大川小学校裁判の仙台高裁判決が確定しました。学校現場に過大な負担を課す判決ではないことに理解を深める議論が必要ではないかと思われます。私の質問(2018年7月2日)を紹介します。[2019年10月11日(Fri)]
東日本大震災の津波で児童74人、教職員10人が犠牲になった石巻市立大川小の児童23人の遺族が、石巻市と宮城県に約23億円の損害賠償を求めた訴訟で、最高裁第1小法廷(山口厚裁判長)は11日までに市と県の上告を退ける決定をしました。防災体制の不備により児童を安全な高台に避難させることができなかった組織的過失を認め、計約14億3600万円の支払いを命じた仙台高裁の判決が確定しました。津波の被害をめぐり、震災前の防災体制の不備による賠償を命じた判決が最高裁で確定するのは初めてです。裁判官5人の全員一致の結論でした。
仙台高裁判決は、今後の学校防災に生かしていかなければなりません。
教職員には、「過大な負担を学校現場に課す判決ではないか」という受け止め方がありますが、よく議論したい点です。学校保健法改正の趣旨と仙台高裁判決をよく読めば、それが間違った受け止め方だと気づくのではないでしょうか。
学校保健法等の改正に関わる文部科学省の文書(平成20年7月9日)に、「これらの措置の実施は、全て学校長その他の教職員のみの責任とするものではなく、当該学校の管理運営について責任を有する設置者についても、あわせて果たすべき責務を規定したものであることに留意されたい」と、あります。そもそも法令が、学校現場に過大な負担を課すことを意図していないと思います。仙台高裁判決も、防災行政の組織的責任を問題にしたものです。
私の質問を紹介いたします。第364回宮城県議会の文教警察委員会で、上告理由は成り立たないのではないかと追及した質問ですが、仙台高裁判決は学校現場に過大な負担を課すものではないという理解のもとに質問しています。
宮城県 平成30年7月 文教警察委員会(第364回) 07月02日
◆中嶋廉委員
議案は専決処分の承認を求める件ですから、専決処分の適否を判断するために、判決の受けとめ方と上告の理由について伺います。
まず、判決文についてですけれども、本文のほかに別紙資料が付随しています。このうち別紙6という資料について教職員課長にお尋ねしますけれども、どんな内容が示されていますか。この別紙6という資料が成立した経過を承知していれば、御説明ください。
◎中村真太郎教職員課長
別紙6につきましては、当日の避難状況の一覧について、原告側が大川小学校と大川小学校以外の他の石巻市内の小中学校を比較するに当たって作成し、それを書証として提出されたものだと認識しております。御質問のとおり、これは相当の時間と労力をかけたものだと理解しておりますけれども、詳細な作成過程までは承知しておりません。
◆中嶋廉委員
説明いただいたとおりなんですけれども、私は別紙6を見て、原告の人たちの血のにじむような調査でつくられたことを知って、ある種の感動を覚えました。内容は石巻市内の小中学校及び幼稚園の全てについて、3.11の日の避難状況がどうであったかを整理した一覧表です。行政が調査した資料のほかに独自に調査した情報を加えて、しかも第三者が利用しやすいように、A4判の表で11ページで整理したもので、大変な労作です。もともとこの裁判は、学校防災のあり方を問いかけた裁判だと受けとめていますけれども、原告は住民で主権者です。被告は、常に住民の命と安全を守る責務を有している自治体ですから、争いが民間人同士という一般の民事訴訟とは異なる側面を持っていると思います。被災地で起こっていた3・11の事実を掘り起こしたり、今後の学校防災に役立てることを願って行われている調査については、裁判を離れてその労を多として評価していいんではないかと私は受けとめているんですけれども、県の受けとめ方についてお尋ねいたします。
◎中村真太郎教職員課長
繰り返しになってしまいますけれども、こちらの別紙6につきましては、原告側が相当の時間と労力をかけた資料だということは理解しております。ただ詳細については、承知していないと御理解いただきたいと思います。
◆中嶋廉委員
私は、努力には正しく目を向けていただければいいなと思っています。
さて、議案についてですけれども、上告の提起及び上告受理の申し立てを専決した件の承認を求めるものですけれども、このうち上告については憲法違反がある場合にだけなされるもので、通常は余りないのではないかと理解しています。憲法違反があると判断しているんでしょうか。もしあるとすれば、判決のどの部分が憲法の何条に違反していると考えているのか、お答えください。
◎中村真太郎教職員課長
上告につきましては、もう一つの上告受理の申し立ても含めまして、今まさに代理人弁護士で中身を吟味して、協議しているところです。
上告の理由として、資料の4ページの表のところに書いていますけれども、憲法の解釈の誤りがあるということのほかに、例えば、同じ表の中に下線を付しておりますけれども、判決に理由を付せず、又は理由に食い違いがあることも民事訴訟法に規定されおりますので、そういったところを踏まえまして、現在こちらの上告理由書及び上告受理申し立ての理由書について、中身を検討しているというところです。
◆中嶋廉委員
食い違いがあるとおっしゃったんですけれども、判決のどこに食い違いがあると判断しているんでしょうか。
◎中村真太郎教職員課長
具体的な部分については吟味しているところなので、お話しできないところもあるんですけれども、先ほど教育長からお話もありましたとおり、事実認定がされていることが控訴審判決の中であるわけですけれども、事実の評価をしている部分につきましては、我々の主張と相入れない部分があると思っております。具体的にどういうそごや不備に当たるのかも含めて、こちらでも検討しているところです。
◆中嶋廉委員
被告側が主張していて、被告の主張と食い違っているというんだったらまだわかるんです。先ほど教育長が、津波の到達を直接に予見した文献はないということをおっしゃいましたが、1審、2審でこのことについて被告側が主張したことがありますか。
仙台高等裁判所の判決文を読んでいて、私は県がとった態度が非常に恥ずかしくなったんですけれども、宮城県沖地震連動型によって北上川の護岸堤防が損壊して、津波が大川小学校まで到達するんじゃないかということを原告は言っているんです。これに対して、被告側は1回も主張したことはないんですよ。ないどころか、判決でそれを認定してくれるなという主張をしたんです。
仙台高等裁判所で、被告は原告が河川堤防について主張したことはないとまで言ったんです。だけれども、原告は1審のときの最終準備書面で4回、控訴審の理由書及び最終準備書面で2回、堤防のことについて主張していますので、不意打ちをすることにはなりません。木曜日に課長と打ち合わせしたときに、裁判の原則である弁論主義について調べておいてくださいということを申し上げたと思いますが、被告は1回も主張していないんですよ。主張したなら、その上告理由というのは成り立つかもしれませんが、河川堤防について1審、2審で何も主張していないんです。言うべき資格を持っていないと私は思いますけれども、それでも言うんですか。
◎中村真太郎教職員課長
我々としましては、これまでも予見可能性や結果回避性に関しまして、学校保健安全法第30条によって被告側から地域との連携を図って、地域の実情に応じて危機管理マニュアルを作成する必要があるという中で、地域の住民等の意見、知見なども踏まえて十分に考慮していかなければならないという主張をしてきました。
予見可能性に関して過大な義務を課すものだとしているところについては、他の地域で起こった事例や大川小学校の付近の地盤に関する知見はあったんですけれども、大川小学校に津波が来るという直接的な知見ではなくて、それらを総合して判断すれば予見が可能であると、判決の中で評価されていると認識しています。
我々としては、直接的な知見がないところについては、地域住民などとの連携を図る中で危機管理マニュアルを作成するという前提で主張しておりましたので、控訴審判決の中で、新たにそれとは全く違った評価、判断をされたものだと認識しています。なので、弁論主義とおっしゃっているところに何か引っかかるということではなくて、あくまでも仙台高等裁判所の判決が、被告が主張してきたこととは相入れないということで、例えば過大な義務を教育現場に課すなどといったことに関して、県の考え方を示しているという理解です。
◎高橋仁教育長
