読売新聞「論点」に掲載 [2008年05月13日(火)]
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※5月2日付け、読売新聞朝刊「論点」でに『マラッカ海峡の安全航行 海洋管理、日本の責務』が掲載されましたので、お時間がある時にでもご高覧いただければ幸いです。
![]() 【論点】マラッカ海峡の安全航行 海洋管理、日本の責務 笹川陽平(寄稿) 2008/05/02 読売新聞 世界で最も多くの船舶が往来するマラッカ海峡の安全航行の確保に向け、海峡の利用者が自主的に資金を拠出する「マラッカ・シンガポール海峡航行援助施設基金」が、4月中旬に創設された。民間のイニシアチブで構築された海洋の新秩序であり、「海洋の利用はただ」という“伝統的な常識”を打破する試みでもある。 オランダの国際法学者グロティウスが17世紀初頭、「自由海論」を発表して以来、航海自由の原則が認められ、広大な海は野放図に利用されてきた。海は「無限」との考えである。しかし、世界経済は拡大し、2050年には地球人口が100億人に達する見通しとなった今、海は「有限」である。母なる海洋の環境保全なくして人類の将来もあり得ない。 にもかかわらず、海峡の安全航行については、現在も沿岸国に依存しているのが実情だ。しかし、沿岸国の多くは途上国であり、貧困や騒乱、政治不安などにより、沿岸管理が行き届かず、海上での事件や事故も後を絶たない。 現代社会は、経済のグローバル化によって物資輸送が急増し、船舶の大型・高速化も進んだ。化学薬品など危険物の輸送も増え、海難事故のリスクも拡大している。4月21日には、イエメン沖で日本の大型タンカーが不審船に銃撃されるなど海上テロの脅威は増し、大量破壊兵器が海上を移動している可能性もある。重武装化した海賊の出没も目立ち、世界の海は常に危機が潜んでいる。 これら新たな問題に対処するには、海洋の利用者が問題意識を共有し、海洋環境の保全、航行安全の確保など海洋管理を一緒に進めることが不可欠だ。特にマラッカ海峡は、岩礁が多く航路も狭い。 航行の難所であり、灯台など安全施設の設置も欠かせない。輸入する石油の86%が通過する日本の生命線であるだけでなく、中国や韓国の経済が膨張し、国際物流が大幅に拡大した近年は、アジア経済全体に多大な影響を及ぼす海域となっている。 国連海洋法条約43条は、海峡利用国および沿岸国が、航行の安全について協力するよう規定している。しかし、94年の条約発効から10年以上が経過した今日も、協力のための具体的な枠組み作りはできていない。 海峡利用国として、マラッカ海峡の航行安全に協力しているのは日本だけであり、69年以来、日本財団がその役割を担ってきた。世界の海運業界に対し、CSR(企業の社会的責任)の見地から、一貫して経済的協力を求めてきた。正直、“海はただ”という常識を覆すのは難しい気もしていた。ところが、国際タンカー協会など多くの国際的な海運団体から基金構想に賛同を得た。 日本は、昨年制定した海洋基本法で、国際社会における役割を積極的に果たすよう定めている。本来、政府間レベルで実現すべき基金の創設について、世界の主要船舶団体が、民間団体である日本財団の呼びかけに応え、自主的に参加を表明したところに画期的な意義がある。中国や韓国企業の積極的な参加も求めたい。 海運業界に「海を守る」責務があるのは言うまでもない。同時に政府にも、海洋外交の視点から積極的に参画するよう望みたい。それが海洋基本法という「仏」に、海洋国として国際社会に通じる「魂」を入れることになる。 ◇ささかわ・ようへい 日本財団会長、世界保健機関ハンセン病制圧特別大使。69歳。 |










