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「聾者(ろう者)と手話」その1 [2010年01月25日(Mon)]


各国言語に対応した教材


「聾者(ろう者)と手話」その1
〜辞書と教材〜


日本財団は、社会の片隅で目が届きにくいが重要な問題に関して手を差し伸べ、問題提起を行ってきた。フィリピン日系二世の国籍取得問題、犯罪被害者の会への支援と全国組織化、自死遺族の全国組織の設置は、法律の整備の一助になったと、若干の自負もある。

聾者の問題もしかりで、日本の教育環境は欧米に比べはるかに劣り、東南アジアにおいては無きに等しい。日本財団は聾者に対する教育問題に積極的に取り組んで久しい。

アメリカやヨーロッパの聾者の教育環境は進んでいる。アメリカでは大学教育の環境もよく整備されており、聾学生に同行して手話通訳やノ−トをとってくれる同伴者が待機している大学も多い。クリントン大統領の就任式に招待された折も、至る所で手話通訳が目についた。

日本では、ようやく国立筑波技術大学に大学院修士課程が設置された。また、明晴学園に、日本で唯一の手話を第一言語にする中学校が、小学校に続き設置されることになっただけである。

話は前後してしまうが、取り組み順に話を進めさせていただく。

世界的に有名な聾者の大学・ワシントンD.C.にある人文社会科学系のギャローデット大学では500万米ドルの資金のもと156名の卒業生、ニューヨーク州ロチェスター工科大学では200万米ドル資金ものと29名の卒業生が笹川奨学金を受け、既に世界で活躍している。

我々の願いは、それぞれの出身国に戻り、聾教育の指導者や社会的に評価される専門知識によって、聾者の一般社会での理解促進の礎になって欲しいということである。

次に手がけたのは手話辞書と手話教材の開発で、香港中文大学において2002年から始まり今年で7年目。専門家の養成を含め300万米ドルの費用をかけた事業はまだ進行途中であるが、大半は聾者に手話言語学や辞書編集技術を学んでもらうための人材育成費である。

進行途中ではあるが、現在のところ、下記の成果を得た。

国別    手話辞書    手話教材 
香港    2800語収集  2800語 
ベトナム  1600語収集  530語 
カンボジア 650語収集  650語 
フィリピン 1046語収集   

その他にアジア・サインバンクとして、アジア太平洋各国の手話をインターネット辞書として開発中であり、インドネシア、スリランカについても手話辞書の作成に着手した。

手話辞書は、ホーチミン手話(ヴェトナムの主に南部地域)を例にとると、まず言葉を収集して絵に画き、ホーチミン手話⇔ベトナム語、ホーチミン手話⇔英語の辞書とする。

各国語の辞書には、将来のために英語への変換も加えているので、時間と経費がかかることになるが、これらが完成すれば、いまだ聾者にとって無理解の世界であった東南アジアにおいて、福音になることは間違いない。

「継続と忍耐」は我々のモットーである。

以上、知ったか振りをして「手話の辞書と教材」について述べたが、日本財団・横内陽子に質問したところ、下記の回答を得た。

「手話辞書と教材」作成のバックグラウンドはアジア太平洋地域の聾者の社会進出が進んでいないのは、聾教育が手話ではなく口話法(読唇術)を偏重しているのが理由の一因であるが、昨今、彼らの第一言語である手話を使った教育の重要性が認識され始めている。

しかし、手話を用いた教育をしようにも手話を使える教師や手話通訳が圧倒的に不足している。彼らを養成するには実用的で信頼できる手話辞書や教材が必要だが、ほとんどの地域では存在せず、存在していても聴者が作成しているので間違いが多く語彙数も少ない。

本事業の特徴は、手話を第一言語とする聾当事者が手話言語学の知識を得、これらの辞書や教材開発を行うことにある。彼らをアジアで唯一の手話言語学センターのある香港中文大学に集め、手話分析や辞書・教材開発に関する研修を実施している。

研修終了後は自国に帰り、手話を使った教育や手話通訳の養成に携わっていただく予定。聴者の言語学研究者・大学・聾協会とも協働体制を作り、活動しやすい環境作りも行っている。

Q1:誰が手話辞書や教材を使うのか?

学校の教師や手話通訳者が主な使用者。
教師・・・手話を使った一般教育を実施するため。
手話通訳・・・社会進出した聾者と聴者との間でコミュニケーションを図るため。

Q2:手話辞書や教材を作成し、手話言語学の人材を育成する意味。

アジア太平洋地域には、実用的かつ信頼のおける手話辞書や教材がこれまで存在しなかったために、手話を使える教師や手話通訳を育成することができなかった。結果、聾教育が遅れる→聾者の社会進出が遅れる→社会側の聾者への理解が深まらない・・・の悪循環に。

手話辞書や教材があれば、聾教育に携わる人材が育つ→聾当事者の教育レベルが向上する→聾者の社会進出が進む→同時に手話通訳者が必要となってくるが、手話辞書や教材があれば彼らも育つ→さらに社会進出が進む、の良い循環を生める。
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