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「海の日に想う」その2―世界の海を守る日本へ― [2015年07月29日(Wed)]

「海の日に想う」その2
―世界の海を守る日本へ―


気候変動や海の酸性化により汚染は静かに、しかし深刻な影響が出始めている。

南太平洋の島国キリバスのアノテ・トン大統領は、「笹川さん、海面上昇で私たちは近い将来、住みなれた祖国を離れなければならない日が近づいています。フィジー島に土地を手当てしました」と、深刻な表情で語られた。

日本財団とプリンストン大学、ケンブリッジ大学等で漁業について調査しているグループは、2050年、今から35年後には熱帯地方の魚類は40%〜60%減少するだろう。海の酸性化は葉植物性プランクトンを減少させ、特に海老、蟹、貝類が減少する。日本の鮨も、マグロをはじめとした高級魚や海老、蟹、貝類はなくなり、スケソウダラとサバになるだろとの予測を、先日の記者会見で専門家が明らかにした。

海には静かに、しかし確実に危機が訪れているのである。そこで「海の日」特別行事の総合開会式で、安倍総理のご挨拶に続いて下記のような挨拶をさせていただいた。

*****************

「海の日」を持つ国から世界への貢献


2015年7月20日
於:ザ・キャピトルホテル東急


本日は安倍内閣総理大臣、山谷海洋政策担当大臣、「海の日」特別実行委員会の宮原会長、さらには関水IMO事務局長にもご臨席を賜りまして総合開会式が開催されましたことに、心からお慶びを申しあげます。

1995年に「海の日」が制定されてからちょうど20年です。この間、日本の海洋政策において、重要な進展がありました。2007年の海洋基本法の施行と、それに基づいた総合海洋政策本部が設置され、各省庁の政策を横断的に推進していく体制ができました。

しかしながら、世界の海を見渡しますと、私たちの想像を超えた深刻な問題が起きております。気候変動は海洋環境を激変させ、海水の酸性化は海洋生物の食物連鎖や繁殖に大きな打撃を与えております。これら「海の病」を根本的に解決する方策を我々はまだ見出しておりません。

高度に発達した科学が様々な技術を生み出し、海洋に関する各分野の研究を飛躍的に進歩させたことは事実です。しかし、こうした科学的知見が海洋環境の改善に十分に役立っているとはいえません。地球規模で起こる海洋問題の解決には、従来の特定分野だけの閉鎖的な議論では不十分です。海が国境を越えて一つにつながっていることを考えれば、それぞれの国の組織、あるいは分野毎の縦割りのアプローチでは対応しきれないことも明らかです。例えば、新しく発見された海底資源の開発や公海の利用は、深刻な法的、政策的な問題を投げかけています。従って、これまでにない新鮮で柔軟な考えと知恵をもって取り組む必要があります。

また、人類の欲望が、海洋生物資源の枯渇や、海の複雑な生態系のバランスを破壊しています。利害関係と専門領域を超えた国際的な議論を行い、次世代に海を引き継ぐ方策を考えなければなりません。近い将来、世界の人口は100億人を超えます。人類の生存に関わる海の問題は、静かに、そして急速にその領域を広げています。私たちは今こそ、海の声なき声に耳を傾ける必要があるのではないでしょうか。私たちが引き起こした海の危機的な状況は、私たち自身が阻止すべきです。また、解決することができるはずです。

そのためには、分野を超えた人材の育成が急務です。これまでのような専門領域に特化した伝統的な人材育成ではなく、俯瞰的な視点で考え、行動できる人材を養成することが、海洋に関する問題の解決に効果的な手立てのひとつだと考えています。同時に、そのような人材による利害関係を越えた国際的な「人のつながり」を作ることが重要です。

日本財団は、世界有数の研究機関や大学、各国の政府、NGO、そして国際機関と連携し、「海の世界の人づくり」事業を行っております。先ほど総理からご紹介いただきましたように、現在、129カ国から1,075名の人材を輩出し、さらなる人材の育成に懸命の努力をしています。今や、海の世界も法の秩序が叫ばれる中で、海洋の利用・開発を促進するためには、多様な分野にまたがる国際法に精通した人材が必要ですので、国際海事法研究所や国際海洋法裁判所で法律の専門家の育成に努めております。また、国連と協力し、各国の海洋関連の政府高官、行政官、そして研究者の人材育成にも、努めているところです。

また、世界的な海洋生物資源の枯渇を食い止めることも喫緊の課題です。私たちはアメリカのプリンストン大学、イギリスのケンブリッジ大学、デューク大学等々の6つの大学をパートナーとし、気候変動、海洋政策、生物多様性、水産経済などの専門家を育成するとともに、それぞれの分野を横断した研究や取組みを実践しているところです。こうした人の育成とつながりが、これからの新しい海洋秩序を生み出していく力になっていくことを期待しています。

しかしながら、海の危機を阻止するためには、これだけの取り組みだけでは十分とは言えません。国際社会の変化を導くため、国レベルでの先導役が必要不可欠であることは言うまでもありません。日本は、海からの豊かな恵みをいただき発展してきた国であり、海洋生物資源の適切な管理や温暖化防止に貢献できるような高度な技術、豊富な知見を持つ国でもあります。そして総理がお話されたとおり、今後は「海に守られた日本から、海を守る日本」への積極的な転換をしながら、さらに「世界の海を守る日本」へと進化することが求められています。「海洋」を重要な柱とし、地球上のすべての生命の生存に関わる海を守るための取り組みを、今こそ日本が世界の先頭に立って行うべき時期が来たのではないでしょうか。

ご列席のみなさま。世界で唯一の「海の日」を祝日に持つ国として、今後、国際社会でお互いにリーダーシップを発揮していこうではありませんか。
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