補足をさせていただきますと、個別の事実認定以上に課長から申し上げたようなところについて、学校保健安全法をどう解釈するかということを、最高裁判所で改めて判断をしていただきたいと考えております。例えば原判決でありますと、校長や教員が独自に避難場所に指定したことが誤りかどうかを判断し、その是正を求める義務があるとなっております。そこまで学校保健安全法が規定するのかどうかということです。これまで学校現場では、例えば県なり市から示されたハザードマップやガイドラインを是として、その中でどう対応するかというふうに動いてきたわけでありますけれども、この判決では、それ自体を誤りかもしれないという批判的な目を持って検証すべきだとしています。それが果たして現実的にできるのか、大震災以前の段階でそういったことができたのか。仮にこの判決が確定するということになれば、今度はそれを課されることになります。それが本当にできるのか、学校はそこまで義務を負わされる存在なのか。そういった評価についてもう一度、最高裁判所で吟味していただきたいということでございます。
◆中嶋廉委員
学校保健安全法が規定しているのかどうかという発言をされましたけれども、平成20年7月9日付で文部科学省から全国の関係機関、県教育委員会にも、学校保健法等の一部を改正する法律の公布についてという文書が通知されています。大変大事な文書で、市販されている法令必携にも収録されていますが、この文書を承知していますか。
◎中村真太郎教職員課長
御指摘の文書自体は承知しておりますけれども、手元にありませんので、中身を逐一確認することはできません。
◆中嶋廉委員
法令必携は、多分スポーツ健康課かどこかに備えがあるんだと思うんですけれども、質疑で確認を求めたいので、どなたかにこの場に持ってきていただくようにお願いできませんか。
教育長の今の発言は、私は正しくないと思います。これはものすごく大事な通達です。学校保健安全法には、学校においてはという書き出しで始まる条項が全体で10カ所あって、学校安全について規定した第26条ないし第30条には4カ所あります。学校においてはという用語について、文部科学省の通知ではこう書いてあるんです。「これらの措置の実施は、全て学校長その他の教職員のみの責任とするものではなく、当該学校の管理運営について責任を有する設置者についても、あわせて果たすべき責務を規定したものであることに留意されたい」と。
学校の先生は、教育で忙しいですよ。だから、学校周辺の地理について把握したとしても、それを防災と結びつけて理解していろいろやるのは大変なので、教育委員会と一般行政の防災部門が相当のバックアップをするということを前提として、この法律がつくられたことに留意されたいということを言っているんです。
そしてこの通達の中で、危機管理マニュアルについて、毎年これを改定するものということも書かれていると思います。ですから、先ほどこの学校保健安全法がそこまで規定しているのかと教育長はおっしゃいましたけれども、法律が施行される前にここまでやるんだということを、この通知は具体的に規定していると思いますけれども、いかがですか。先ほどの発言はよろしかったんでしょうか。
◎高橋仁教育長
具体的にどこまで規定するのかということだと、御理解いただきたいと思います。学校保健安全法第26条では、教育委員会と学校設置者に対する努力義務が規定されていて、第27条以降で学校の義務が規定されていると理解しております。更に解説等があって、文部科学省においても説明を加えていることも承知しており、例えば毎年マニュアルを見直すことなどが書かれております。それに沿って我々も動いてはおりましたけれども、更に細かく今回の判決文にあるようなところまで規定されるのかどうかということは、最高裁判所の判断を仰ぎたいということで、今回上告したということでございます。
◆中嶋廉委員
それでは、議論を進めましょうか。
資料の4ページの6で、上告理由として四つを挙げていますので、4番目から順にただしていきたいと思います。バットの森を避難場所に指定したことについてですが、どの法令に違反していると主張するおつもりでしょうか。
◎中村真太郎教職員課長
資料の4ページの表の上告の理由と、上告受理の申し立てのそれぞれに該当する理由が書かれていますけれども、どれに当たるかというのを検討しております。このバットの森につきましては、大もとをたどれば、判決では学校保健安全法の第26条から第30条までを一体的に捉えて、安全確保義務があったということを認定しております。こういった解釈をされていることに対して、我々としてはそこまでの主張は厳しいのではないかと思っているところなので、法令ではこういったところが関係すると思います。
なので、学校保健安全法の中身として、どこまでの注意義務、予見可能性、結果回避義務をこちらとして負わなければいけないのかというところを、考える必要はあると思います。
◆中嶋廉委員
学校保健安全法は、計画をつくることを義務づけています。毎年改定しなさいということ、第三次避難場所まで指定しておくようにということが通知にもあります。それ自体に争いは全然ないんだと思います。ただ、バットの森という特定の場所を指定したことについて問題があるでしょうということを、上告受理申し立て理由書の中で述べているんじゃないかと思うんですけれども、ここの主張は法令違反と直接結びつくんですか。私には信じられません。
◎中村真太郎教職員課長
今回の控訴審判決においては、地震防災が焦点になったということで、その大前提としてそもそも予見可能性があったのかというところから議論されています。予見可能性があったということであれば、どこに避難をすべきかという場所も決める必要があって、判決ではこの当時の状況を踏まえれば、バットの森というほかになかったと認定されております。
ですので、予見可能性からの一連のつながりがある中で、バットの森を第3次避難場所として指定すべきだったという構成になっておりますので、バットの森だけを切り出してというわけではなくて、バットの森を避難場所に指定すること自体についても、こちらとしては問題があるんではないかという理解でおります。
◎高橋仁教育長
中嶋委員から何度か法令違反という発言がございました。
資料の4ページの参考のところをごらんいただきたいんですけれども、仙台高等裁判所の判決において法令違反があったということではなくて、例えば上告受理の申し立てのところにアンダーラインを引きましたけれども、原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件、その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件という点で、ぜひ最高裁判所に判断していただきたい。あるいは、これまでの最高裁判所の判例と違う判断がなされているのではないかということで、判断を仰ぎたいということでございます。
ですから、法令に違反しているという主張を我々が展開しているということではありませんので、そこは御理解いただきたいと思います。
◆中嶋廉委員
では、教育長の議論に乗ってちょっと質問を変えますけれども、1審と2審で被告がバットの森について、法令の解釈と結びつけて不適当だと主張したことはありますか。ないはずです。
◎中村真太郎教職員課長
バットの森に関して、法令と関連づけて主張したことはないと理解しています。
◆中嶋廉委員
たくさんの論点で、原告が主張したことについてスルーしていることがいっぱいあるんですよ。事実の確認と認定というのは、打ち合わせのときに課長もおっしゃっていましたけれども、単純な事実もあれば、法令の解釈と結びついた事実の認定というのもあるかもしれません。だけれども、1審と2審で主張していないことをいきなり持ち出しているんです。私は、裁判の原則である弁論主義に反すると思いますし、こういうことをやったら上告は受理されないんじゃないかという危機感を持っていることを申し述べておきます。
次の論点いきます。再三出てきていますけれども、津波の予見可能性についてです。
津波の予見可能性についてと資料に書いてあるんですけれども、どんな主張を予定しているのか。先ほどその一端は出てきたのじゃないかと思いますけれども、改めて答えていただけますか。
◎中村真太郎教職員課長
津波の予見性の判断につきましては、石巻市の防災担当部局がこのハザードマップを作成して、それに従って学校が避難計画を立案、指示しているという状態にある中で、石巻市の職員である大川小学校の校長らが、平成22年4月末の時点でハザードマップを批判的に検討すれば、大川小学校に津波が襲来することを予見できたという控訴審判決の判断は、非現実的だと考えておりますので、その点は主張していきたいと思います。
