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「アジアの平和構築と国民理解」―民主化に関するハイレベル・セミナー― [2015年07月13日(Mon)]

「アジアの平和構築と国民理解」
―民主化に関するハイレベル・セミナー―


6月20日、外務省主催で上記の表題の国際会議が国連大学で開催された。

主な出席者は,ラモス・ホルタ前東チモール大統領、ピッツワン・スリン前アセアン事務総長、マンガラ・サマラウィーラ・スリランカ外務大臣、デイビッドM・マローン国際連合大学学長、岸田文雄外務大臣などが出席された。

私はミャンマー国民和解日本政府代表として「ミャンマーにおける日本の平和構築支援活動について」と題してスピーチを行った。

ご参考までに掲載します。
(原文は英語)

******************

「ミャンマーにおける日本の平和構築支援活動について」


於:国連大学
2015年6月20日


セミナー風景1.JPG


おはようございます。本日は、平和構築の専門家や各国の首脳と共にこのハイレベル・セミナーに参加できることを大変光栄に思います。現在進んでいるミャンマーにおける和平プロセスについて、それから、平和と安定に向かう困難な道のりへの日本の関わり方についてお話させていただきます。

ミャンマーは長年にわたり軍事政権が続いていましたが、2011年3月のテインセイン政権誕生以来、急速に民主化が進んでいます。

日本は早々とこの動きを歓迎した国の一つとして、ミャンマーのさらなる改革を促進するため、幅広い支援を行っています。その一環として、日本政府は、ミャンマー国民和解担当日本政府代表というポジションを置き、その役割を私が拝命しました。それは、日本政府がミャンマーの民主化にとって国民和解が重要であるという認識を持っていることの表れだと思います。拝命を受けたことを光栄に思うとともに、少数民族武装勢力とミャンマー政府の和解を支援する役割を慎んでお受けしております。

私のような民間人がこのような重要な任務を任されたのは、私が会長を務める日本財団がミャンマーで行ってきた人道的な支援を日本政府により評価されたからだと思います。

日本財団のミャンマーに対する支援は30年以上にわたります。1980年代、世界の最貧国の一つであったミャンマーは、軍事政権下に置かれていました。当時、ほとんどの国はミャンマーに対する援助を打ち切りましたが、日本財団は人道的な観点から、保健医療並びに教育分野で少数民族地域も含めて支援を必要とする一般の人々に人道支援活動を行ってきました。

ミャンマーは東に中国、西にインドという両大国に挟まれた国であり地政学的な要衝です。かつてはアジアで最も豊かな国の一つでもあり、これから再びその豊かさを実現できる潜在力を有しています。中国、インドを含む太平洋地域が世界の繁栄の中心となる時代が到来しつつある現在、ミャンマーの平和は、同国の安定だけでなく、アジアおよび世界の安定と発展にも貢献できるでしょう。

ミャンマーは130以上の民族によって構成される多民族国家です。その一部の少数民族武装勢力とミャンマー政府の間には連邦制や自決権、自治権を巡り対立があり、60年以上にわたり、双方の間で武力衝突が繰り返されてきました。その間、少数民族武装勢力とミャンマー政府の間で停戦合意が結ばれることもありましたが、それが度々破られてきました。その結果、互いに不信感を募らせていました。

このような厳しい状況の中でも、いくつかの少数民族武装勢力はミャンマー政府と停戦合意交渉を続けていました。それまでは、少数民族武装勢力は政府と個別に交渉にあたっていましたが、16の少数民族武装勢力は、全土停戦合意コーディネーション・チームを組織しました。その結果、全土停戦交渉に進展が見え始めましたが、少数民族武装勢力側の有力な意思決定者の中には、交渉を進めるにあたって極めて慎重な姿勢を崩さない人も含まれているので、交渉が中断することもしばしばありました。

対立する当事者間の交渉がこのような段階に至った時には、第三者が関与することで交渉を再開に導く可能性が出てくることもあるかと思います。とはいえ、平和を構築できるのは紛争当事者だけです。ですから、第三者の関与は最小限にとどめるべきだと考えております。

ミャンマーの場合、双方が長年にわたる不信感と疑念を抱いている中で停戦合意を結ばなくてはならないのですから、第三者に期待されていることは、双方が交渉のテーブルにつくように説得し、対話の場を増やし、双方が同じ土俵に立ったレベルでの交渉の実施を確実にするという役割を担うことではないかと考えています。

