創造的サービスと菜園起業
[2011年07月27日(Wed)]
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食べ物を育てる力は、農地確保のキーである。
菜園起業に必要な農地の確保、
そのために、食べ物を育てる力がキーになります。 世の中には、お金の支払いや書類提出などの 「手続き」だけで手に入る合理主義のものと 相手が合意しないと成就しない対人主義のものが あります。 通常の商品やサービスは、合理主義で手に入りますが、 結婚や就職は対人主義でないと達成できません。 そして、農地確保も対人主義の世界なのです。 農地を使わせてもらうには、現所有者の了解が必要だからです。 農家は不動産屋さんではないので、 農地の売買・賃借をしなければならないいわれはありません。 「この人になら、農地を任せても大丈夫だろう」 農家がそういう風に思わない限り、農地を使わせてもらう ことはできません。 ですから、農地確保には、農家との信頼関係が必要なのです。 では、その信頼関係はどうやって生まれるか? その基本が「食べ物を育てる力」です。 「やり方は、少々都会的で、 今までの農業とは違うところがあるが、 とにかく、この人はきちんと農業をするみたいだ」 そう思ってもらうことが信頼関係の基礎になるのです。 ですから、食べ物を育てる力を身につけることが、 農地確保のキーとなるのです。
菜園起業では、食べ物を育てる力が新しい企画を生む
菜園起業の基本は、食べ物を育てる力です。
企画や経営の方針も、食べ物を育てる中から 湧いてくるからです。 僕は、野菜の販売や体験農園の開設などの 相談に乗ることが多いのですが、 自分自身が野菜を育ててきた体験が 大きな財産となっています。 現場を知らない「企画屋さん」が作ったプランが、 机上のものとなってしまうことは 多いのですが、 菜園起業では、通常の仕事以上に、 その確率が大きいのです。 「野菜は育つ」もので、 天候や季節にも大きく左右されます。 農業では、「やったことがない人には分からない」 と言う要素が大変に大きく、 アイデアだけで企画を細部まで詰めていくのが 難しいのです。 逆に、自分で野菜を育ててみると、 「ああ、こういうことが起きるんだ」 と気付くことが多く、 そこから「隙間」を埋めるような新しい 発想が生まれてきます。 企画だけをしている人が 農家をヒアリングしながら 考えるより、 自分でも食べ物を育てている菜園起業家が 農家と対話しながら、 一緒に企画を組み立てていく方が よい企画が生まれる、 それが菜園起業の世界です。
百万円サイドファーミングは難しくない
菜園起業で100万円程度を稼ぐのは、
あまり難しいことではありません。 週末の「サイドファーミング」でできます。 ビジネススタイルとしては、野菜の生産販売、 体験農園運営、菜園サークルなど、 いろいろありますが、 だいたい、1000平米程度、 慣れれば、週1日でも管理できるぐらいの 広さでやるのがポイントです。 いずれにしても、野菜の栽培方法を マスターしておくことが必要ですが、 逆に言えば、自分で野菜を育てることさえ できれば、 副業農業の幅はかなり広がると言えます。 特に当初段階は、堅く考えるよりも、 自分の趣味で菜園をやる、 そこにお客さんを迎え入れたり、 自分が育てた野菜を売ってみる ぐらいの感覚がいいでしょう。 自然の中で楽しく暮らす、 週一農業が、結果として副業にも なる、 そういう感じです。 サイドファーミングとは言え、 お客様からお金をいただくので いろいろ気をつけなければならない点 はありますが、 お小遣いが稼げる楽しい農業ごっこ、 八百屋さんごっこと考えていけば、 十分にやっていけるでしょう。
菜園起業は人生経営の複線化である
「東京で失敗したら、田舎に帰って百姓をすればいい」。
