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情報通信技術(ICT)国連専門家会議 [2012年04月30日(Mon)]
12.04.19 国連専門家会議 挨拶.jpg
手話通訳付きで挨拶


「情報通信技術(ICT)国連専門家会議」


日本財団では長く視覚・聴覚障害者の教育や人材養成プログラムを世界各国で実施してきた。情報通信技術(ICT)の発達はめざましく、彼らをサポートする有力な技術になりつつあるが、問題も多々存在する。

今回の少人数による会議で深堀した議論がなされ、課題解決への道筋が明かになること望んいる。

以下、スピーチです。

2012年4月19日
於:日本財団


本日は国連専門家会議のために13カ国から専門家の皆様にお集まりいただきました。皆様の来日を心より歓迎申し上げます。また、都合で会議に出席できないものの、世界各国からインターネットで明日の特別セッションに参加されると聞いています。こうして多くの関係者の協力により、本会議を開催できることを大変嬉しく思います。

私たち日本財団は、すべての人が平等に自らの人生を選択できる機会と権利を持ち、主体的に社会参画することができるインクルーシブな社会を目指しています。世界には貧困や病気、差別など様々な理由によって、選択の機会を奪われ、社会に参画できない人たちがいます。日本財団は、こうした方々の自立を後押しするための支援を行っており、障害者に対するエンパワメント事業もそのひとつです。障害があるからといって諦めるのではなく、彼らの能力をしっかりと発揮できるようにするための取り組みを国内外で行っています。
なかでも視覚・聴覚障害者に対してはグローバルな活動を展開しており、ロチェスターNTID、ギャローデット大学、オーバーブルック盲学校などと連携し、アジア諸国において高等教育支援や就労支援事業を行っています。これらの事業に共通する重要なテーマは情報アクセスとコミュニケーションの改善です。その鍵を握るのが、昨今、急激な発展をみせているICT(情報通信技術)です。このICTを最大限に活用することで、視覚・聴覚障害者が教育や就労の場面で負うハンデを飛躍的に軽減することができるようになりました。

ここでICTとの出会いによって大きく人生を変えた、ブン・マオさんという全盲のカンボジア人の方について紹介したいと思います。彼は思いもよらぬ事故で突然視力を失いました。当時通っていた大学は退学を余儀なくされ、生涯をともにすることを約束した恋人からは婚約を破棄されました。辛いことが重なり生きる希望を失っていた彼でしたが、当財団が支援したコンピュータートレーニングプログラムに参加し、ICTの可能性に触れたことで、暗闇から一筋の光を見出したのです。

その後の彼のエネルギーは凄まじく、2000年にはカンボジアで初となる盲人協会を立ち上げ、現在も盲人のための就労支援やコンピューター研修などを実施するリーダーとして活躍しています。彼は日々強く、逞しくなっており、会うたびに多くのエネルギーと勇気を私に与えてくれます。皆さんが開発するICTによってブン・マオさんのような方が増え、一人でも多くの聴覚・視覚障害者がチャンスを得られるようになることを願っています。

 このように、ICTはブン・マオさんをはじめとする多くの障害者にとって人生を豊かにする可能性を秘めており、インクルーシブな社会の実現に今後もつながっていくものと信じています。しかし、昨年3月11日に起こった東日本大震災は、ICTの活用に関して様々な課題を残しました。

地震発生直後や災害復旧・復興のそれぞれの場面で、視覚・聴覚障害者はあらゆる困難に直面しました。例えば地震発生直後、地域の役場の担当者は津波の発生や緊急避難を防災無線で必死に呼びかけました。しかし、その放送が聞こえない聴覚障害者は、一体何が起こっているのかわからないまま家族や隣人に手を引かれ、高台に逃げたのです。おそらく、防災無線が聞こえなかったために逃げ遅れ、津波に飲み込まれてしまった人もいたに違いありません。
また、辿り着いた避難所での食料や日用品の支給に関する情報は、津波によって通信が遮断されていたため、逐次、紙に書いて掲示されていましたが、視覚障害者はその情報を得ることが出来ませんでした。
さらに、復旧・復興の過程では、罹災証明や仮設住宅の申し込みなど生活に必要な各種手続きをする場面において、公的機関の担当者とのコミュニケーションに苦心しました。

このように聴覚や視覚に障害のある人たちは、心身ともに衰弱している中で、一層の困難を余儀なくされたのです。彼らにとっての障壁は他にも数多くありましたが、なかにはICTを活用することで改善できる問題もありました。その一つとして当財団が聴覚障害者に対して行った支援が、スマートフォンを活用した文字や手話による通訳サービスです。
私たちはこれにより、多くの聴覚障害者のコミュニケーションをサポートできると期待していました。ところが、この支援を行うなかで、ICTが十分に機能しきれていない現実を目の当たりにしたのです。
被災した地域には、そもそもスマートフォンに触れたことがないという人が多数いました。そして障害者のみならず手話通訳者にいたっても、普段からこうした機器に馴染みがなく、新しい技術を受け入れることに抵抗を感じていたのです。そのため、残念ながら聴覚障害者の情報アクセス改善への効果は限定的なものになってしまったのです。

本来であれば、ICT は非常時にも有効な情報コミュニケーションツールとなりえるはずです。しかし、今回の震災で改めて浮き彫りになったように、普段から馴染みの薄い機器を突然使えと言われても、それを使いこなすことは難しいでしょう。つまり、日常からICTに親しんでいなければ、非常時にこれを有効活用することはできないのです。

ここにいる専門家の皆さまは重々承知のことと思いますが、障害を持った方々にICTを広く活用してもらうためには、利用者の立場に立ち、ユーザーフレンドリーな開発を追求することが重要です。同時に、政府や地方自治体、当財団のようなNGOは、視覚・聴覚障害者や通訳者などの支援者が、日常からICTを抵抗なく使えるようにサポートを行っていくとともに、ICTの有用性を広く伝えていくことが必要です。例えば、ICTに関する講習会の実施や普及活動が挙げられます。こうした取り組みが利用者の能力開発につながれば、視覚・聴覚障害者はただ支援を待つだけではなく、自らが必要な情報にアクセスできるようになっていくでしょう。

この会議において、ICTの規範・規格や技術開発、その実践事例について活発な意見交換がなされ、インクルーシブな社会の実現への第一歩となることを心より願っています。

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