◆中嶋廉委員
課長は非現実的だという意見を述べましたけれども、5月21日の常任委員会で質疑をさせていただきましたが、大川小学校の教頭が1年前のチリ地震津波襲来のときに、校庭で練習していたスポーツ少年団の子供たちを、津波が来る可能性があるということで帰したという事実がある。それから大川中学校は、大川小学校以上に津波浸水予測区域から外れていて、ハザードマップから外れているにもかかわらず、大川中学校の教頭が津波を予見して、危機管理マニュアルを実際に改定するという行動までとっていたという事実がある。
予見可能性はなかったと主張するときに、その主張に反する現実が一つでもあったら、その主張は成り立たなくなると思います。大川小学校及び大川中学校で起こっていた事実について、否定されますか。それでも予見可能性はなかったと主張できるのかどうか、お答えください。
◎中村真太郎教職員課長
控訴審判決の中でされている事実の認定については、その評価に関係する部分もありますので、どれが事実かははっきりしない部分があります。先ほども申し上げましたけれども、我々としてはあくまでも震災当時において、学校現場の校長らがほかの地域における事例や大川小学校の地盤といった、専門家でも理解するのがなかなか難しいような知見を総合して判断すれば、津波が大川小学校に襲来することは予見可能であったという判決の中で書かれていることに対して、そもそもそれは過大な義務であり非現実的だと考えておりますので、そういった主張ができると考えております。
◆中嶋廉委員
それじゃあ、これをお尋ねします。
予見可能性について、知見の有無で判断するんじゃないかと私が尋ねたときに、課長はそうですと認めたと思います。
それで、知見はあったわけですよ。
判決文の書きぶりのよしあしに着目して自分たちの主張を正当化しようとしても、それは無理じゃないかと思います。どういう主張をするにしろ、知見の有無で予見可能性を判断するというのが、日本のこれまでの判例になっています。何を主張するにしろ、判例違反の主張になると思います。よりどころになる判例があるとすれば、ここで示してください。
◎中村真太郎教職員課長
知見に関しましては、先ほど来申し上げている他の地域で起こった事例も、一つの知見だと言われれば知見です。土木工学のようなものも知見ですけれども、そういった知見そのもので大川小学校に直接的に津波が襲来するといったことがわかるわけではなくて、そういった複数の知見を総合して踏まえれば、大川小学校に津波が襲来することは予見できたという構成になっております。そういった意味で、間接的な一つ一つの知見は恐らく存在していたと思いますけれども、大川小学校への津波の襲来が予見できたという直接的な知見は、そもそも存在していなかったと思います。そういったことを予見することを、校長らに課すのは過大だと考えているところです。
◆中嶋廉委員
要するに、判例を示すことはできないんです。何を主張するにしろ、判例違反になる。仙台高等裁判所の判決に、法令違反や判例違反があるということを申し立てようとしているんだと思いますけれども、判例違反を犯そうとしているのは被告である県になるんではないかと考えざるを得ませんので、指摘しておきます。
次の論点にいきます。上告申し立て理由のうち、学校保健安全法第26条ないし第29条の解釈について、多分この部分が、上告する理由の骨格の部分だと思います。
資料の3ページの(2)に、控訴審判決を踏まえた県の考え方が書かれていて、津波の予見可能性について、発災前の学校現場に対し余りにも過大な義務を課すものであり、学校保健安全法が求める義務を大きく超えているという県の受けとめ方が記されています。
ここで学校現場という言葉があるんですけれども、これは一般教員と、校長、教頭、教務主任の学校管理者までを指していると思います。学校現場という言葉には、教育委員会と学校の設置者である自治体が含まれていないと思いますが、確認したいと思います。
それからもう一つ、過大な負担と言っているんですけれども、これは学校安全計画の策定と危機等発生時対処要領の作成などに関する業務について言っているんだと思いますけれども、いかがですか。
◎高橋仁教育長
後段について、私からお答えいたします。
大川小学校については、津波のハザードマップの浸水予想区域外でありました。けれども、平成16年3月の宮城県地震被害想定調査に関する報告書で、発生が予想されていた宮城県沖地震によって津波が発生し得ること、そして想定される地震によって発生が想定される津波は、大川小学校の下流約700メートルまでしか到達せず、北上川堤防を越流することもないが、大川小学校の下流の北上川右岸堤防が地震動によって損壊し、そこから津波が流出し、その津波が大川小学校に襲来する可能性はあり、それを平成22年4月末の時点で、大川小学校の校長らは予見することが可能であったというふうにされています。当時の知見等を総合すればそうだと原判決は言っているわけですけれども、そこまでを全て総合する高い知見を、学校現場の校長らに求めることは不可能ではないかというのが、我々の主張であります。その点を、最高裁判所で判断していただきたいということでございます。
◎中村真太郎教職員課長
前段のお尋ねの部分につきましては、学校現場という言い方にはっきりした定義はないわけですけれども、我々としては、石巻市の作成しているハザードマップに従って、石巻市の学校でも避難計画の立案や指示をしているという理解です。学校だけでなく市教育委員会も含めた教育行政での公務員としての標準的な能力を考えたときに、石巻市の防災担当部局がつくっているハザードマップを批判的に検討していれば予見できたという判断は、こちらとしては非現実的だと考えております。
◆中嶋廉委員
これは大変大事な論点だと思いますけれども、一般の教員がハザードマップの誤りを見抜くというのは、これはなかなか大変だろうと私も思います。ところが、先ほど平成20年7月9日付の通知を読み上げましたけれども、この学校においてと規定している業務については、一般行政が相当の責任を持ってやることを想定してこの法律がつくられているんです。
課長に確認したいんですけれども、石巻市の防災担当者であってもこの誤りを見抜くのは無理だったということをおっしゃっているんですか。
◎中村真太郎教職員課長
石巻市の防災そのものについて、我々が評価、判断するのは難しいところはあるんですけれども、我々としては、防災の担当部局がつくっているハザードマップがそもそも誤っているとか、それが間違っていることもあるという前提で考えるというのは、通常ないと考えております。そういったものを前提として避難計画を策定し、避難行動をするという理解でおります。
◆中嶋廉委員
判決は、いろいろなところでいろいろな表現をしています。県の津波シミュレーションの結果の示し方がマニュアルから外れていて、津波浸水予測区域の表示をするときにバッファゾーンを示していませんでした。それがあって石巻市の防災担当者は、津波浸水予測区域から大川小学校を外してしまったんです。それで判決の中では、もっと上流まで津波が行くということを想定していたということで、もっと下流で高さも低い大川小学校を除外していたのは、防災行政側のミスだったのではないか。それが後々まで響いたんだということを認定しています。
この浸水予測の評価判断の誤りというのは、石巻市の防災担当者といえども無理だったということを、県は主張しようとしているんですか。それだと、学校保健安全法が規定している考え方から外れた主張になると思いますけれども、いかがですか。
◎高橋仁教育長
石巻市の防災部局の取り組みについて、我々として評価する意識は全くございません。今回の仙台高等裁判所の判決は、そういったことも学校現場や市教育委員会が批判的に見て、特に学校現場の校長らが批判的に見て、それを超えるレベルで判断しての備えが必要だということであったものですから、そこまでを学校現場に求めるのは酷ではないかというのが我々の主張でございます。
◆中嶋廉委員
先ほどの平成20年7月9日付の文書で、学校においてはという用語をどういう意味で使うのかという、文部科学省の考え方が示された部分を読み上げました。この通知があるということを、原告の弁護団は知らなかったんです。裁判というのは弁論主義ですから、被告と原告どっちかが挙げた材料だけで裁判所はジャッジをして、判決文を書くときはどっちかが主張したことに基づいて書くんです。被告はもちろんこの通知を取り上げていませんし、原告もこういう通知が存在するということを、きのうまで知らなかったそうです。私が問い合わせしたら、もしも知っていればこれを指摘しただろうということで、仙台高等裁判所はもっと簡単にあの判決文を書けたんじゃないかと思っています。
