「チャド湖とアラル海」 [2010年09月03日(Fri)]
チャドのアチェベ(イメージ写真) 「アフリカ・チャド訪問」その3 ―チャド湖とアラル海― 世界の最貧国の一つである内陸国・チャドの西部には、水ガメの役割を果たしてきたチャド湖があり、現在、消滅の危機に瀕している。 チャド湖はチャド、ニジェール、ナイジェリア、カメルーンの4ヶ国にまたがるアフリカ大陸中央部の湖で、周辺の国々に居住する2000万人以上の人々に水を供給してきただけに事態は深刻である。1960年代に比べ1990年代までに面積の45%を失い、なお減少を続け、21世紀には消滅するとも予想されている。 チャドの知識人が言うには、ナイジェリアがこの地域に移住を奨励し、周辺人口の増大が原因の一つで、関連諸国の経済事情・政情が不安定なことから有効な対策がとられていないのが実情と、顔を曇らせた。 かつて、中央アジアのカザフスタンに出張の折、アラル海の惨状を視察したことがある。 アラル海はカザフスタンとウズベキスタンにまたがる塩湖で、その大きさは確か九州ほどの面積であった。その源はパミール高原と天山山脈の融雪水がシルダリヤ川とアムダリヤ川を通じて流れ込み、豊富な水量で漁業が盛ん、年間5〜6万トンの漁獲量の時代もあった。現在は水量大激減と塩分濃度が高く、魚類をはじめ生物は絶滅した。 原因は1940年代よりスターリンが「自然改造計画」の一環として実施した綿花栽培のための灌漑や運河の建設により、シルダリヤ川、アムダリヤ川の流量激減にともなってアラル海の水量も激減した。 2003年時点では、1960年に比べアラル海の面積はたったの25%である。激しい時期は一晩で数十メートルもの湖岸線が遠のいていったため、退避しそこなった船の群れが打ち捨てられ、「船の墓場」といわれる光景は、私の脳裏に人間の環境破壊の凄まじさとして強烈な印象を焼き付けた。水量激減に伴う塩害は数百キロ離れた田畑にうっすらと白く散見された景色で、農作物への甚大な被害も推察できた。 2050年には世界の人口は100億人突破と予測されている。物事に原因のない結果はない。根本原因は主に発展途上国の人口増加である。計画産児もしくは何らかの人口抑制なくして根本的な地球環境の保全、温暖化対策はいうに及ばず、食料危機、貧困対策など、常に国際社会でテーマになる問題解決への道筋はないはずだ。 ローマクラブは1972年、「現在のままで人口増加や環境破壊が続けば、資源の枯渇や環境悪化によって100年以内に人類の成長は限界に達する」と警鐘を鳴らし、世界に衝撃を与えたことを我々は忘れてしまったのだろうか。現在、これを問題視する国際機関も政治指導者も存在しないことは不思議なことである。 (次回9月6日は、「拝金国家・中国?その1」です) |