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「ハンセン病と人権」―国際シンポジウム― [2014年12月08日(Mon)]

「ハンセン病と人権」
―国際シンポジウム―


10月26日〜11月5日までモロッコ、スペイン、ポルトガル、11月8日から14日までタイ、ミャンマー、11月17日〜25日までインド、11月28日〜30日までタイ、12月1日〜5日までミャンマーと海外出張が続き、その上、東京での短い滞在中には北極海航路国際セミナーや日本財団・国連法務部海洋法課(DOALOS)総会(50ヶ国参加)などもあり、下手な英語でスピーチをするための練習等で、誠にあわただしい毎日だった。

下記のスピーチ(原文・英語)は、多くの関係者の協力を得て2010年、国連総会で加盟193カ国、全ての賛成を得て決議された『ハンセン病患者・回復者とその家族への差別撤廃』」の決議案とその原則とガイドラインを各国政府に実行してもらうため、世界五大陸で行っている第4回目となる国際会議を、今年は中東地域のモロッコで開催した時のものです。

ちなみに第1回はブラジル、第2回はインド、第3回はエチオピアで行われ、最終回はジュネーブ(スイス)で来年開催する予定です。

モロッコでは、人権国際シンポジウムと同時に、医療面の専門家である各国のハンセン病プログラム・マネジー会議も開催しました。この時のスピーチもあわせて掲載しました。

長文になり、読者の皆さまには申し訳ないことであります。

*********************

第4回ハンセン病と人権国際シンポジウム


2014年10月28日
於:モロッコ・ラバト


28日 シンポジウム参加者たち.JPG
シンポジウム参加者


本日は各国政府、国連、NGO、その他の国際機関、人権専門家、回復者のリーダーの皆さまにお集りいただき、ありがとうございます。日頃からハンセン病制圧活動のために多大なるご尽力をくださっているモロッコ保健省の皆さま、WHO関係者の皆さまに心より感謝申し上げます。また、潘基文国連事務総長、ダライ・ラマ法王からはハンセン病を取り巻く差別の問題に対して心強いメッセージをいただき、厚く御礼申し上げます。

今回は第4回目のハンセン病と人権国際シンポジウムです。
ハンセン病は人類の歴史の中で最も誤解され、差別を受けてきた病気のひとつとして知られています。何世紀にもわたり、世界各地で、ハンセン病患者・回復者は故郷を追われ、人里離れた村や島に隔離されていました。そして、その差別はハンセン病患者・回復者本人だけではなく彼らの家族にまで及びました。

1980年代になると、多剤併用療法(Multidrug therapy:MDT)という有効な治療法が開発され、1990年代後半からは、世界中どこでも無料で薬が手に入るようになり、多くの人々が病気から解放されました。また、早期発見・早期治療が的確に行われれば、障害が出る前に病気を治すことができるようになりました。このように医療面では突破口が見つかったにも関わらず、長い間、ハンセン病患者・回復者を苦しめているスティグマや差別は残ったままです。

私は40年以上にわたり、ハンセン病制圧活動で世界各地に足を運ぶ中で、多くのハンセン病患者・回復者に出会いました。社会のひどい差別を恐れてコロニーを離れることを拒む人々。ハンセン病を患っているということが明らかになってしまったことで、仕事を失ったり、離婚を余儀なくされてしまった人々。差別に苦しむ人々の人生はどれ一つとして同じものはありません。しかし、彼らの過酷な苦しみは世界各国に共通する深刻な問題です。

私はこうした社会の不正と闘わないわけにはいかないと強く感じました。そこで2003年、私はハンセン病を取り巻く人権問題について、国連人権高等弁務官事務所に訴える決意をしたのです。各国政府やNGO、関係者の皆さまの粘り強く、誠意あるご協力により、7年の歳月を経て、2010年12月、「ハンセン病差別撤廃決議」が国連総会の総意をもって採択されました。この国連決議は、ハンセン病との闘いにおいて非常に大きな一歩でした。国際社会はこの時はじめて、ハンセン病患者・回復者の見過ごされてきた人権問題や彼らに対するスティグマや差別をなくすことの重要性について認識したのです。さらに重要なことは、この国連決議により、ハンセン病患者・回復者が他の人々と同様に自分にも基本的な人権があることを自覚できたことでした。

本決議は、各国政府等に対し、「ハンセン病差別撤廃決議」と原則及びガイドラインに十分な考慮を払うことを求めています。原則はハンセン病患者・回復者が病気を理由に差別されることなく、人としての尊厳と基本的人権・自由を有することを謳っています。そして、ガイドラインは各国の取り組むべき具体的な指針を示しています。例えば、差別的な法律や制度の撤廃や出版物から差別的な表現を取り除くことなどです。

しかし、国連決議には法的拘束力がありません。国連決議と原則及びガイドラインは、実際に社会の中で適用されなければ何の意味も持たないのです。つまり、現状は何も変わらず、ハンセン病患者・回復者に対するスティグマや差別はそのまま残り、彼らは厳しい差別に苦しみ続けることになってしまうのです。