非常に大事な通知で、設置者についてもあわせて果たすべき責務を規定したものであることに留意されたいとなっています。この学校保健安全法に基づいてつくられる計画及び危機管理マニュアルについては、一般行政の防災部門も相当の責任を持ってつくられるべきものであり、区分けして理解している法規定ではないと思っています。ですから、学校現場と防災部門を切り分けて、防災部門はやれたかもしれないけれども、学校の教師はそこまでは無理でしょうという議論が成り立たないように、一体で取り組めということを要請しているものです。
ですから、法律のつくり込み方に照らして、県の主張というのは法令に違反しているんじゃないかとさえ思っているんです。この通知に照らして、いかがですか。
◎中村真太郎教職員課長
防災担当部局に関係する部分については、教育委員会側からはコメントできないということを改めて御理解いただきたいと思います。その上で、これも繰り返しですけれども、そのハザードマップという防災の担当部局によってつくられたものを、批判的に検討することを学校長らに求めるということが、今回の予見可能性についての大きなポイントだと思っています。
◆中嶋廉委員
今の課長の主張は、判決文の間違った理解になると思います。仙台高等裁判所の判決は、法改正の趣旨を踏まえて学校現場の現実、3年に一遍くらいの人事があるからなかなか大変だろうということを、現実論として認定しているんです。個々の学校の実情に則して、学校安全計画と危機管理マニュアルを改定する力量を蓄えるには限界があるだろうから、法令の趣旨のとおり、教育行政と一般行政の防災部門が相応の責任を果たす必要があるということを判示しているのが、判決の中心でしょう。
それから、仙台高等裁判所の判決は、石巻市と市教育委員会が、学校保健安全法その他の規定に基づいて、どのような取り組みをしてきたかを詳細に認定しています。そのときに、活動量に不足があったなどということは言っていないんです。教育行政と一般行政に対する過大な要求と思われるくだりは、私が判決文を見た限りありません。ただ一つ、ハザードマップに誤りがあった、津波浸水地域から大川小学校を除外していた、しかも津波の際の避難所に指定してしまっていたことが、ああいう重大な事態を招いたことを認定しているんです。ですから、過大な義務があるというふうには、私は思いません。法令や判決に対する誤解が前提になった議論だと、私は指摘せざるを得ないと思います。
最後にもう一つ、賠償額の判断について伺います。5月21日の常任委員会で議論したときに、最高裁判所の判例があって、石巻市の体罰の事件で人件費以外の経費は設置者が負担するものという法令の規定がありますので、全額を設置者が負担したということがあります。もしも設置者である石巻市が賠償金の全額を負担するというんであれば、県は特に財政負担の心配をする必要がありませんので、石巻市が上告したいといったときに、ああ、そうですか、どうぞという単純な対応をすることができるかもしれません。
しかし、例えば県も半分くらい負担しなきゃならないという状況であれば、仮に裁判が2年かかれば1億円と少し、賠償額がふえるわけですよ。県が負担するものも、7000万円くらいふえます。上告するときに、石巻市の亀山市長はかなり重い判断しなければならない。自分の進退も含めて、政治生命を賭して判断しなきゃいけないということをおっしゃっていましたが、知事もそうだと思います。仙台高等裁判所の判決が確定した場合の負担割合について、どう判断していたのか。そして、上告して遅延することで県の負担がふえる可能性があることについてはどのように検討されたのか、説明してください。
◎中村真太郎教職員課長
今、上告をしていますけれども、裁判の結果が確定しないと賠償額についても確定しないということであります。その具体的な割合についてどうだということを申し上げる段階にはないということを、御理解いただきたいと思います。
◆中嶋廉委員
今の答弁は信じられない答弁です。判決が出るまで、賠償額が確定しないのは当たり前です。だけれども、これまでの判例や法令に照らして、どういう財政負担が県に生じるかは判断できるはずでしょう。判断しなければならない性質のものでしょう。なぜ判断しなかったのですか。おかしいんじゃないですか。もう一度お答えください。
◎高橋仁教育長
今回の裁判については、設置者である石巻市の過失が問われる裁判でございます。県としては給与を負担しているということで、この裁判でともに被告になっている状況であります。その上で、裁判の控訴及び上告については、そういった裁判の状況から何よりも石巻市の判断を優先すべきと考えて、知事も上告までの判断をしてきたところであります。賠償金をどうするか、その負担割合をどうするかというのは、これまで具体的に石巻市と協議をしてきたことはございません。
ただ、過去の判例もございます。判決が確定した段階で、そのことについて具体的に協議を始めることになるということで、課長から答弁をさせていただいたということでございます。
◆中嶋廉委員
上告を議決した当時の石巻市議会の理解の状況ですけれども、法制企画官という職責の方が石巻市にはいらっしゃって、弁護士資格を持つ人ですが、福島県で起きた体罰の事件の最高裁判所の判例に着目をして、全額を石巻市が賠償することになると思われると判断しました。それが亀山市長が上告を判断する理由の一つにもなったということを、石巻市議会議員から聞いています。
ところが、最近聞き直しましたところ、今回は学校保健安全法が根拠になっている判決で、しかも組織的な過失を認定しているものであるから、過去の最高裁判所の判決は当てはまらず、負担割合がどうなるかは、最高裁判所の判断を待つ必要がありますけれども、仙台高等裁判所の判決がそのまま確定したとすると、協議の上定めることになるだろうということです。つまり、県にも応分の負担が生じるというのが、現在の石巻市の理解のようです。
そうしますと、割合がどうなるかはともかくとして、上告すれば財政負担がふえます。そのことについても考慮した上で、上告の判断をすべきだったんではないかと思いますけれども、いかがですか。
◎高橋仁教育長
上告に伴う裁判費用が増加するというのは、そのとおりでございます。その判断の上で、これまで知事もさまざまな場面で発言しておりますけれども、1審と2審で全く逆の判断が出ているということ。そういった中で、学校保健安全法の解釈について大変踏み込んだ判断がなされていること等々で、やはり最高裁判所の判断を最終的に仰ぐ必要があるという判断をして、上告することを決めたということでございます。
上告に伴う費用負担の増については、認識をした上で判断をしているということで御理解いただきたいと思います。
◆中嶋廉委員
これで最後にしますけれども、1審と2審で判断が分かれたという評価がいろいろなところに出てくるんですけれども、現場の教員が判断を間違ったか、事前の防災上の組織的な過失があったかという議論はありますけれども、とにかく過失があったという認定では一貫しているんです。そして、1審判決では教員の判断にミスがあったということを認定したんですが、2審では現場の教員が躊躇して50分近く動けなかった実態を招いた背後に、教員個人に責任を課すわけにはいかない事情があったんではないかということに絞って議論をして、事前防災に過失があり、それが教員の過失を招いたというふうに、判断を更に進化させたわけです。一貫して行政の過失が問われているんですよ。教員にミスがあったときも、公務員の場合は個人として処罰されるわけじゃなくて行政の責任であって、賠償金を支払うのも代位弁済で行政がやるわけでしょう。一貫して行政の責任が問われ続けているんです。
ですから、私は受けとめ方に間違いがあると思うし、今申し上げたように、県がこれからやろうとしている主張は弁論主義に反するもので、判例を示すことができず、法令の解釈についてもとても正しい理由があるとは思えません。四つ挙げた理由は、どれも疑問です。
3番目の上告の理由ですけれども、これまでの判例で学校保健安全法に基づいて賠償を命じたものはないと思います。それから、津波裁判で上告した事件が5件ありますけれども、受理されなかったか棄却されて、1件も受理されていません。3番目の理由も、理由には当たらないと思いますけれども、いかがですか。