団塊の世代の人たちがそういうことを言えたのは、 農業をしていれば、食べ物が手に入る、 つまり、最低限生きていくことができるからです。 農家が強いのは、人生経営が複線化されているからです。 実は、農家は、次の3つの経営スタイルを同時に行っています。 (1)自給 ・・・ 食べ物を育てて、食べる 労働 ⇒ モノ(食べ物) (2)単純商品流通 ・・・ 育てた農産物を売る 労働 ⇒ モノ(農産物) ⇒ [販売] ⇒ お金 ⇒ モノ(衣食住) (3)賃労働 ・・・ 労働力を売って、お金を稼ぐ 労働力 ⇒ お金 ⇒ モノ(衣食住) 3つとも、フローシートの最終は、モノ(衣食住)です。 (1)と(2)では、自分の労働が直接モノ(食べもの)に 変換され、 それを自分で食べることも 人に売ることも自由です。 (3)では、いったん、労働力を売り、お金を手に入れて やっとモノ(衣食住)にたどりつくわけです。 農家は、この3つとも自由に組み合わせて人生経営できますが、 都会生活者は、(3)しかできません。 だから、失業したら、ホームレスやネットカフェ難民に転落してしまうのです。 自ら食べ物を育てる「菜園起業」をすると言うことは、 自分の人生経営の中に、農家的な強さを組み込むことなのです。
菜園起業は新しい経済を作る
リーマンショック前年の2007年、日本の輸出/GNP比は、
16%でした。 高度経済成長期は10%程度、 「集中豪雨型」輸出と言われた80年代前半でも 12%前後だったので、 16%と言うのは、異常に高いことが 分かります。 ただ、それでも、84%は非輸出型の要素なわけで、 元々、一般に言われているほど、 日本は外需経済ではないのです。 そして、今後は、一層、非輸出型の 産業を振興していく必要があります。 その代表が、観光業ですが、 田園景観を保全する菜園起業は、 観光立国に貢献します。 アカデミー賞を受賞した「おくりびと」には 耕作放棄地が映っていません。 美しい自然、それ自体が日本のソフトパワーであり、 外国人に「売れる」価値なのです。 菜園起業の普及は、この田園景観を守る担い手を 増やすことなのです。
菜園起業の普及は、社会不安解消につながる
菜園起業の普及は、社会不安の解消につながります。
菜園起業は、自分で食べ物を育てる事業だからです。 人間、食べ物があれば生きていけます。 1960年代、高度経済成長が始まる前、 日本人の半分は農家でした。 当時は近代的な産業はほとんどなく、 みんな、田舎の家にいて、農作業を手伝っていたわけです。 そうした人達が都会に出てきて、第二次・第三次産業で 働いたことが、高度経済成長の原動力になったわけですが、 当時、地方から出てきた人たち、 つまり、団塊の世代の人達がよく言っていたのは、 「東京で失敗したら、田舎に帰って百姓をすればいいさ」 と言うセリフでした。 当時は、農産物をブランド化するとか、 高付加価値化するなんて発想は 全然なかった時代です。 田舎に帰っても、ビジネスができるではありません。 でも、食べ物は手に入る、生きていくことはできる、 つまり、都会でお金が稼げなくても 農家に戻れば、食べていける それがあの時代の人達の強みだったわけです。 そして、今、社会不安が高まっているのは、 ああいう風に言える雰囲気が社会から 失われているからではないかと思います。 いざとなったら、菜園起業すればいい、 お金にならないかもしれないが、 食べ物は手に入る・・・ そう言える環境を社会に取り戻していくこと、 菜園起業の普及にはそういう意味もあるわけです。
企業の農業進出だけでは解決しない
よく日本農業の出口戦略として
語られるのが、次のふたつ。 企業の農業進出と付加価値化。 僕はどっちも大賛成です。 企業だろうと個人だろうと やりたい人が農業をする、 それから、収益性を高める、 これもビジネスとして当然のこと。 ただ、こうしたやり方だけで 「出口」が作れるかと言うと かなり怪しいんじゃないか、 そう思うのです。 実は、日本の農家は小規模零細が多く、 ビジネス的な農業をしていない、 これを何とかすべきだと言うのは、 1961年に農業基本法ができた時にも 言われていたのです。 農業基本法自体、 国際競争力のある農家を育てると言う 目的を持って作られたものです。 それから半世紀、 専業で頑張っている農家は一握り、 7割は週一農業レベル、 そして耕作放棄地は増えている・・・。 つまり、50年かけて進めてきた 「日本農業ビジネス化路線」は 行き詰まったいる、 そこで、「ビジネスのやり方」を変えてみようと 言うのが、企業農業や付加価値化路線の提案 じゃないかと思います。 