「マグレブ、中近東にドミノ現象は起こるか」 [2011年01月28日(Fri)]
昨年12月に訪れたときは平和だったのだが・・・(カイロ市内) 「マグレブ、中近東にドミノ現象は起こるか」 マグレブ(モロッコ、アルジェリア、リビア、チュニジア)の中で最も社会的に安定していると思われていたチュニジアの政権があっという間に崩壊。23年間独裁政権を強いたベンアリ大統領はサウジアラビアに亡命した。 チュニジアでは、昨年12月、失業中の若者が道端で野菜を売ることを警察に禁じられ抗議の焼身自殺をしたのに端を発し、大規模なデモに発展した。ここでは携帯電話が大きな役割を果たし、アラブ世界では珍しい民衆のデモからの政権崩壊となった。 その後、チュニジアに刺激されたエジプトでは、長年のムバラク独裁政権に対する民衆の鬱積した不満が爆発し、カイロは勿論のこと、アレキサンドリア、スエズでも大規模なデモが発生。一挙に約30年に及ぶムバラク独裁政権の退陣を求める運動が熱を帯びてきた。しかし、100万人といわれる治安部隊は強力でデモ隊を鎮圧する力を持っているが、ITを駆使した新しい民衆の熱気がこれを超えられるか、大いに注目に値するところである。 これに加え、アレキサンドリアを中心にイスラム教とキリスト教(コプト教)との争いも深刻化している。レバノン、イエ−メンも情勢は安定しておらず、デモはヨルダンにまで波及。はたしてアラブ・イスラム諸国にドミノ現象は起きるのだろうか。 「ドミノ」とは懐かしい言葉である。 かつて、東南アジアの一国が共産主義化すれば、「ドミノ」倒しのように近隣諸国が次々と共産主義化してしまうといわれたのは、冷戦時代のアメリカ外交政策上の理論であった。 逆にハンガリーやポーランドで起こった「民主化」がチェコや東ドイツに波及し、東ヨーロッパはすべての共産主義国家が一掃され、民主化の「ドミノ」現象となった。 チェコスロバキアで起こった民主化革命は「ビロード革命」、ウクライナは「オレンジ革命」、チュニジアは国を代表する花から「ジャスミン革命」と呼ばれている。 イスラエル、パレスチナ問題が膠着する中、チュニジアに発生した民主化運動はサウジアラビアまで到達するのだろうか。 新年早々、中東の火薬庫は、予想外のチュニジアの爆発に刺激され燃え上がろうとしている。万一、エジプトが秋の大統領選挙を前にムバラク政権が崩壊すると、その影響はこの地域に計り知れない混乱を呼び起こすことになるだろう。 (次回1月31日は、「新聞・朝刊の普及率」です) |