◎中村真太郎教職員課長
仙台高等裁判所で審議された、同じ東日本大震災の津波によって被害を受けた件に関しての訴訟については、いずれもハザードマップを基礎に置いた上での判断をしているところであるのに対して、今回の控訴審判決に関しては、それを批判的に検討することを求めており、これらとの乖離があると考えております。我々としても、この点は上告の争点になり得るんじゃないかと考えております。
仙台高裁判決は、今後の学校防災に生かしていかなければなりません。
教職員には、「過大な負担を学校現場に課す判決ではないか」という受け止め方がありますが、よく議論したい点です。学校保健法改正の趣旨と仙台高裁判決をよく読めば、それが間違った受け止め方だと気づくのではないでしょうか。
学校保健法等の改正に関わる文部科学省の文書(平成20年7月9日)に、「これらの措置の実施は、全て学校長その他の教職員のみの責任とするものではなく、当該学校の管理運営について責任を有する設置者についても、あわせて果たすべき責務を規定したものであることに留意されたい」と、あります。そもそも法令が、学校現場に過大な負担を課すことを意図していないと思います。仙台高裁判決も、防災行政の組織的責任を問題にしたものです。
私の質問を紹介いたします。第364回宮城県議会の文教警察委員会で、上告理由は成り立たないのではないかと追及した質問ですが、仙台高裁判決は学校現場に過大な負担を課すものではないという理解のもとに質問しています。
宮城県 平成30年7月 文教警察委員会(第364回) 07月02日
◆中嶋廉委員
議案は専決処分の承認を求める件ですから、専決処分の適否を判断するために、判決の受けとめ方と上告の理由について伺います。
まず、判決文についてですけれども、本文のほかに別紙資料が付随しています。このうち別紙6という資料について教職員課長にお尋ねしますけれども、どんな内容が示されていますか。この別紙6という資料が成立した経過を承知していれば、御説明ください。
◎中村真太郎教職員課長
別紙6につきましては、当日の避難状況の一覧について、原告側が大川小学校と大川小学校以外の他の石巻市内の小中学校を比較するに当たって作成し、それを書証として提出されたものだと認識しております。御質問のとおり、これは相当の時間と労力をかけたものだと理解しておりますけれども、詳細な作成過程までは承知しておりません。
◆中嶋廉委員
説明いただいたとおりなんですけれども、私は別紙6を見て、原告の人たちの血のにじむような調査でつくられたことを知って、ある種の感動を覚えました。内容は石巻市内の小中学校及び幼稚園の全てについて、3.11の日の避難状況がどうであったかを整理した一覧表です。行政が調査した資料のほかに独自に調査した情報を加えて、しかも第三者が利用しやすいように、A4判の表で11ページで整理したもので、大変な労作です。もともとこの裁判は、学校防災のあり方を問いかけた裁判だと受けとめていますけれども、原告は住民で主権者です。被告は、常に住民の命と安全を守る責務を有している自治体ですから、争いが民間人同士という一般の民事訴訟とは異なる側面を持っていると思います。被災地で起こっていた3・11の事実を掘り起こしたり、今後の学校防災に役立てることを願って行われている調査については、裁判を離れてその労を多として評価していいんではないかと私は受けとめているんですけれども、県の受けとめ方についてお尋ねいたします。
◎中村真太郎教職員課長
繰り返しになってしまいますけれども、こちらの別紙6につきましては、原告側が相当の時間と労力をかけた資料だということは理解しております。ただ詳細については、承知していないと御理解いただきたいと思います。
◆中嶋廉委員
私は、努力には正しく目を向けていただければいいなと思っています。
さて、議案についてですけれども、上告の提起及び上告受理の申し立てを専決した件の承認を求めるものですけれども、このうち上告については憲法違反がある場合にだけなされるもので、通常は余りないのではないかと理解しています。憲法違反があると判断しているんでしょうか。もしあるとすれば、判決のどの部分が憲法の何条に違反していると考えているのか、お答えください。
◎中村真太郎教職員課長
上告につきましては、もう一つの上告受理の申し立ても含めまして、今まさに代理人弁護士で中身を吟味して、協議しているところです。
上告の理由として、資料の4ページの表のところに書いていますけれども、憲法の解釈の誤りがあるということのほかに、例えば、同じ表の中に下線を付しておりますけれども、判決に理由を付せず、又は理由に食い違いがあることも民事訴訟法に規定されおりますので、そういったところを踏まえまして、現在こちらの上告理由書及び上告受理申し立ての理由書について、中身を検討しているというところです。
◆中嶋廉委員
食い違いがあるとおっしゃったんですけれども、判決のどこに食い違いがあると判断しているんでしょうか。
◎中村真太郎教職員課長
具体的な部分については吟味しているところなので、お話しできないところもあるんですけれども、先ほど教育長からお話もありましたとおり、事実認定がされていることが控訴審判決の中であるわけですけれども、事実の評価をしている部分につきましては、我々の主張と相入れない部分があると思っております。具体的にどういうそごや不備に当たるのかも含めて、こちらでも検討しているところです。
◆中嶋廉委員
被告側が主張していて、被告の主張と食い違っているというんだったらまだわかるんです。先ほど教育長が、津波の到達を直接に予見した文献はないということをおっしゃいましたが、1審、2審でこのことについて被告側が主張したことがありますか。
仙台高等裁判所の判決文を読んでいて、私は県がとった態度が非常に恥ずかしくなったんですけれども、宮城県沖地震連動型によって北上川の護岸堤防が損壊して、津波が大川小学校まで到達するんじゃないかということを原告は言っているんです。これに対して、被告側は1回も主張したことはないんですよ。ないどころか、判決でそれを認定してくれるなという主張をしたんです。
仙台高等裁判所で、被告は原告が河川堤防について主張したことはないとまで言ったんです。だけれども、原告は1審のときの最終準備書面で4回、控訴審の理由書及び最終準備書面で2回、堤防のことについて主張していますので、不意打ちをすることにはなりません。木曜日に課長と打ち合わせしたときに、裁判の原則である弁論主義について調べておいてくださいということを申し上げたと思いますが、被告は1回も主張していないんですよ。主張したなら、その上告理由というのは成り立つかもしれませんが、河川堤防について1審、2審で何も主張していないんです。言うべき資格を持っていないと私は思いますけれども、それでも言うんですか。
◎中村真太郎教職員課長
我々としましては、これまでも予見可能性や結果回避性に関しまして、学校保健安全法第30条によって被告側から地域との連携を図って、地域の実情に応じて危機管理マニュアルを作成する必要があるという中で、地域の住民等の意見、知見なども踏まえて十分に考慮していかなければならないという主張をしてきました。
予見可能性に関して過大な義務を課すものだとしているところについては、他の地域で起こった事例や大川小学校の付近の地盤に関する知見はあったんですけれども、大川小学校に津波が来るという直接的な知見ではなくて、それらを総合して判断すれば予見が可能であると、判決の中で評価されていると認識しています。
我々としては、直接的な知見がないところについては、地域住民などとの連携を図る中で危機管理マニュアルを作成するという前提で主張しておりましたので、控訴審判決の中で、新たにそれとは全く違った評価、判断をされたものだと認識しています。なので、弁論主義とおっしゃっているところに何か引っかかるということではなくて、あくまでも仙台高等裁判所の判決が、被告が主張してきたこととは相入れないということで、例えば過大な義務を教育現場に課すなどといったことに関して、県の考え方を示しているという理解です。
◎高橋仁教育長
