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日本財団会長 笹川陽平ブログ

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読書の勧め「ルポ 希望の人びと」―本人の視点に立った認知症― [2017年05月01日(Mon)]
読書の勧め「ルポ 希望の人びと」
―本人の視点に立った認知症―


過日、朝日新聞の生井久美子記者から新刊の著書「ルポ 希望の人びと ここまできた認知症の当事者発信」(朝日選書)を進呈いただいた。生井さんには以前、日本財団が取り組む小児ホスピスの研究会に参加いただいたことがある。

政治部記者などを経て1990年以降、医療や介護、福祉などの取材を続け、1994年2月、雪深い秋田の「痴呆病棟」で床に布団を敷いて寝泊まりしながら介護の現場を取材して以来、オーストラリアやカナダを含め、内外で幅広い認知症の取材に取り組んでこられた。

認知症は厚生労働省が2004年、この言葉に呼称変更するまで「痴呆」と呼ばれ、精神病の扱いを受けることもあった。有吉佐和子の「恍惚の人」がベストセラーとなった1972年当時、「呆け老人は家の恥」といった社会の雰囲気も強く、もっぱら家族や介護する側の視点で捉えられてきた。これに対し生井さんは、認知症の人やそれに関わる人を訪ねて対話、「はじめに」では「『本人』の視点に立つと何が見えるのか。その世界に分け入ってゆきたい」と書いている。

2014年10月、日本で初の認知症の人たちによる当事者団体「日本認知症ワーキンググループ」(JDWG)も立ち上がり、政府に対する政策提言など活発な活動を進めている。認知症の常識を変えようとする「当事者の力」を伝えるのが筆者の狙いで、同封いただいた手紙にも「読んで下さる方の内面と響き合う認知症ご本人の言葉が、この本の中にきっとあるに違いないと信じています」、「認知症の人のありようは、この社会を映し出す鏡だと痛感します」と記されている。

厚労省が2015年1月に発表した推計値によると、2025年の65歳以上人口は国民の4人に1人、3500万人に上り、認知症患者はこのうちの20%、700万人に達する。人は老いを止めることはできない。長生きをすれば、その分、記憶力は低下し、認知症にかかる確率も増す。誰もが怖れと不安を持ち、時に患者や家族に対する偏見も生む。

本の帯には「認知症の『常識』を変える!」、「『恍惚の人』から『希望の人びと』へ」、「初の当事者団体誕生の軌跡と最先端の『いま』を伝える」などの言葉が並び、全11章にわたり、偏見に対する認知症当事者の発信など最先端の現状報告、アルツハイマーの病名を日本で初めて明かして体験を語った茨城県の主婦、世界の先頭を行くオーストラリアやカナダの認知症当事者や関係者の生の声や姿を報告している。

その上で「おわりに」で、「寿命が延び、人は長く生きるようになった。年を重ねることで生じる能力の差、衰え。それをどう取り扱うかがこれから重要になる。認知症はそのひとつだ」と指摘、「認知症になったら『話せない、何もわからない』のではない。向き合う側や周囲の人たちが聴かなかった、聴けなかった、聴こうとしなかったからではないか、といま、思う」と、問い掛けている。

日本財団は障害者や高齢者、難病の子どもらが普通に参加できる社会、ハンセン病の患者・回復者に対する偏見・差別の撤廃など幅広い社会課題に取り組むが、当事者の目線に立った時、初めて見えてくる点も多い。本書に収載された「認知症の患者である前に、一人の人間です」(オーストラリア女性)、「不便なことも多いけれど、不幸だとは思わないんです。いまの方が心が通じていてむしろ満たされている」(夫が認知症の妻)といった言葉を前にすると、余計、その思いを強くする。

一人でも多くの人に是非、読んでいただきたい一冊である。

ルポ希望の人びと.jpg
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コメント
数年前に面倒を見ている叔母が認知症の気配があったので、認知症の治療を受けてみてはどうかと親族と相談したところ、高齢者介護の経験を多く持つ親族から、叔母に対してなんて失礼なことを言うんだと非難されました。案の定、叔母は現在重度の認知症になっています。認知症に少しでも効率的に立ち向かうためには、認知症になることは恥ずかしいという社会的な偏見の払しょくがとても大切だと思います。出来れば人間ドックのコースの中に初期の認知症を発見できるような検査を入れて、早期発見、気軽に予防的治療に取り組めるような社会体制や社会認識の醸成が必要だと思います。
Posted by: 長谷部正道  at 2017年05月17日(Wed) 18:40

とてもとても共感します。私も今何人かの認知症の方々と共に働いておりまして、社会の鏡であることはとてもよくわかります。予防には家族をバラバラにしないことが大切です。つなぎ合わせると介護保険が使いにくくなるという矛盾があるため、制度と戦っているような感じになります。正しくないとしみじみ思います。名木純子
Posted by: 名木純子  at 2017年05月01日(Mon) 11:14