これに対して、僕は、今までと違うビジネス方法を 導入するのは賛成だけど、 アマチュアやセミプロを育てることも 同時にやったらどうなんだろう? と考えて、菜園起業や半農ライフの提案をしているわけです。 プランタ菜園も含めた「農業裾野層」は、 健康マラソンやカラオケも含めたジョギング・音楽 愛好者とほぼ同数のレベルですが、 専業農家人口と「フルマラソンを2時間台で走れる人の数」 もほぼ同レベルなのです。 農業は他の分野と比較してみると、 「初心者・未経験者」と「一部のプロ」の 中間にいる「アマチュア・セミプロ層」 が極端に少ない世界なのです。 企業進出や付加価値路線、 つまり、「儲かる農業」を追求することで、 「プロ層」を今までより増やす、 同時に、アマチュア・セミプロ層を育成して、 現在の農家の7割を占める 「週1回、年売上10万円未満レベル」層 を補う存在にしていく、 これはけっこう現実的なオプションではないかと 思うのです。
唯一解でないビジネス農業
日本の農業について、議論していく時、
必ず出てくるのが、「ビジネスとしての農業」の 活性化、 僕はこれはこれで進めるべきだと思いますが、 唯一解じゃないと思っています。 日本の農家の7割ぐらいは、 レジャー型農業と変わらない規模、 この事実を直視してみれば、 ビジネス農業とともに、 菜園起業や半農ライフも オプションになりうることが分かります。 2005年の農林業センサスによると、 日本の総農家数は、284万人ですが、 そのうち、31%にあたる88万人は、 自給的農家と言って、 年間販売額10万円未満の農家です。 それから、 年間農作業日数が、 60日以下の農家が109万人、 全体の38%、 1年間は52週間ですので、 60日以下と言うのは、 週1農業と言うことですが、 こういう人達が、 自給的農家と合わせて、約7割です。 だいたい、レジャー農業で育てた野菜を フリマやバザーに持ち込んで売ると、 1日1万円ぐらい稼げます。 週末農園の産物を 月1回フリマやバザーで野菜を売るレベルと 変わらない程度が、日本の農家の7割で、 その人達が高齢化することによって、 だんだん田園景観の保全ができにくくなってきている、 こうした「副業農家」や「自給農家」のすべてを ビジネス農業で代替することは、 非現実的です。 ビジネスとして稼げる農業ができる人はそれをする、 また政策的にもそうできるような環境を整える、 同時に、レジャー型農業も普及すべきだ、 そう思うわけです。
全米の森を育てるレジャー林業
全米の森は、レジャー型林業によって育成されています。
過去50年間3割近く増えた森林蓄積のほとんどが、 レクリエーションなどの目的で使われる「非産業私有林」 によるものです。 だったら、日本の田園景観も、レジャー型農業で守れるんじゃないか、 そう思います。 アメリカ林業と環境問題(村嶌由直、日本評論社)と言う本によると、 1952年から1992年の50年間で、 全米の森林蓄積は、6,150億立方フィートから 7,856億立方フィートへ、27%増大しています。 この増大分のほとんどが、「非産業私有林」によるものです。 公有林や木材産業林の 森林蓄積は、ほとんど増えておらず、 1,697億立方フィート増えた森林蓄積量のうち、 1,573億立方フィートは、非産業私有林での増大です。 同じ本に載っている、森林所有の目的についての統計をみても、 木材生産を目的にしている人は、全体の2.7%、 レクレーションや景観と楽しむ、農場や家庭での利用などと 答える人が合わせて34.3%、 なんと3分の1以上です。 森林蓄積と言うのは、その森に存在する木の総量を示したもので、 樹木の生長の指標ですが、 全米の森は、レクレーション林業が育てていると言ってもよいでしょう。 だったら、日本でも、レジャー農業を普及すればいいんじゃないか、 ちなみに、非産業私有林は、Non Industry Private Forest (NIPF)と言いますが、 非産業農業も、同じNIPF、Non Industry Private Farming、 です。 |