補足をさせていただきますと、個別の事実認定以上に課長から申し上げたようなところについて、学校保健安全法をどう解釈するかということを、最高裁判所で改めて判断をしていただきたいと考えております。例えば原判決でありますと、校長や教員が独自に避難場所に指定したことが誤りかどうかを判断し、その是正を求める義務があるとなっております。そこまで学校保健安全法が規定するのかどうかということです。これまで学校現場では、例えば県なり市から示されたハザードマップやガイドラインを是として、その中でどう対応するかというふうに動いてきたわけでありますけれども、この判決では、それ自体を誤りかもしれないという批判的な目を持って検証すべきだとしています。それが果たして現実的にできるのか、大震災以前の段階でそういったことができたのか。仮にこの判決が確定するということになれば、今度はそれを課されることになります。それが本当にできるのか、学校はそこまで義務を負わされる存在なのか。そういった評価についてもう一度、最高裁判所で吟味していただきたいということでございます。
◆中嶋廉委員
学校保健安全法が規定しているのかどうかという発言をされましたけれども、平成20年7月9日付で文部科学省から全国の関係機関、県教育委員会にも、学校保健法等の一部を改正する法律の公布についてという文書が通知されています。大変大事な文書で、市販されている法令必携にも収録されていますが、この文書を承知していますか。
◎中村真太郎教職員課長
御指摘の文書自体は承知しておりますけれども、手元にありませんので、中身を逐一確認することはできません。
◆中嶋廉委員
法令必携は、多分スポーツ健康課かどこかに備えがあるんだと思うんですけれども、質疑で確認を求めたいので、どなたかにこの場に持ってきていただくようにお願いできませんか。
教育長の今の発言は、私は正しくないと思います。これはものすごく大事な通達です。学校保健安全法には、学校においてはという書き出しで始まる条項が全体で10カ所あって、学校安全について規定した第26条ないし第30条には4カ所あります。学校においてはという用語について、文部科学省の通知ではこう書いてあるんです。「これらの措置の実施は、全て学校長その他の教職員のみの責任とするものではなく、当該学校の管理運営について責任を有する設置者についても、あわせて果たすべき責務を規定したものであることに留意されたい」と。
学校の先生は、教育で忙しいですよ。だから、学校周辺の地理について把握したとしても、それを防災と結びつけて理解していろいろやるのは大変なので、教育委員会と一般行政の防災部門が相当のバックアップをするということを前提として、この法律がつくられたことに留意されたいということを言っているんです。
そしてこの通達の中で、危機管理マニュアルについて、毎年これを改定するものということも書かれていると思います。ですから、先ほどこの学校保健安全法がそこまで規定しているのかと教育長はおっしゃいましたけれども、法律が施行される前にここまでやるんだということを、この通知は具体的に規定していると思いますけれども、いかがですか。先ほどの発言はよろしかったんでしょうか。
◎高橋仁教育長
具体的にどこまで規定するのかということだと、御理解いただきたいと思います。学校保健安全法第26条では、教育委員会と学校設置者に対する努力義務が規定されていて、第27条以降で学校の義務が規定されていると理解しております。更に解説等があって、文部科学省においても説明を加えていることも承知しており、例えば毎年マニュアルを見直すことなどが書かれております。それに沿って我々も動いてはおりましたけれども、更に細かく今回の判決文にあるようなところまで規定されるのかどうかということは、最高裁判所の判断を仰ぎたいということで、今回上告したということでございます。
◆中嶋廉委員
それでは、議論を進めましょうか。
資料の4ページの6で、上告理由として四つを挙げていますので、4番目から順にただしていきたいと思います。バットの森を避難場所に指定したことについてですが、どの法令に違反していると主張するおつもりでしょうか。
◎中村真太郎教職員課長
資料の4ページの表の上告の理由と、上告受理の申し立てのそれぞれに該当する理由が書かれていますけれども、どれに当たるかというのを検討しております。このバットの森につきましては、大もとをたどれば、判決では学校保健安全法の第26条から第30条までを一体的に捉えて、安全確保義務があったということを認定しております。こういった解釈をされていることに対して、我々としてはそこまでの主張は厳しいのではないかと思っているところなので、法令ではこういったところが関係すると思います。
なので、学校保健安全法の中身として、どこまでの注意義務、予見可能性、結果回避義務をこちらとして負わなければいけないのかというところを、考える必要はあると思います。
◆中嶋廉委員
学校保健安全法は、計画をつくることを義務づけています。毎年改定しなさいということ、第三次避難場所まで指定しておくようにということが通知にもあります。それ自体に争いは全然ないんだと思います。ただ、バットの森という特定の場所を指定したことについて問題があるでしょうということを、上告受理申し立て理由書の中で述べているんじゃないかと思うんですけれども、ここの主張は法令違反と直接結びつくんですか。私には信じられません。
◎中村真太郎教職員課長
今回の控訴審判決においては、地震防災が焦点になったということで、その大前提としてそもそも予見可能性があったのかというところから議論されています。予見可能性があったということであれば、どこに避難をすべきかという場所も決める必要があって、判決ではこの当時の状況を踏まえれば、バットの森というほかになかったと認定されております。
ですので、予見可能性からの一連のつながりがある中で、バットの森を第3次避難場所として指定すべきだったという構成になっておりますので、バットの森だけを切り出してというわけではなくて、バットの森を避難場所に指定すること自体についても、こちらとしては問題があるんではないかという理解でおります。
◎高橋仁教育長
中嶋委員から何度か法令違反という発言がございました。
資料の4ページの参考のところをごらんいただきたいんですけれども、仙台高等裁判所の判決において法令違反があったということではなくて、例えば上告受理の申し立てのところにアンダーラインを引きましたけれども、原判決に最高裁判所の判例と相反する判断がある事件、その他の法令の解釈に関する重要な事項を含むものと認められる事件という点で、ぜひ最高裁判所に判断していただきたい。あるいは、これまでの最高裁判所の判例と違う判断がなされているのではないかということで、判断を仰ぎたいということでございます。
ですから、法令に違反しているという主張を我々が展開しているということではありませんので、そこは御理解いただきたいと思います。
◆中嶋廉委員
では、教育長の議論に乗ってちょっと質問を変えますけれども、1審と2審で被告がバットの森について、法令の解釈と結びつけて不適当だと主張したことはありますか。ないはずです。
◎中村真太郎教職員課長
バットの森に関して、法令と関連づけて主張したことはないと理解しています。
◆中嶋廉委員
たくさんの論点で、原告が主張したことについてスルーしていることがいっぱいあるんですよ。事実の確認と認定というのは、打ち合わせのときに課長もおっしゃっていましたけれども、単純な事実もあれば、法令の解釈と結びついた事実の認定というのもあるかもしれません。だけれども、1審と2審で主張していないことをいきなり持ち出しているんです。私は、裁判の原則である弁論主義に反すると思いますし、こういうことをやったら上告は受理されないんじゃないかという危機感を持っていることを申し述べておきます。
次の論点いきます。再三出てきていますけれども、津波の予見可能性についてです。
津波の予見可能性についてと資料に書いてあるんですけれども、どんな主張を予定しているのか。先ほどその一端は出てきたのじゃないかと思いますけれども、改めて答えていただけますか。
◎中村真太郎教職員課長
津波の予見性の判断につきましては、石巻市の防災担当部局がこのハザードマップを作成して、それに従って学校が避難計画を立案、指示しているという状態にある中で、石巻市の職員である大川小学校の校長らが、平成22年4月末の時点でハザードマップを批判的に検討すれば、大川小学校に津波が襲来することを予見できたという控訴審判決の判断は、非現実的だと考えておりますので、その点は主張していきたいと思います。
◆中嶋廉委員
課長は非現実的だという意見を述べましたけれども、5月21日の常任委員会で質疑をさせていただきましたが、大川小学校の教頭が1年前のチリ地震津波襲来のときに、校庭で練習していたスポーツ少年団の子供たちを、津波が来る可能性があるということで帰したという事実がある。それから大川中学校は、大川小学校以上に津波浸水予測区域から外れていて、ハザードマップから外れているにもかかわらず、大川中学校の教頭が津波を予見して、危機管理マニュアルを実際に改定するという行動までとっていたという事実がある。
