に関係省庁と総合調整を図るよう求め、併せて20年代前半までに砕氷機能を持つ独自の北極域研究船を建造し、わが国の強みである科学技術を生かした積極的な国際協力を推進するよう提案した。

 日本はアジア地域では最も北極に近く北極海航路が本格化した場合、北海道を中心とした地域活性化が期待できる半面、対馬、津軽、宗谷の3海峡に外国船舶が輻輳(ふくそう)し海難事故や海洋環境が悪化することも予想される。

 それ以上に、北極海の温暖化が現在の速度で進めば海水温度の上昇や酸性化で海の危機は深まり、膨大な氷床融解による海面上昇など、北極域の生態系だけでなく地球環境全体にも極めて大きな影響が出るのは避けられない。

 北極海の中央部分はどの国にも属さない公海に当たり、この海域をどう公正に管理していくか、日本には海洋国家としてそのルール作りの一翼を担う責任もある。

 政府は現在、18年から5年間の第3期海洋基本計画の策定を進めている。日中韓3国のハイレベル対話で科学面の共同研究を進める方針も確認された。

 わが国は海に守られ発展してきた。今こそ世界の先頭に立って海を守るべき立場にある。基本計画では国際社会が納得する存在感のある総合戦略が打ち出されるよう期待する。
(ささかわ ようへい)


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