「おもてなしはタバコで?」―東京オリンピック・パラリンピック― [2015年06月01日(Mon)]
「おもてなしはタバコで?」 ―東京オリンピック・パラリンピック― かつて「タバコ一箱を1000円に」と論陣を張り、賛否入り乱れて甲論乙駁、世論が多いに沸き「死ね」とか「バカ」と激しい言葉をいただいたことがあった。人々の健康に関する問題で、これを機会にたばこ価格が5割ほど値上がりしたのは周知の通りである。 当時の値上げ反対理由の多くが、今や何らの説得性を持たないこともはっきりした。この点は後日、あらためて触れるとして、今回は東京オリンピック・パラリンピックとタバコの問題について述べたい。 最初にはっきりさせておきたいのは、オリンピックは東京都が招致したということである。国際オリンピック委員会(IOC)は1988年、禁煙方針を採択し会場内外のタバコ規制を進め、2010年には世界保健機関(WHO)とたばこのないオリンピックを目指すことで合意文書を交わしている。 喫煙場所の限定や受動喫煙防止は招致条件ではないが、2000年のアテネ五輪オリンピック以降、北京、ロンドン、ソチなど夏季、冬季を問わず、どの大会も喫煙場所や受動喫煙を厳しく制限し、来年のリオデジャネイロも厳しい禁煙対策が採られることになっている。 東京も当然この慣習を踏襲し、飲食店など屋内施設に禁煙や分煙を義務付ける条例を制定すると思われていたが、5月23日付の毎日新聞朝刊によると、舛添要一東京都知事は、法律により国全体でやるべき問題だ、として条例制定を見送る考えを表明したという。 オリンピック開催がどのようなものか、最近のメインスタジアム建設問題も含め、理解が不足しているのではないか、唖然とする思いがする。オリンピックの招致に名乗りを挙げたこと自体が、招致に成功した場合の厳しい禁煙対策の実施を世界に「公約」したことになり、仮に禁煙対策の徹底が不発に終われば、折角のおもてなしも“たばこの煙でおもてなし”といったブラックユーモアになりかねない。 5月28日付毎日新聞によると、国立がん研究センターなどが行った都民アンケート調査では、「罰則付き規制を制定すべきだ」が53.4%、「罰則なしの規制」が22.2%、「何も規制しなくてよい」はたったの10.1%となっており、都民も規制の強化に向け健全な反応を見せている。 受動喫煙防止条例はまずは都議会で制定されるべきで、「国の法律で対策せよ」という都知事の姿勢は責任逃れであり、これでは「リスクを取らない指導者の典型」ということになりかねない。 都知事殿!! オリンピックはあなたが主役ですぞ!! 夢のある2020年オリンピックの実現に向け、最高責任者としての強力な指導力を発揮されますよう期待しております。 余談になるが、週刊新潮に連載されている吹浦忠正氏の「オリンピック・トリビア!」は今週号が第21回目、オリンピックにまつわる話題が豊富で一読をお勧めしたい。 |