予見可能性はなかったと主張するときに、その主張に反する現実が一つでもあったら、その主張は成り立たなくなると思います。大川小学校及び大川中学校で起こっていた事実について、否定されますか。それでも予見可能性はなかったと主張できるのかどうか、お答えください。
◎中村真太郎教職員課長
控訴審判決の中でされている事実の認定については、その評価に関係する部分もありますので、どれが事実かははっきりしない部分があります。先ほども申し上げましたけれども、我々としてはあくまでも震災当時において、学校現場の校長らがほかの地域における事例や大川小学校の地盤といった、専門家でも理解するのがなかなか難しいような知見を総合して判断すれば、津波が大川小学校に襲来することは予見可能であったという判決の中で書かれていることに対して、そもそもそれは過大な義務であり非現実的だと考えておりますので、そういった主張ができると考えております。
◆中嶋廉委員
それじゃあ、これをお尋ねします。
予見可能性について、知見の有無で判断するんじゃないかと私が尋ねたときに、課長はそうですと認めたと思います。
それで、知見はあったわけですよ。
判決文の書きぶりのよしあしに着目して自分たちの主張を正当化しようとしても、それは無理じゃないかと思います。どういう主張をするにしろ、知見の有無で予見可能性を判断するというのが、日本のこれまでの判例になっています。何を主張するにしろ、判例違反の主張になると思います。よりどころになる判例があるとすれば、ここで示してください。
◎中村真太郎教職員課長
知見に関しましては、先ほど来申し上げている他の地域で起こった事例も、一つの知見だと言われれば知見です。土木工学のようなものも知見ですけれども、そういった知見そのもので大川小学校に直接的に津波が襲来するといったことがわかるわけではなくて、そういった複数の知見を総合して踏まえれば、大川小学校に津波が襲来することは予見できたという構成になっております。そういった意味で、間接的な一つ一つの知見は恐らく存在していたと思いますけれども、大川小学校への津波の襲来が予見できたという直接的な知見は、そもそも存在していなかったと思います。そういったことを予見することを、校長らに課すのは過大だと考えているところです。
◆中嶋廉委員
要するに、判例を示すことはできないんです。何を主張するにしろ、判例違反になる。仙台高等裁判所の判決に、法令違反や判例違反があるということを申し立てようとしているんだと思いますけれども、判例違反を犯そうとしているのは被告である県になるんではないかと考えざるを得ませんので、指摘しておきます。
次の論点にいきます。上告申し立て理由のうち、学校保健安全法第26条ないし第29条の解釈について、多分この部分が、上告する理由の骨格の部分だと思います。
資料の3ページの(2)に、控訴審判決を踏まえた県の考え方が書かれていて、津波の予見可能性について、発災前の学校現場に対し余りにも過大な義務を課すものであり、学校保健安全法が求める義務を大きく超えているという県の受けとめ方が記されています。
ここで学校現場という言葉があるんですけれども、これは一般教員と、校長、教頭、教務主任の学校管理者までを指していると思います。学校現場という言葉には、教育委員会と学校の設置者である自治体が含まれていないと思いますが、確認したいと思います。
それからもう一つ、過大な負担と言っているんですけれども、これは学校安全計画の策定と危機等発生時対処要領の作成などに関する業務について言っているんだと思いますけれども、いかがですか。
◎高橋仁教育長
後段について、私からお答えいたします。
大川小学校については、津波のハザードマップの浸水予想区域外でありました。けれども、平成16年3月の宮城県地震被害想定調査に関する報告書で、発生が予想されていた宮城県沖地震によって津波が発生し得ること、そして想定される地震によって発生が想定される津波は、大川小学校の下流約700メートルまでしか到達せず、北上川堤防を越流することもないが、大川小学校の下流の北上川右岸堤防が地震動によって損壊し、そこから津波が流出し、その津波が大川小学校に襲来する可能性はあり、それを平成22年4月末の時点で、大川小学校の校長らは予見することが可能であったというふうにされています。当時の知見等を総合すればそうだと原判決は言っているわけですけれども、そこまでを全て総合する高い知見を、学校現場の校長らに求めることは不可能ではないかというのが、我々の主張であります。その点を、最高裁判所で判断していただきたいということでございます。
◎中村真太郎教職員課長
前段のお尋ねの部分につきましては、学校現場という言い方にはっきりした定義はないわけですけれども、我々としては、石巻市の作成しているハザードマップに従って、石巻市の学校でも避難計画の立案や指示をしているという理解です。学校だけでなく市教育委員会も含めた教育行政での公務員としての標準的な能力を考えたときに、石巻市の防災担当部局がつくっているハザードマップを批判的に検討していれば予見できたという判断は、こちらとしては非現実的だと考えております。
◆中嶋廉委員
これは大変大事な論点だと思いますけれども、一般の教員がハザードマップの誤りを見抜くというのは、これはなかなか大変だろうと私も思います。ところが、先ほど平成20年7月9日付の通知を読み上げましたけれども、この学校においてと規定している業務については、一般行政が相当の責任を持ってやることを想定してこの法律がつくられているんです。
課長に確認したいんですけれども、石巻市の防災担当者であってもこの誤りを見抜くのは無理だったということをおっしゃっているんですか。
◎中村真太郎教職員課長
石巻市の防災そのものについて、我々が評価、判断するのは難しいところはあるんですけれども、我々としては、防災の担当部局がつくっているハザードマップがそもそも誤っているとか、それが間違っていることもあるという前提で考えるというのは、通常ないと考えております。そういったものを前提として避難計画を策定し、避難行動をするという理解でおります。
◆中嶋廉委員
判決は、いろいろなところでいろいろな表現をしています。県の津波シミュレーションの結果の示し方がマニュアルから外れていて、津波浸水予測区域の表示をするときにバッファゾーンを示していませんでした。それがあって石巻市の防災担当者は、津波浸水予測区域から大川小学校を外してしまったんです。それで判決の中では、もっと上流まで津波が行くということを想定していたということで、もっと下流で高さも低い大川小学校を除外していたのは、防災行政側のミスだったのではないか。それが後々まで響いたんだということを認定しています。
この浸水予測の評価判断の誤りというのは、石巻市の防災担当者といえども無理だったということを、県は主張しようとしているんですか。それだと、学校保健安全法が規定している考え方から外れた主張になると思いますけれども、いかがですか。
◎高橋仁教育長
石巻市の防災部局の取り組みについて、我々として評価する意識は全くございません。今回の仙台高等裁判所の判決は、そういったことも学校現場や市教育委員会が批判的に見て、特に学校現場の校長らが批判的に見て、それを超えるレベルで判断しての備えが必要だということであったものですから、そこまでを学校現場に求めるのは酷ではないかというのが我々の主張でございます。
◆中嶋廉委員
先ほどの平成20年7月9日付の文書で、学校においてはという用語をどういう意味で使うのかという、文部科学省の考え方が示された部分を読み上げました。この通知があるということを、原告の弁護団は知らなかったんです。裁判というのは弁論主義ですから、被告と原告どっちかが挙げた材料だけで裁判所はジャッジをして、判決文を書くときはどっちかが主張したことに基づいて書くんです。被告はもちろんこの通知を取り上げていませんし、原告もこういう通知が存在するということを、きのうまで知らなかったそうです。私が問い合わせしたら、もしも知っていればこれを指摘しただろうということで、仙台高等裁判所はもっと簡単にあの判決文を書けたんじゃないかと思っています。
