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resize.png日本財団はハンセン病の差別撤廃を訴える応援メッセージサイト「THINK NOW ハンセン病」を開設。皆様からのメッセージを随時募集・配信しています。
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「国際法曹協会」―法の支配賞・受賞― [2014年10月29日(Wed)]

「国際法曹協会」
―法の支配賞・受賞―


弁護士のオリンピックとも呼ばれる国際法曹協会の年次総会が、アジアで初めて、天皇・皇后両陛下ご臨席のもと、10月19日から世界130ヵ国から5千人以上の参加者を得て東京国際フォーラムで開催された。

国際法曹協会は、日本弁護士連合会を初め、世界約200の弁護士会と3万人以上の弁護士が会員になっている。人権擁護、法の支配と司法の独立等が活動の主たる目的で、その発言は国際社会で大きな影響力を持っている。

開会式で安倍首相は「『法の支配』は普遍的で、その根底には深い人類愛がある」と挨拶されて喝采された。

私は今大会で長年に亘るハンセン病との闘いが評価され、日本人では唯一人、「法の支配賞」を授与された。

以下は受賞の際のスピーチです。

*****************


2014年10月23日
於:東京国際フォーラム
原文・英語


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このたびは、栄誉ある賞をいただき大変光栄に存じます。国際法曹協会の皆さまには、このような素晴らしい機会をいただき心より感謝申し上げます。

安倍首相は開会のご挨拶で「『法の支配』という考え方は普遍的であり、その根底には深い人類愛がある」とお話されました。この言葉を聞き、国際法曹協会から「法の支配賞」を受賞するにあたり、同じ目的を推進している者の一人として、この賞に恥じないために、さらに邁進すべく、この賞が意味する義務を果たすことに一層の責任を感じています。

国際法曹協会のレイノルズ会長をはじめ協会関係者の皆さまに、ここ東京でお目にかかれたことを嬉しく思います。前回お会いしたのは、2013年1月にロンドンで国際法曹協会の皆さまと日本財団がハンセン病を取り巻く差別撤廃を訴えるための第8回グローバル・アピールを発信したときでした。

国際法曹協会と日本財団は、ハンセン病に関わる差別的な法律の存在に注意を喚起し、世界中のハンセン病患者・回復者の人権を回復するために協力し合い、この問題を訴えました。また、私たちは世界人権宣言が謳う基本的人権の尊重に基づき、ハンセン病患者・回復者の人権を尊重することを各国政府に訴えることを誓いました。世界の法律の専門家の声として、国際法曹協会が世界のハンセン病との闘いに賛同してくださったことは非常に意義深いことであります。

ハンセン病は人類の歴史上、最も誤解され、スティグマ(社会的烙印)や差別を伴う病気の一つです。治療をしないままでいると、皮膚が変色し、顔や手足が変形するなど目に見える障害が現れます。原因不明の病として、多くの人々がハンセン病は業病あるいは神の罰によるものであると信じてきました。

ハンセン病が感染病であるということが分かると、世界各国で、さらなる感染を防ぐために隔離政策が強化されました。ハンセン病患者は家族から引き離され、隔離された島や村に追いやられ、二度と故郷の地を踏むことができませんでした。

1980年代にMDTという治療法が確立すると、ハンセン病との闘いは大きく前進しました。早期発見・早期治療が的確に行われれば、目に見える障害を防ぐことができるようになりました。さらに、1991年にWHOはハンセン病患者を人口1万人に1人未満という公衆衛生上の制圧目標を掲げました。この明確な目標に向かって、各国政府、NGO、他のステークホルダーが一致団結し、ハンセン病蔓延国の数は激減し、今では、ハンセン病未制圧国はブラジルのみになりました。

私はこのような医療面における劇的な進展により、ハンセン病に対する人々の見方が変わり、不要な隔離はなくなり、ハンセン病患者・回復者は社会の中で正当な立場を取り戻せるのではないかと期待していました。しかしながら、私が様々な国で目の当たりにした現実はまったく違う状況でした。療養所の目に見える壁はなくなりましたが、差別という目に見えない壁が彼らの前に立ちはだかり続けていたのです。ハンセン病患者・回復者は、私たちにとっては当たり前のことである就学、就職、公共交通機関の利用、ホテルやレストランなどの施設の利用などを制限されているのです。

このような差別を助長しているのは、様々な差別的な法律や条例が残っているからです。古い法律や条例の中に差別的なものが残っていることで、ハンセン病患者・回復者とその家族に対する偏見や差別が助長されています。

医療面においていかに進展があったとしても、差別やスティグマの問題が解決に向かわないことに私は失望しました。そこで2003年、ハンセン病患者・回復者が直面している問題について、人権問題として国際社会に訴えることにしたのです。

多くの関係者からご支援をいただき、国連機関にこの問題を繰り返し訴えました。その結果、2010年12月21日、国連総会で、ハンセン病患者・回復者とその家族に対する差別撤廃の決議が採択されました。

国際社会がハンセン病患者・回復者を取り巻く問題を人権侵害であると認めたことは歴史的な第一歩でした。同時に、ハンセン病患者・回復者にとっても、自分たちの活動をより強化していく上での礎となりました。

このような前進にも関わらず、古い差別法による不正な事象が完全になくなったわけではありません。ほんの数年前、インドで2人の男性が市民選挙に出馬して当選しましたが、ハンセン病に罹っているという理由でその当選が無効になりました。ハンセン病患者は市民選挙に出馬できず、公職に就けないという古い行政の条例に基づいたものでした。この出来事を通じて、たとえ正義に反することであったとしても、法律は法律なのだということを改めて思い知らされ、私にとっても辛い経験となりました。

しかし、希望が絶たれてしまったと思われていた後も、驚くべきことにこの2人の候補者はあきらめなかったのです。この2人の男性とハンセン病患者・回復者のコミュニティの人々は、様々な団体などの協力を得て、ハンセン病患者・回復者の社会参加を訴えました。政府の委員会は彼らの訴えに応え、ハンセン病患者・回復者が置かれている状況について理解を深めるために、ハンセン病のコロニーや病院に足を運び、彼らの話に耳を傾けました。その後、この委員会は差別的な条例を直ちに修正するように勧告しました。

そして、ついに2012年12月、このハンセン病患者・回復者に対する差別的な条例が廃止されました。このことは、ハンセン病患者・回復者が困難な課題に直面した際に、彼ら自身が問題を克服できるという可能性を社会に示す指標となりました。

私はこの受賞の喜びを、差別やスティグマを撤廃するために闘い、社会における自分たちの正当な立場について声をあげてきた勇気あるハンセン病患者・回復者の皆さま、そして、ハンセン病の治療や啓発活動に携わり、たゆまぬ努力を続けてくださっている皆さまとともに分かち合いたいと思います。

世界のハンセン病と闘うメンバーの一員として、私は今申し上げた多くの関係者の方々とともにこの受賞を喜び、そして、世界からハンセン病とそれに伴うスティグマや差別の苦しみを取り除く決意を新たにしたいと思います。

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コメント
おめでとうございます。
凄く大きな受章で格好いいです!
Posted by: 田中千代美  at 2014年11月11日(Tue) 10:31