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産経新聞【正論】高齢化見据えて聴覚障害対策を [2013年12月03日(Tue)]

高齢化見据えて聴覚障害対策を


産経新聞【正論】
2013年11月22日


 鳥取県でこの10月、全国初の手話言語条例が成立した。北海道石狩市でも条例制定が検討されており、同様の動きは全国的にも広がる気配だ。条例制定に向け共同研究に取り組んできた立場から、国が早期に手話言語法を制定するよう期待する。

 耳の不自由な人にとって日常生活の中での情報入手や意思疎通は健聴者が考えるより、はるかに難しい。東日本大震災では多くの聴覚障害者が、テレビの音や防災無線が聞こえないまま逃げ遅れ、死亡率が全体平均の2倍に上ったと報告されている。

≪26カ国が電話リレーサービス≫
 代表的な公共インフラである電話も「耳が聞こえないから不要」「ファクスやメールなど代替手段での対応が可能」といった誤解が先行し、聴覚障害者は110番や119番の緊急電話さえ使えない現実がある。

 外見では分からないせいか、障害者対策全体に比べ聴覚障害者支援は手薄い感じが否めない。取りあえずの対策として、聴覚障害者が手話や文字を通訳するオペレーターの支援を受けながら相手先とやり取りする電話リレーサービスを公的に整備するよう提案する。

リレーサービスの様子.jpg
通訳の守秘義務を考慮し、日本財団のデモンストレーション用ブースにて撮影


 既に米国や欧州連合(EU)加盟国など26カ国が導入しており、わが国でも、緊急電話や公衆電話を維持するため電話利用者全員に数円の負担を求めているユニバーサルサービス制度を活用すれば、実現は十分可能。政府には早急な対応を求めたい。

 障害者白書によると、国内の聴覚障害者は約36万人。長い間、教育現場で読唇と発声練習を中心とした口話法が推奨されてきたこともあって、現在、手話を使う聴覚障害者は6万人にとどまるが、手話を言語と認める流れは急速に広がりつつある。加えて高齢化に伴い中途失聴者や難聴者も増加傾向にあり、公的な電話リレーサービスは、間違いなく高齢化社会に不可欠な基幹インフラとなる。

≪通訳料を全電話利用者で負担≫
 2006年に採択された国連障害者権利条約は、障害者が情報通信サービスを利用する機会を確保するための措置を求め、改正障害者基本法も、障害者が他人との意思疎通を円滑に図るための利便の増進をうたっている。

 東日本大震災の後、日本財団で実験的に遠隔情報・コミュニケーション支援センターを立ち上げ、岩手、宮城、福島3県を中心に電話リレーサービスに取り組んだ結果、今年9月までの2年間に302人が登録、利用回数も5700件に上った。

 1人平均20回近い利用で、子供の病気やけがに伴う学校や病院への緊急連絡、カード紛失時の信販会社への緊急問い合わせなど聴覚障害者が電話を必要とする事態は日常的に発生し、電話のニーズは極めて高いことを裏付けている。

 3社ほどの民間業者がこのサービスに取り組んでおり、手話通訳を使ったサービスで見ると、利用者がインターネットやテレビ電話で送ってくる情報を音声に直して病院や学校などに伝え、返事を再び手話に翻訳して利用者に送り返すのに、1回当たり300円超の通訳料が発生する。
 このため実施国の多くは、ユニバーサルサービス制度によって得られた収入で通訳料を賄い利用者の負担を軽減している。実施国のうち14カ国は365日間24時間対応している。聴覚障害者が通訳料を負担する国はない。

 わが国のユニバーサルサービス制度は現在、固定、携帯を問わず1番号当たり月3円を徴収、緊急電話や公衆電話の維持に活用されている。スタート時の06年は7円、その後、8円の時期もあったが、公衆電話の減少などで今はピーク時の半分以下になっている。
 電気通信事業法は制度の趣旨を「あまねく日本全国で提供が確保されるべき」と規定する。「あまねく」は地域を意味し、障害者など特定の集団に適用するのは難しい、というのが役所の見解だ。

≪来るべき社会への備えの一歩≫
 しかし条文の一部、あるいは解釈を変えれば解決できる問題ではないか。ちなみにユニバーサルサービス制度で集まる金は現在約70億円。電気通信事業者協会に集められた後、NTT東とNTT西で運用されている。仮に1円上げれば約20億円の増収となり、公的なリレーサービスを全国的に整備することも可能だ。

 近年、超低床電車やノンステップバス、JRや私鉄駅へのエレベーター、スロープの設置など障害者、高齢者向けのバリアフリー整備が進んでいる。9月にまとまった新障害者基本計画の審議では、内閣府の障害者政策委員会が電話リレーサービスを検討項目の一つに取り上げ、前向きに議論された経緯もある。

 情報・通信へのアクセスなしに日常生活を営むことは誰もできない。難聴者の数について各種の推計があるが、1千万人前後とする見方が最も多く、今後も難聴者や失聴者は増える。来るべき社会への備えの第一歩として、電話リレーサービスが早急に整備されるよう望む。
(ささかわ ようへい)

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