そこで、私は国連決議と原則及びガイドラインを各国政府、政策立案者やその他の関係者に広く浸透させ、社会の中で確実に適用されることを目的に、世界の5つの地域において「ハンセン病と人権国際シンポジウム」を開催するに至りました。すでにブラジル、インド、エチオピアにおいてシンポジウムを開催しました。ブラジル会議の後、国際ワーキンググループが発足し、各国で原則及びガイドラインを実行してもらうための具体的な行動計画を練っているところです。

ハンセン病患者・回復者を取り巻く多くの問題は、社会のハンセン病に対する誤解や無知に起因しています。ここ、中東地域においても、ハンセン病は未だに恐怖の対象となっています。ハンセン病は感染率の高い病気であるから、彼らを排除しなければならないという誤った認識をしている人もいます。

では、どのようにすれば、差別のない社会をつくることができるのでしょうか。原則及びガイドラインにも明記されていますが、ハンセン病患者・回復者やその家族の人権や尊厳を尊重するためには、各国政府がNGO、市民社会、メディア、ビジネスセクターなど様々なステークホルダーとの連携を通じて、政策立案や行動計画の作成に取り組み、社会の認識を変えていくことが不可欠です。先ほど申し上げたように、現在、国際ワーキンググループがこのモデルとなり得る行動計画を策定中です。この地域においては特に、女性の役割と歴史保存をより重要な課題と捉え、この後のセッションで取り上げます。こうしたことについて、モロッコ政府がコミットメントをくだされば、今までにないような大きな一歩を踏み出せることでしょう。

スピーチ風景.JPG


このシンポジウムで闊達な議論がなされることで、中東地域における具体的な取り組みがはじまる契機となることを願っています。

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ハンセン病プログラム・マネージャー会議


2014年10月29日
於:モロッコ・ラバト


各国保健省プログラム・マネージャーの皆さま、WHO関係者の皆さま、そして、ハンセン病問題に取り組む関係者の皆さまのご尽力にあらためて感謝申し上げます。

私は40年以上にわたり、ハンセン病制圧活動に取り組んでまいりましたが、ここ20年の公衆衛生上のハンセン病制圧における世界的な改善には目を見張るものがあります。WHOが1991年に「患者登録数が人口1万人当たり1人未満となること」という明確な目標を掲げて以来、各国は、目標達成のために綿密な計画を立て、これに沿って関係者の力を結集し、ハンセン病の制圧に向けて尽力されました。

言うまでもなく、ここWHO東地中海地域事務所(EMRO)もハンセン病制圧に向けて多大な貢献をしてくださいました。モロッコでは、1980年以降、ハンセン病患者は指定病院ではなく、地元の診療所で治療を受けられるようになり、また、新規患者発見のための家庭訪問が実施されるようになったと聞いています。患者を減らすだけではなく、早期発見・早期治療のための様々な新規プログラムを政策の中に組み込んでくださっているモロッコ保健省の皆さまに感謝申し上げます。また、ハンセン病患者・回復者に寄り添って活動をしてくださっているプログラム・マネージャーの皆さまに御礼申し上げます。

このような成功例は、ハンセン病と闘うすべての国においても多くあることと思います。こうした努力の結果、ハンセン病の制圧は、世界各国で劇的に進展しました。そして今、ハンセン病未制圧国はブラジルを残すのみとなりました。

しかし、目標に向かって懸命に努力をしていた国でさえ、一度、制圧目標を達成してしまうと関係者の意識が低下してしまうことが往々にしてあります。また、ハンセン病に関する予算や人材が減らされ、他の疾病に比べて相対的にハンセン病の優先順位が低下してしまいます。私はこのような状況にならざるを得ないことも理解しております。しかし、そのことにより、関係者がハンセン病との闘いの本質的な意義も低下してしまったと誤解されることを懸念しています。
ハンセン病患者・回復者は病気との苦しい闘いだけではなく、差別という精神的な苦しみを抱えているため、今後も新規患者を早期発見・早期治療をしていくことが重要だと考えています。ハンセン病制圧活動の主な目的は、感染の予防、患者の発見及び治療、障害の予防だけではなく、差別との闘いという重要な目的があります。

ご存知の通り、ハンセン病は様々な複雑な問題が絡み合っています。多くの国々で、ハンセン病患者・回復者は病気だけではなく、スティグマや差別に苦しんでいます。私は、長年にわたるハンセン病制圧活動を通じて、声をあげることでさらなる差別を受けることを恐れ、沈黙をしたまま、治療を受けることさえできずにいる多くの患者を目の当たりにしてきました。スティグマや差別をなくす多大な努力がされてきたにも関わらず、未だに世界中で多くの人々が一度ハンセン病に罹ると、社会的にも経済的にもコミュニティから孤立をしています。

新規患者の早期発見・早期治療が的確に行われることで、差別を受ける人々の数は減ってきましたが、スティグマが完全になくなるにはまだ時間がかかるでしょう。

プログラム・マネージャーの皆さまは、ハンセン病を取り巻く医療面と社会面の双方の問題の解決に多大な貢献をしてくださっています。皆さまのこれまでのご尽力に敬意を表しますとともに、引き続き、固い決意をもって活動を続けてくださることを期待しています。

私たちは、今、共通の目標を達成するために一人ひとりの責任を再確認するために、ここに集まりました。皆さまの努力と熱意をもって、ハンセン病とそれに伴う差別という苦しみが軽減されていくことを心から願っています。


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