非常に大事な通知で、設置者についてもあわせて果たすべき責務を規定したものであることに留意されたいとなっています。この学校保健安全法に基づいてつくられる計画及び危機管理マニュアルについては、一般行政の防災部門も相当の責任を持ってつくられるべきものであり、区分けして理解している法規定ではないと思っています。ですから、学校現場と防災部門を切り分けて、防災部門はやれたかもしれないけれども、学校の教師はそこまでは無理でしょうという議論が成り立たないように、一体で取り組めということを要請しているものです。
ですから、法律のつくり込み方に照らして、県の主張というのは法令に違反しているんじゃないかとさえ思っているんです。この通知に照らして、いかがですか。
◎中村真太郎教職員課長
防災担当部局に関係する部分については、教育委員会側からはコメントできないということを改めて御理解いただきたいと思います。その上で、これも繰り返しですけれども、そのハザードマップという防災の担当部局によってつくられたものを、批判的に検討することを学校長らに求めるということが、今回の予見可能性についての大きなポイントだと思っています。
◆中嶋廉委員
今の課長の主張は、判決文の間違った理解になると思います。仙台高等裁判所の判決は、法改正の趣旨を踏まえて学校現場の現実、3年に一遍くらいの人事があるからなかなか大変だろうということを、現実論として認定しているんです。個々の学校の実情に則して、学校安全計画と危機管理マニュアルを改定する力量を蓄えるには限界があるだろうから、法令の趣旨のとおり、教育行政と一般行政の防災部門が相応の責任を果たす必要があるということを判示しているのが、判決の中心でしょう。
それから、仙台高等裁判所の判決は、石巻市と市教育委員会が、学校保健安全法その他の規定に基づいて、どのような取り組みをしてきたかを詳細に認定しています。そのときに、活動量に不足があったなどということは言っていないんです。教育行政と一般行政に対する過大な要求と思われるくだりは、私が判決文を見た限りありません。ただ一つ、ハザードマップに誤りがあった、津波浸水地域から大川小学校を除外していた、しかも津波の際の避難所に指定してしまっていたことが、ああいう重大な事態を招いたことを認定しているんです。ですから、過大な義務があるというふうには、私は思いません。法令や判決に対する誤解が前提になった議論だと、私は指摘せざるを得ないと思います。
最後にもう一つ、賠償額の判断について伺います。5月21日の常任委員会で議論したときに、最高裁判所の判例があって、石巻市の体罰の事件で人件費以外の経費は設置者が負担するものという法令の規定がありますので、全額を設置者が負担したということがあります。もしも設置者である石巻市が賠償金の全額を負担するというんであれば、県は特に財政負担の心配をする必要がありませんので、石巻市が上告したいといったときに、ああ、そうですか、どうぞという単純な対応をすることができるかもしれません。
しかし、例えば県も半分くらい負担しなきゃならないという状況であれば、仮に裁判が2年かかれば1億円と少し、賠償額がふえるわけですよ。県が負担するものも、7000万円くらいふえます。上告するときに、石巻市の亀山市長はかなり重い判断しなければならない。自分の進退も含めて、政治生命を賭して判断しなきゃいけないということをおっしゃっていましたが、知事もそうだと思います。仙台高等裁判所の判決が確定した場合の負担割合について、どう判断していたのか。そして、上告して遅延することで県の負担がふえる可能性があることについてはどのように検討されたのか、説明してください。
◎中村真太郎教職員課長
今、上告をしていますけれども、裁判の結果が確定しないと賠償額についても確定しないということであります。その具体的な割合についてどうだということを申し上げる段階にはないということを、御理解いただきたいと思います。
◆中嶋廉委員
今の答弁は信じられない答弁です。判決が出るまで、賠償額が確定しないのは当たり前です。だけれども、これまでの判例や法令に照らして、どういう財政負担が県に生じるかは判断できるはずでしょう。判断しなければならない性質のものでしょう。なぜ判断しなかったのですか。おかしいんじゃないですか。もう一度お答えください。
◎高橋仁教育長
今回の裁判については、設置者である石巻市の過失が問われる裁判でございます。県としては給与を負担しているということで、この裁判でともに被告になっている状況であります。その上で、裁判の控訴及び上告については、そういった裁判の状況から何よりも石巻市の判断を優先すべきと考えて、知事も上告までの判断をしてきたところであります。賠償金をどうするか、その負担割合をどうするかというのは、これまで具体的に石巻市と協議をしてきたことはございません。
ただ、過去の判例もございます。判決が確定した段階で、そのことについて具体的に協議を始めることになるということで、課長から答弁をさせていただいたということでございます。
◆中嶋廉委員
上告を議決した当時の石巻市議会の理解の状況ですけれども、法制企画官という職責の方が石巻市にはいらっしゃって、弁護士資格を持つ人ですが、福島県で起きた体罰の事件の最高裁判所の判例に着目をして、全額を石巻市が賠償することになると思われると判断しました。それが亀山市長が上告を判断する理由の一つにもなったということを、石巻市議会議員から聞いています。
ところが、最近聞き直しましたところ、今回は学校保健安全法が根拠になっている判決で、しかも組織的な過失を認定しているものであるから、過去の最高裁判所の判決は当てはまらず、負担割合がどうなるかは、最高裁判所の判断を待つ必要がありますけれども、仙台高等裁判所の判決がそのまま確定したとすると、協議の上定めることになるだろうということです。つまり、県にも応分の負担が生じるというのが、現在の石巻市の理解のようです。
そうしますと、割合がどうなるかはともかくとして、上告すれば財政負担がふえます。そのことについても考慮した上で、上告の判断をすべきだったんではないかと思いますけれども、いかがですか。
◎高橋仁教育長
上告に伴う裁判費用が増加するというのは、そのとおりでございます。その判断の上で、これまで知事もさまざまな場面で発言しておりますけれども、1審と2審で全く逆の判断が出ているということ。そういった中で、学校保健安全法の解釈について大変踏み込んだ判断がなされていること等々で、やはり最高裁判所の判断を最終的に仰ぐ必要があるという判断をして、上告することを決めたということでございます。
上告に伴う費用負担の増については、認識をした上で判断をしているということで御理解いただきたいと思います。
◆中嶋廉委員
これで最後にしますけれども、1審と2審で判断が分かれたという評価がいろいろなところに出てくるんですけれども、現場の教員が判断を間違ったか、事前の防災上の組織的な過失があったかという議論はありますけれども、とにかく過失があったという認定では一貫しているんです。そして、1審判決では教員の判断にミスがあったということを認定したんですが、2審では現場の教員が躊躇して50分近く動けなかった実態を招いた背後に、教員個人に責任を課すわけにはいかない事情があったんではないかということに絞って議論をして、事前防災に過失があり、それが教員の過失を招いたというふうに、判断を更に進化させたわけです。一貫して行政の過失が問われているんですよ。教員にミスがあったときも、公務員の場合は個人として処罰されるわけじゃなくて行政の責任であって、賠償金を支払うのも代位弁済で行政がやるわけでしょう。一貫して行政の責任が問われ続けているんです。
ですから、私は受けとめ方に間違いがあると思うし、今申し上げたように、県がこれからやろうとしている主張は弁論主義に反するもので、判例を示すことができず、法令の解釈についてもとても正しい理由があるとは思えません。四つ挙げた理由は、どれも疑問です。
3番目の上告の理由ですけれども、これまでの判例で学校保健安全法に基づいて賠償を命じたものはないと思います。それから、津波裁判で上告した事件が5件ありますけれども、受理されなかったか棄却されて、1件も受理されていません。3番目の理由も、理由には当たらないと思いますけれども、いかがですか。
◎中村真太郎教職員課長
仙台高等裁判所で審議された、同じ東日本大震災の津波によって被害を受けた件に関しての訴訟については、いずれもハザードマップを基礎に置いた上での判断をしているところであるのに対して、今回の控訴審判決に関しては、それを批判的に検討することを求めており、これらとの乖離があると考えております。我々としても、この点は上告の争点になり得るんじゃないかと考えております。