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「世界銀行とメンタルヘルス」 [2016年07月20日(Wed)]

「世界銀行とメンタルヘルス」


今年の4月、世界銀行より、ワシントンDCでメンタルヘルスの会議を開催するので出席してほしいとの要請を受けた。

私は医者でもないし、ましてやメンタルヘルスについては無知同然なのでお断りしたところ、「あなたが取り組んでいるハンセン病制圧活動が世界で顕著な成績を上げているので、その方法を参考にしたい。是非出席してほしい」との再度の依頼を受け、出席することにした。

メンタルヘルスとは、精神面においる健康のことで、WHO(世界保健機関)は下記のとおり定義している。
「精神的健康とは、単に精神障害でないということではない。それは、一人一人が彼または彼女自らの可能性を実現し、人生における普通のストレスに対処でき、生産的にまた実り多く働くことができ、彼または彼女の共同体に貢献することができるという、十全にある状態である」とある。

下記の通り、簡単に説明はしたものの、参加者の態度を見ていると、私の話などとても参考になったようには見えなかった。

実は「あなた方がこの問題を真剣に解決したいのなら、溢れる情熱、どんな困難にも耐える忍耐力、それに成果が出るまで絶対にあきらめない継続性こそ必要であり、その覚悟はありますか?」と突っ込みたい衝動に駆られたが、不本意ながらきれい事で終わってしまった。国際会議の中には、会議を開催することに意義があり、実行とその成果の実現への情熱が伺えないケースが多々ある。

しかし当方は、売れない芸者のように、お声がかかると地の果てまでも出て行く軽薄さ。これは私の欠点と知りながら出掛けていく。治りそうもない生活習慣病なのでしょう。

下記、その時の発言です。

****************


世界銀行/世界保健機関共催
「影の外へ−メンタルヘルスをグローバルな開発の優先事項に」


2016年4月14日
於:米国・ワシントン


11メンタルヘルス会議で発表.JPG
メンタルヘルス会議で発表はしたが・・・


今回、主催者から、このシンポジウムへの出席のご依頼を受けた時、私はメンタルヘルスの専門家ではないのでこの場に不適切ではないかと思いました。しかし、私が長年携わってきたハンセン病へのアプローチを参考にしたいとのことだったので、自分の経験が役立てばと思い、出席させていただくことにしました。

私は40年以上にわたり、ハンセン病制圧活動に取り組んでおり、2003年からWHOのハンセン病制圧大使として活動しております。

ハンセン病は、古くから呪いや神の罰と恐れられ、世界各地で患者や回復者に対する隔離政策が行われていました。

19世紀後半、ハンセン病はある種のバクテリアによる感染症であることが判明し、20世紀後半には、投薬による有効な治療法が確立されました。

こうして、それまでのハンセン病に対する人々の認識は誤解であることが証明されたはずだったのですが、多くのハンセン病患者を抱える開発途上国を中心に、ハンセン病は未だに公衆衛生上の問題であり、病気に対する誤解や当事者への差別は続いています。

ハンセン病は、感染力の高い病気ではありません。生命を直接脅かす病気でもありません。その結果、差し迫った問題として顕在化せず、国によっては政策上の優先順位が低く、保健政策の中にきちんと位置づけられていません。加えて、ハンセン病の専門家はほとんどいません。

本日は、ハンセン病制圧のための私の3つのアプローチについてお話したいと思います。政治指導者に直接働きかけること、ハンセン病の普及啓発に努めること、コミュニティを巻き込むことです。

まず1つ目に、政治指導者に働きかけることは、ハンセン病の制圧に対してその国のコミットメントを取り付ける上での鍵になります。私はWHOハンセン病制圧大使として蔓延国を訪れ、政治指導者と面会するようにしています。ハンセン病の問題の深刻さを説明し、解決することの重要性を説いて、政策上の優先順位をより高めてもらうよう求めています。このアプローチが功を奏し、いくつかの蔓延国において、ハンセン病への対策の予算が増やされ、この問題に国を挙げて取り組んでもらえることにになった例もありました。

2つ目は、普及啓発に努めることです。私は、この病気が、「治ること」、「差別は不当であること」をより多くの人に知ってもらうことが重要であると考えています。メディアはその中心的な役割を担います。ハンセン病は多くの地域でタブー視され、メディアで大きく取り上げられることはほとんどありませんでした。言い換えれば、影に隠れていた問題だったのです。私はそこで、ハンセン病の回復者に対し彼らの経験や、彼らが苦しんできた差別や誤解についての話をしてもらえないかと働きかけるようにしています。彼らの経験が共有されることで、より多くの人たちがハンセン病について知ることにつながるからです。このように、私はハンセン病を影の中から影の外に導き出そうとしています。

3つ目のポイントは、地域を巻き込むことです。ハンセン病は、早期発見・早期治療が非常に重要です。ハンセン病の患者の中には、病気に関する基本的な情報を知らなかったり、病気に伴う差別の恐れなどから受診をためらう人たちもいます。それが結果として症状を悪化させてしまうこともあります。例えば、インドのある地域では、同じ地域に住むハンセン病経験者が中心となって自助グループを作っています。彼らは地域でハンセン病と疑われる症状の人がいたら、その人を適切な医療機関に紹介するという活動を行っています。彼らは医師でも医療スタッフでもありませんが、同じ経験者だからこそわかる初期症状にいち早く気づくことができ、治療に行くよう説得することもできます。このような地域に根ざした活動は、未治療の患者を早期に治療に結びつける上で大きな成果を上げています。私は、専門家であるか否かに関わらず、地域の人たちが協力することが、潜在的な患者の発見や治療、ケアにつながることを学びました。

本日は、ハンセン病の制圧における私のアプローチとして、政治指導者に直接訴えること、普及啓発活動を行うこと、コミュニティを巻き込むことについてご紹介させていただきました。中には、メンタルヘルスに通じることもあるかもしれません。私の話が少しでもお役に立てばと思います。

ありがとうございました。

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コメント
「国際会議の中には、会議を開催することに意義があり、実行とその成果の実現への情熱が伺えないケースが多々ある」とありますが、まさにその通りです。私は、そういう会議に出る人達のことを「シャンペン・デべロプメンタリスト」(シャンペンを飲みながら、貧しい人々を助ける話を得々とする人)と呼んでおりました。メンタルヘルスの会議なら病院や関連施設の中で医者や患者を聴衆にしてやるのが適当だし、貧困撲滅の会議なら、リゾート地の大ホテルではなくて、途上国の小学校の講堂などでやるのが適当だと思います。成果を考えずに、「今日はいい話を伺いました」ということだけで終わる国際会議が、世銀、国連、OECDなどに多すぎます。
Posted by: 赤阪 清隆  at 2016年07月20日(Wed) 10:22

ハンセン病の差別を救済する一方で、LGBTへの差別的スタンスは継続するのでしょうか。それとも国際社会の変化に遅ればせながら同調しますか?
Posted by: y  at 2016年07月20日(Wed) 08:05

メンタルヘルスのテーマについて、話されたという事実が当事者、解決に取り組む人々、研究者にとっては大きな力になります。メンタルヘルスは個人的な社会問題です。その場の人間がわからないのは、そのテーマが複雑で重要であるという印だと思います。
Posted by:  at 2016年07月20日(Wed) 07:51