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「ちょっといい話」その75―教皇のハンセン病発言― [2017年02月20日(Mon)]

「ちょっといい話」その75
―教皇のハンセン病発言―


世界のカトリック教徒12億人を擁する教皇庁の第266代フランシスコ教皇は、教皇庁組織の改革に意欲的に取り組んでおられる。

しかし、その過程で3回ほど失言をされた。
1回目は「出世主義はハンセン病」、2回目は「ご機嫌取りは教皇制度のハンセン病」、3回目は「小児性愛はカトリック教会に伝染しているハンセン病」というものであった。

その度に「ハンセン病を悪い喩(たと)えに使わないでください」との書簡をお送りしたが、返書を見る限り、教皇は私の書簡をお読みになっていないと直感した。そのため作戦を変更し、日本財団とバチカンとの共催で、ハンセン病についての国際会議を提案したところ、快諾を得て、昨年6月、バチカン教皇庁で国際会議が開催された。

結論の一つとして、ハンセン病を悪い喩えに使わないことが勧告に盛り込まれた。

さて、今年の世界ハンセン病デーへのバチカンのメッセージに注目していたところ、1月29日(日曜日)の一般ミサで、教皇は以下の通り諭された。

「本日、私たちは『世界ハンセン病の日』をお祝いいたします。この病気は減っているものの、いまだ最も恐れられており、貧しく、社会から無視された人に襲い掛かっています。この病気と、それがもたらす差別と闘うことは重要です。私は、この病気の治療や、ハンセン病患者、回復者の社会的な再統合に関わっているすべての人々に理解を促したい。」

教皇の失言が、私の小さな闘いの成果としてこのスピーチに現れたとしたら、少しうれしい気分です。

前日の世界ハンセン病デーには、ピーター・タークソン枢機卿の名で、下記の通りのメッセージが発せられた。

「ハンセン病の犠牲者たちには居場所と結束、そして正義こそ必要」

タークソン枢機卿は「この病気に対する恐怖は、人類の歴史の中で最も恐れられているもののひとつであり、そこには理由などありません。地域社会全体においてこの病理についての知識が欠如しているが故に、治癒した人たちが排除され、治癒した人たち自身もまた、長いあいだ耐えてきた病気の苦しみと差別により、彼らの中にある尊厳、身体に傷はあっても決して奪われることのない尊厳を、失ってしまっているのです。彼らの“ために”、そして何よりも、ハンセン病の犠牲者である彼らに“寄り添い”、彼らが自分たちの居場所、結束、正義を見つけられるよう、私たちはさらに深く関わっていかなければならないのです。」とおっしゃった。

「ハンセン病の撲滅とハンセン病患者・回復者、その家族の社会への再統合:まだ成し遂げられていない課題」

バチカン市国「人間の統合的発展に奉仕するための省」長官ピーター・タークソン枢機卿

効果的な薬物療法が開発され、そして、カトリック教会を筆頭に多数の国内および国際的な施設や機関において過去数十年間にわたって実施されてきた世界レベルでの大規模な取り組みは、一般にらい病として知られるハンセン病に対して非常に大きな打撃を及ぼしました。1985年の時点で、世界にはまだ500万を超える数のハンセン病患者が存在していましたが、現在、新たにハンセン病に罹る患者の数は年間約20万人となっています。しかし、なすべきことはまだたくさんあります。

その点については、昨年6月、当時のローマ教皇庁保健従事者評議会が主催したシンポジウム「ハンセン病患者・回復者の尊厳の尊重とホリスティック(総合的な)ケアへ向けて(Towards Holistic Care for People with Hansen’s Disease Respectful of their Dignity)」の終盤で焦点が当てられましたが、ハンセン病をめぐって今も残るスティグマと同様に、新たなハンセン病患者の発生はたとえ1人であっても望ましくありません。また、すべての無関心と同様に、ハンセン病患者を差別する法律は、どのようなものであっても存在してはなりません。マルタ騎士団、ラウル・フォレロ財団、善きサマリア人財団からの支援を受け、日本財団・笹川記念保健協力財団と協力して推進されたイニシアチブの枠組みの中で、その役割を考えると、すべての宗教の指導者がそれぞれの教え、著書、演説においてハンセン病患者に対する差別の撤廃に貢献することが重要であるという点がさらに強調されました。一方、その後、11月にソウルで開催されたハンセン病世界フォーラム(World Forum on hanseniasis)の場で世界保健機関も強調していたように、治療中だけでなく治療終了後も、患者の心身のケアを確保することが必要です。

