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新幹線輸出はオール日本態勢で [2010年07月31日(Sat)]



【正論】日本財団会長・笹川陽平 
新幹線輸出はオール日本態勢で

2010年7月22日
産経新聞
 

環境問題の高まりを受け拡大する世界の高速鉄道商戦で「鉄道王国・日本」の新幹線が苦戦している。日本の技術は確かに素晴らしい。しかし高速鉄道のような国家プロジェクトの売り込みは価格や品質より時に政治力が優先する。とりわけ途上国への売り込みは「国対国」の交渉がポイント。官が支援し政が先頭に立つオール日本態勢の確立こそ急務である。

≪約束を守る日本文化≫
昨年春、ハンセン病制圧活動で訪れたインドの会合で日本のODA(政府開発援助)支援を受け2006年に開業した地下鉄デリー・メトロが話題となり、居合わせた政府高官は「インドでは例を見ない正確な運行もさることながら、愚直なほどまじめな日本の技術者の姿から約束通り納期に間に合わせることの重要性を学んだ」「労働を美徳とし、約束を守る日本文化こそ最大のプレゼントだった」と語った。

大型のインフラ輸出では、事業を通じ輸出国の顔が相手国に見える。私はそんな思いでかつて「日中鉄道友好推進協議会」を立ち上げ、中国の大地に新幹線を走らせることを夢見た。目に見えないODAより日本の新幹線をそのまま走らせることで日本理解を促進したい、との思いだった。

竹下登元首相、平岩外四元経団連会長に出馬を願い大型使節団を結成して中国を訪問、江沢民国家主席(当時)が訪日した際は小渕恵三首相(同)から「新幹線を日中友好のシンボルとしたい」とする親書を手渡してもらった。しかし大勢が新幹線導入に傾いた最終段階で多くの日本企業が中国に押し掛け、ネット上の反日感情が高まり“日の丸新幹線”は不発に終わった。

急速に普及する中国の高速鉄道は基本的に新幹線技術を転用しているが、中国国民は「独自技術」とする政府の説明を信じ、今や中国は高速鉄道輸出国、日本のライバルとなりつつある。

≪単身無装備で土俵に上がる≫
先行する仏独両国は計画当初から相手国に食い込み、資金調達からインフラ整備、車両、運行、営業戦略まで幅広く自国企業に有利な鉄道企画を働き掛けるコンサルタント会社を持つ。仏は2500人、独は3600人と規模も巨大、国を挙げたトップセールスも盛んだ。入札段階から参加する日本の商法は、競争相手が作った土俵に単身無装備で上がるに等しく、これでは苦戦する。

そんな日本にも昨年夏、国土交通省に「鉄道国際戦略室」が設けられ、合同でコンサルタント会社を立ち上げ国際商戦に臨もうとする動きが民間に広がってきた。JR7社にメーカー、商社、金融機関などが参加して法人を立ち上げ、国土交通、外務、経済産業の3省が支援、官邸のトップセールスにも道を開く構想だ。

高速鉄道は現在、17カ国で建設プロジェクトが検討され10年後の市場規模は22兆円と試算される。オバマ政権がグリーン・ニューディール政策で13地域計1万3700キロの高速鉄道建設を打ち出した米国も、こと高速鉄道に関しては後進国であり、総合的なコンサルタント会社の助けを必要とする。輸出国にとっても当該国の交通システムや市場、ニーズに関する情報は欠かせない。

新幹線が専用線を走り独自に超電導リニアの開発を進めるJR東海と、専用線と在来線が混在するJR東日本では売り込み戦略にも温度差がある。しかしコンサルタント会社を立ち上げ、事前の棲み分け・調整ができれば、足の引っ張り合い、戦力の分散は防げ、行政や官邸も前向きに対応できる。

今年5月には原発建設などに限られていた国際協力銀行(JBIC)の先進国向け事業融資を鉄道事業にも使えるよう政令が改正された。途上国向けにはODAの円借款を使う手もあり、政治の主導性も発揮しやすくなる。

≪首相もセールスの先頭に≫
中国への新幹線売り込みの渦中、唐家璇外相(当時)は「朱鎔基首相が訪欧した際、シラク仏大統領は“高速鉄道と原発はフランスで”と要請した」と打ち明け、トップセールスの重要性を指摘した。昨年12月、中東・アラブ首長国連邦(UAE)への原発売り込みで日米連合、仏アルバ一騎打ちの予想を翻して韓国電力公社が落札した背景には李明博大統領の熱心なセールスがあった。日本の首相にもぜひ、国際セールスの先頭に立ってほしいと願う。

新幹線は安全性、正確な運行を含め「日本文化の粋」であり、同様に国際市場が拡大する原発とともに技術立国日本が誇る二枚看板である。輸出が拡大すれば景気浮揚だけでなく日本理解の促進にもつながる。

米国・シカゴで6月、関係3省と運輸政策研究機構など4団体が主催する高速鉄道関連セミナーが開催され、前原誠司国交相は終了後、コンサルタント会社の立ち上げについて「2、3年先では遅い。すぐやりましょう」と意欲を語った。機は十分、熟している。一日も早い日本型ビジネスモデルの確立を期待して止まない。(ささかわ ようへい)
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