「ひきこもり」への偏見を助長する懸念ー川崎殺傷事件の報道のあり方に、ひきこもりに関わる団体が声明文[2019年05月31日(Fri)]
川崎殺傷事件の報道について(声明文)
2019年5月28日に神奈川県川崎市で起きた無差別殺傷事件につきまして、まずは被害に遭われた方、ご家族や関係者の方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。被害に遭われた方の一日も早いご回復と心の平安を取り戻されますことを心からお祈りします。
弱い子どもを狙い、尊い命を奪った犯行はいかなる理由があろうと決して許されるものではなく、私たちも強い憤りと共に深く胸を痛めています。
そのうえで、「事件を悲しみ犯行を憎むこと」が「ひきこもる人たちをひとくくりに否定すること」に向かいかねない現状に対して、ひきこもりの経験者であり、また日々多くのひきこもり当事者・経験者、ご家族と接している立場からお願いがあります。
「ひきこもり」への偏見の助長の懸念
川崎市による会見では「長期間仕事に就かず、ひきこもり傾向にあった」「同居の親族からおこづかいをもらっていた」「市の精神保健福祉センターに複数回相談があった」との内容がありました。
これらが事実であったとしても、ひきこもっていたことと殺傷事件を起こしたことを憶測や先入観で関連付ける報道がなされていることに強い危惧を感じています。
「ひきこもるような人間だから事件を起こした」とも受け取れるような報道は、無関係のひきこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長するものだからです。
「犯罪者予備軍」というイメージに苦しめられる
これまでもひきこもりがちな状態にあった人物が刑事事件を起こすたび、メディアで「ひきこもり」と犯罪が結び付けられ「犯罪者予備軍」のような負のイメージが繰り返し生産されてきました。社会の「ひきこもり」へのイメージが歪められ続ければ、当事者や家族は追いつめられ、社会とつながることへの不安や絶望を深めてしまいかねません。
「8050問題」への誤解を引き起こす
また「8050問題」とは、ひきこもり当事者とその家族の高年齢化傾向にともなう課題を指しており、今回のような犯罪行為に結びつく可能性を含む問題という意味ではありません。今回の事件と関連づけて「まさに8050問題」と表現することも適切ではないと考えます。
以上のことから、報道倫理に則り、偏った不公正な内容や、事件とひきこもりを短絡的に結びつけるような報道はしないことを報道機関各社に求め、「ひきこもり」や「8050問題」に対して誤った認識や差別が助長されないよう、慎重な対応を求めます。
また報道に際しては「専門家」「有識者」だけではなく、ひきこもり当事者・経験者の声を取り上げていただきたくお願い申し上げます。当事者不在で「ひきこもり」が語られ、実態に即さないイメージが拡大していくことは、さらなる誤解と偏見を引き起こします。
私たちが接してきたひきこもりの当事者や経験者は、そうでない人たちと何ら変わりありません。「ひきこもり」かどうかによらず、周囲の無理解や孤立のうちに長く置かれ、絶望を深めてしまうと、ひとは極端な行動に出てしまうことがあります。事件の背景が丁寧に検証され、支え合う社会に向かう契機となることが、痛ましい事件の再発防止と考えます。特定の状況に置かれている人々を排除したり、異質のものとして見るのではなく、事実に則り冷静に適切な対応をとっていただくようお願い申し上げます。
一般社団法人ひきこもりUX会議
2019年5月31日
●声明文のPDFファイル
2019年5月28日に神奈川県川崎市で起きた無差別殺傷事件につきまして、まずは被害に遭われた方、ご家族や関係者の方々に心からお悔やみとお見舞いを申し上げます。被害に遭われた方の一日も早いご回復と心の平安を取り戻されますことを心からお祈りします。
弱い子どもを狙い、尊い命を奪った犯行はいかなる理由があろうと決して許されるものではなく、私たちも強い憤りと共に深く胸を痛めています。
そのうえで、「事件を悲しみ犯行を憎むこと」が「ひきこもる人たちをひとくくりに否定すること」に向かいかねない現状に対して、ひきこもりの経験者であり、また日々多くのひきこもり当事者・経験者、ご家族と接している立場からお願いがあります。
「ひきこもり」への偏見の助長の懸念
川崎市による会見では「長期間仕事に就かず、ひきこもり傾向にあった」「同居の親族からおこづかいをもらっていた」「市の精神保健福祉センターに複数回相談があった」との内容がありました。
これらが事実であったとしても、ひきこもっていたことと殺傷事件を起こしたことを憶測や先入観で関連付ける報道がなされていることに強い危惧を感じています。
「ひきこもるような人間だから事件を起こした」とも受け取れるような報道は、無関係のひきこもり当事者を深く傷つけ、誤解と偏見を助長するものだからです。
「犯罪者予備軍」というイメージに苦しめられる
これまでもひきこもりがちな状態にあった人物が刑事事件を起こすたび、メディアで「ひきこもり」と犯罪が結び付けられ「犯罪者予備軍」のような負のイメージが繰り返し生産されてきました。社会の「ひきこもり」へのイメージが歪められ続ければ、当事者や家族は追いつめられ、社会とつながることへの不安や絶望を深めてしまいかねません。
「8050問題」への誤解を引き起こす
また「8050問題」とは、ひきこもり当事者とその家族の高年齢化傾向にともなう課題を指しており、今回のような犯罪行為に結びつく可能性を含む問題という意味ではありません。今回の事件と関連づけて「まさに8050問題」と表現することも適切ではないと考えます。
以上のことから、報道倫理に則り、偏った不公正な内容や、事件とひきこもりを短絡的に結びつけるような報道はしないことを報道機関各社に求め、「ひきこもり」や「8050問題」に対して誤った認識や差別が助長されないよう、慎重な対応を求めます。
また報道に際しては「専門家」「有識者」だけではなく、ひきこもり当事者・経験者の声を取り上げていただきたくお願い申し上げます。当事者不在で「ひきこもり」が語られ、実態に即さないイメージが拡大していくことは、さらなる誤解と偏見を引き起こします。
私たちが接してきたひきこもりの当事者や経験者は、そうでない人たちと何ら変わりありません。「ひきこもり」かどうかによらず、周囲の無理解や孤立のうちに長く置かれ、絶望を深めてしまうと、ひとは極端な行動に出てしまうことがあります。事件の背景が丁寧に検証され、支え合う社会に向かう契機となることが、痛ましい事件の再発防止と考えます。特定の状況に置かれている人々を排除したり、異質のものとして見るのではなく、事実に則り冷静に適切な対応をとっていただくようお願い申し上げます。
一般社団法人ひきこもりUX会議
2019年5月31日
●声明文のPDFファイル
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