加えて、すべての国において、家族、仕事、学校、スポーツなどに関連してハンセン病患者を直接的あるいは間接的に差別している政策を変え、ハンセン病患者に関わる実施計画を各国政府が確実に展開すべく、私たち全員があらゆるレベルにおいて明確な態度を表明しなければなりません。

最後に、新しい医薬品を開発するために科学研究を強化し、早期診断の可能性を高めるためにより優れた診断装置を備えることが基本です。

実際のところ、新しい患者のほとんどは、ハンセン病の感染が永久的な障害を引き起こし、成人や少年少女に生涯を通して影響を及ぼすことが明確となっている場合のみ確認されています。一方で、特に人里離れた地方では、治療を完了させるのに必要な支援を確保するのが難しかったり、いったん開始した薬物治療を続けることの重要性を患者自身が理解できない、あるいは治療の継続を優先するのが難しかったりすることがあります。

しかし、治療だけでは十分ではありません。ハンセン病から治癒した人が、家族、地域社会、学校、職場といった元の社会機構の中へ最大限可能な限り復帰できるようにすることが大切です。

様々な状況下でいまだにほぼ実現不可能となっている社会復帰のプロセスを促進し、そのプロセスに貢献するためには、ハンセン病回復者たち同士の連携をさらに支援し、奨励していく必要があります。同時に、回復者たちとともに、例えばインド、ブラジル、ガーナなどではすでに行われていますが、ハンセン病患者・回復者を理解し、受け入れ、そして相互扶助と真の兄弟愛を育むための豊かな土壌を提供できるような本当の家族になれるコミュニティが広がるよう、促進していく必要があるでしょう。

マルコによる福音書の第1章で語られている、ハンセン病に罹った男をイエス・キリストが癒した話について考えてみましょう。イエスが「深く憐れんで、手を差し伸べてその人に触れ、“よろしい。清くなれ”と言われると、たちまちらい病は去り、その人は清くなった。イエスは言われた。“誰にも、何も話さないように気をつけなさい。ただ行って、祭司に体を見せ、モーセが定めたものを清めのために献げて、人々に証明しなさい”」。

つまり、イエスは、男の全身を癒しただけでなく、癒した男に対し、完全なる社会復帰、「人間の共同体」への復帰を宣言できる人のところへ行くよう呼びかけたのです。

おそらく、昔と同様に今日も、ハンセン病の特徴が出た人やハンセン病患者のために働く人々にとって、この点が克服すべき最大の障壁でしょう。この病気が残す明白な後遺症である身体的な障害は、今日においてもいまだに烙印と見なされています。この病気に対する恐怖は、人類の歴史の中で最も恐れられているもののひとつであり、そこには理由などありません。地域社会全体においてこの病理についての知識が欠如しているが故に、治癒した人たちが排除され、治癒した人たち自身もまた、長いあいだ耐えてきた病気の苦しみと差別により、彼らの中にある尊厳、身体に傷はあっても決して奪われることのない尊厳を、失ってしまっているのです。彼らの“ために”、そして何よりも、ハンセン病の犠牲者である彼らに“寄り添い”、彼らが自分たちの居場所、結束、正義を見つけられるよう、私たちはさらに深く関わっていかなければならないのです。

なお、「ハンセン病とローマ教皇」のブログは、2013年6月26日2014年8月4日2016年2月8日に掲載しておりますので、ご興味の向きはご笑覧ください。

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「小さな闘い」のための「大きな覚悟と勇気」。ブログでずっと拝読しておりました「教皇のハンセン病発言」問題が、着実な前進を遂げられていることを、一読者としても大変嬉しいです。教皇と聴いただけで足がすくむ人も多い中、果敢に道を貫かれたこれまでの行動に、心から敬服いたします。
Posted by: 久米 信行  at 2017年02月20日(Mon) 13:18