「79歳、息子ができる」―犬の話です― [2017年12月06日(Wed)]
「79歳、息子ができる」 ―犬の話です― かつて我が家には息子四人と二匹の犬、二匹の猫がいた。今は老夫婦二人だけの生活である。近年の核家族化で人が直接、人の死に接する機会はめっきり少なくなった。 何時だったか普段はペットの面倒を見ない息子の一人が、犬の亡骸を抱いて誰にも言われていないのに風呂に入れ、洗い清める姿を見て「あぁ、動物を飼って良かった!」と思ったことがある。たとえ犬であっても、その死にやさしく接した息子の振る舞いを見て、情操教育が役立ったと感じたからである。 その息子が今は4人の幼児を抱え、さらに大型犬を飼い始めた。早朝、犬の散歩の途中に我が家を訪ねてくれるのが日課となり、何よりの楽しみとなった。雨天で来ないときは淋しい気持ちにさえなる。 「ローデシアン・リッジバック」という種類で勇猛な性格、南アフリカに住む狩猟・遊牧民族の猟犬として活躍しているらしい。1870年代以降、ライオンの狩猟補助のためローデシア(今のジンバブエ)で大活躍したところから「ライオンドック」の別名がある。 日本での登録は年間数頭というが、成犬になると体重は40kgを超え、筋骨隆々の体型になるといわれ、背中に生える茶褐色の逆毛「リッジバック」は勇猛の中に気品すら感じさせる。 飼い主の息子は、この気高い犬に「ゴン太」なる平凡な名前をつけ、躾のために高額な授業料を払ってサマースクールに入学させた。多分、飼い主に似て、成績不良だったのだろう。現在は毎週2回、近所の訓練所に通い再教育している。 まだ生後4カ月だが、私には何とも愛らしい存在である。5番目の息子として溺愛したいと思う。私にとって「ゴン太」は愛する末っ子である。 |