この和解プロセスには、もう一人の主役(キープレイヤー)がいることを忘れてはなりません。それは、その地域で暮らす一般の住民です。私たちが「紛争当事者」という場合、交渉のテーブルにつく限られた関係者の方に目が向きがちです。しかし、紛争が起これば常に大勢の一般の住民が混乱に陥り、痛みや苦しみを背負うことを余儀なくされてしまうのです。
彼らの状況を理解し、また、考え方やニーズに耳を傾けることは極めて重要であると考えています。そこで、私は、いくつかの少数民族武装勢力によって支配されている地域の国内避難民を幾度となく訪ねています。

彼らの現状について皆さんに少しお伝えしたいと思います。
武力衝突が激しくなり、住んでいた村を逃げ出した家族。彼らは着の身着のまま逃げてきた人たちです。青いビニールシートを屋根の代わりにし、雨露をしのぎ、床には空になったコメ袋を敷いて寝ています。何とか火を起こし煮炊きをしようとしている人もいます。たまたま捕まえたトカゲや木の根っこ、木の実以外に食べるものはほとんどありません。彼らの生活は、毎日が生きるための闘いであり、不安に満ちた暮らしです。

また、診療所を訪問する機会がありました。診療所には常駐の医師がおらず、タイで見ようみまねで技術を習得した看護師が一人いるだけでした。薬の在庫はなく、入院病棟には、木の板で作られた空っぽのベッドが数台あるだけでした。私が「ここの地域に病人はいないのか」と看護師に尋ねると、彼女は「病院に来ても薬がない。来ても意味がないので来ないだけ」と答えました。

私は、このような悲惨な状況を目の当たりにして、緊急人道援助の必要性を強く感じ、一般の住民が平和の兆しをゆっくりでも着実に感じ取れるような状態にしなくてはならないと思いました。

国連によると、このような条件下で暮らす人々はミャンマー全体で約80万人いるといわれています。人道支援の標準的なアプローチは、停戦合意が守られていることが確認できるまでは、人道支援は控えるというのが一般的だと思います。しかし、場合によっては、停戦合意協議の交渉が続いているのであれば、紛争で荒廃した地域に暮らす人々の生活を維持するための人道支援がなされてもよいと感じています。ミャンマーに関しては、ミャンマー政府が、この日本のアプローチと100億円の人道支援を受け入れました。これまでに、コメ、穀物、豆類、食用油、塩、医薬品、蚊帳、ソーラー・ランタンなどの緊急援助物資が約30万人の人々に届いています。全土停戦以前のこのような支援には賛否両論あると思います。しかし、双方の了解を得られた上で、少しでも対話が進む環境をつくることができるのであれば、このような支援を実施することに意義があると考えています。
今年の3月31日、ミャンマー政府と16の少数民族武装勢力は、全土停戦合意文書草案について合意に達しました。この歴史的な合意の直後、和平交渉担当責任者であるアウン・ミン大臣が来日し、安倍首相にテインセイン大統領からの日本の支援に感謝する親書を手渡しました。

この停戦合意文書草案への合意は和平に向けての大きな一歩であると評価してよいと思いますが、それから2カ月が経過し、現在、状況はまだ流動的です。また、11月に総選挙が行われる予定ですが、これは停戦合意プロセスを前進させる要素になるかもしれません。

ミャンマーは民主化への過程で多くの困難に直面するでしょう。中でも、ミャンマー政府と少数民族武装勢力との和解は最も大きな課題の一つです。しかし、双方が互いに誠実に取り組むことができれば、道は切り拓いていけるはずです。日本は今後もミャンマーに寄り添い、国際社会と協力の上、支援を継続していく所存です。

アジアが世界経済の成長の中心となる新しい時代が到来しています。アジアの中には不安定な要素を抱えている国や地域もあり、アジア地域に平和を構築し、安定をもたらすことが極めて重要です。国際社会は新たな課題に対応できる準備をする必要があります。

安倍首相は、日本が積極的平和主義の下、アジアの平和に貢献する役割を担い続けていく決意を表明しています。日本はこれからも国際社会からの様々なニーズや期待に応えてまいります。
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