「WANAフォーラム出席」 [2010年06月23日(Wed)]
ハッサン王子とは旧交を温めた 「WANAフォーラム出席」 ―ヨルダン― 英明で博学であられるヨルダンのハッサン王子と、アンマンで「第2回WANA国際フォーラム」を開催した。 WANAは「West Asia North Africa」の略で、トルコ、イラン、イラクからサウジアラビアを含む湾岸諸国、マグレムといわれるモロッコ、リビア、チュニジア、エジプトに至るモスレム諸国のことである。 今回はインドネシア、パキスタン、バングラディッシュも加わり、23ヶ国のイスラム国と、日本を含む西側より11ヶ国が参加。138名、34ヶ国の代表と地元ヨルダンからの参加者により、環境、教育、貧困、水、エネルギー等、WANAの抱える共通課題について議論が行われた。 この地域には国家のしがらみを離れ、個人レベルで対話するプラットホームがなかったため、共通の課題、問題点を率直に話し合う場を提供することが目的である。どの国にどのような優れた人物がいるのか全く不明のところ、ハッサン王子の人脈を活用してネットワークを形成。将来はWANA諸国に問題提起や政策提言も行いたいと考えている。 WANA諸国では、歴史的にEUを中心にしたヨーロッパとの関係が深かったが、湾岸諸国の石油の需要はインド、中国、日本が中心。また、マレーシア、インドネシアのイスラム国の発展を見るとき、東南アジアに興味を持つ有識者も増加している。 そのためにアセアン事務長のピッツアン・スリン元タイ国外務大臣に、トンボ帰りの強行日程で講演を、無理を承知で依頼した。 名演説家で知られるスリン事務局長の講演は、各国の多くの出席者に東南アジアへの興味と理解を一段と深めさせられたと、内心、ニッコリしているところである。 私には、ルックイーストを合言葉に中近東の諸国を、ヨーロッパ諸国よりも日本を中心にした東南アジアに取り込もうとの遠謀深慮がある。5年、10年後には、日本を中心にしたアジア諸国に膨大な資金を投資させたいと、遠大な計画を考えているところである。 以下は、開会式の挨拶要旨です。 ********************** 第2回WANAフォーラム (原文・英語) 2010年5月17日 於:ヨルダン・アンマン ハッサン・ビン・タラル殿下、ご出席の皆様、今年も再びWANAフォーラムに参加し、このような素晴らしい皆様を前に挨拶をする機会を与えていただいたことを大変光栄に存じます。 まず、本日のフォーラム開催のためにご尽力くださいましたハッサン殿下に対し、心からの称賛と感謝の意を表します。また、WANAフォーラムのビジョンを策定するために、その英知と経験を惜しみなく分かち合ってくださった国際諮問委員会のメンバーの皆様に感謝申し上げます。 さらに、本日ご出席いただいたすべての参加者の皆さまを心より歓迎いたします。このようにWANA地域に住む人々のより良い未来を築くという共通の目的のもとで、地域内外から人々が集うことは本当に心強いことです。 ハッサン殿下との長年にわたる交流の中で、私は幾度となく、その知性に感銘を受け、そのビジョンに触発され、その揺らぐことのない志に希望を与えられてきました。 殿下と私は、生まれ育った環境もこれまで歩んできた人生も大きく異なります。しかし、私は殿下と知り合って間もない頃から、私たちの間には何か大きな共通点があると感じていました。私たちは同じ価値観を共有し、同じ問題意識を持ち、同じ希望や使命感を抱いていたのです。ですから、このWANAフォーラムをお手伝いさせていただくことは、私にとって、ごく自然なことであります。 世界のあらゆる地域同様、WANA地域は数多くの問題に直面しています。教育、医療、経済、環境、安全保障の問題をはじめ、無視できない多くの問題が存在しています。そして、相互依存社会の中で複雑に絡み合った多くの問題は、決して、一国家や一つの組織、一個人だけでは効果的に対処することはできません。 これらの問題に対処するためには、長期的かつ統一的なビジョンを育む必要があります。そのためにはまず、忌憚なく、異なる意見を活発に交わす場が必要です。言うまでもなく、単純に人々が集まるだけでは十分ではありません。 参加者一人一人が、国家や地域、個人的な利益にとらわれることなく、WANA地域の未来のためという大きな共通の目標を見出すことが求められています。 必要なのは、WANA地域における統一的なビジョンです。このフォーラムを通じて、最も重要な問題は何かを認識し、効果的な解決策を導き出さなければなりません。 一見、容易なことのように聞こえるかもしれませんが、実際は、それほど単純ではありません。特に、参加者が特定の国家や集団、民族、組織を代表している場合はなおさらです。 私は、ハッサン殿下と同じく、人々が肩書きや所属にとらわれず、一個人として参加することが必要であると強く信じています。 また、先ほど述べたように、教育、医療、経済、環境などの問題に人道的な視点をもって取り組むことが重要だと考えます。私たちは経済格差、環境の悪化、質の高い教育や医療へのアクセス不足といった問題に真摯に取り組まなくてはなりません。ただし、その時に忘れてはいけない視点があります。 経済格差について話し合う時は、家族を養うことの出来ない父親や母親たちがいることを忘れてはならないのです。教育や医療について話し合う時は、勉強をしたくても学校に通えない、病気になっても必要な医療を受けられない子供たちがいることを忘れてはならないのです。環境問題について話し合う時は、安全な飲み水や快適な生活を送るためのエネルギーを失ってしまうかもしれない未来の子供たちがいることを忘れてはならないのです。 私は、人道的な視点、つまり、日常に潜む問題の本質を見逃さないことこそ、WANAフォーラムのユニークさであると考えています。私たちは、人々が日々の生活の中で直面するあらゆる問題に取り組むためにここに集まりました。このフォーラムの参加者である皆様方が、様々なワーキング・グループを通じて、これらの問題に一致団結して取り組んでいる姿に、私は非常に勇気づけられました。 私はこのフォーラムが、WANA地域に住む人々によって、自らの未来を第一に見据えた政策の策定及び実施に多大な影響を与えるものになるであろうと確信しています。 WANAフォーラムの一員であることを心から誇りに思うとともに、同じ志をもった人々の集いであるこのフォーラムが、今後、さらに発展していくことを祈念いたします。 (次回6月25日は、「トルコ・アタチュルク大統領銅像始末記」です) |