夕刊フジ「神内治の大化け前の関西中小企業」
に特集記事を掲載していただきました「神内治の新大化け前の関西中小企業」
<記事>
介護が必要な人とその家族に、気軽に旅行を楽しんでほしい——。
障害者、高齢者の旅行をサポートするビジネスを立ち上げたのは、現役の大学生。
◆
発端は3年前の冬、高齢で歩けなくなった祖母を連れて出かけた家族旅行だった。
「バリアフリーが売りの旅館に泊まったのですが、祖母の入浴介助を旅館の人にお
願いしたら断られたのです。57歳の母が1人で風呂に入れ、へとへとに疲れ果ててしま
いました」
誰かほんの少しでも手を貸してくれたら——。
そんな思いが、ビジネスのアイデアを芽吹かせた。
「旅のお手伝い楽楽」。介助がないと外へ出ることもままならない
障害者や高齢者を“全面的”に手助けし、
1人ひとりに合わせた旅行のプランをオーダーメードする。
旅のプランニングから、宿の手配、看護師やヘルパーの資格を持ったスタッフによる
移動・食事・入浴・トイレの補助、帰宅後までサポートは続く。
全面的というのは比喩ではない。その手がおよぶのは、旅行には限らない。
ちょっとした外出、買い物、外食、映画・演劇鑑賞、スポーツ観戦はもとより、
家族の結婚式や入学・卒業式、墓参りまで、“お手伝い”の範囲は広がる。
NPOやNGOでなく、ボランティアではもちろんなく、それを1つのビジネスとして始め
たのは、佐野恵一さん(23)。
同志社大学経済学部に籍を置く現役の大学生(4回生)だ。
「野球がやりたくて」同大に入り、
「高校野球の監督に憧れて」教師をめざしていた佐野さんは、
祖母との旅行をきっかけに「介助者を旅館に派遣する」ビジネスを思いつく。
2005年12月には、そのアイデアで同大の第2回ビジネスプランコンテストの
最優秀賞を受賞した。
「年が明けてさっそく有馬温泉へ営業に行きました」。「楽楽」の屋号に、自分の
名前と携帯電話の番号しか書いていない名刺を持って——。
「よく相手にしてもらえたものですが、無理だという返事ばかりでした。
でも、そこではっきりわかったことがあったのです」
旅館やホテルは、“自前”で介助者を用意して対応するリスクは背負いたくない。だ
が、ヘルパー同伴で来る客は歓迎するという。それなら、受け入れる側ではなく、出
かける客のほうに視点を移せばいい。
昨年4月、旅行代理店にパートナーになってもらい、要介護者の旅行のサポートをス
タートした。
10月には初めて、5人の障害者の京都の旅を手助けした。
「車イスで清水の舞台に立てるなんて」と、その中の1人は涙を流さんばかりに感激してくれた。
難しいのは料金設定だが、例えば、1泊2日で白浜温泉へ、要介護の親1人に子の夫
婦2人、看護士かヘルパーがついて、旅行費用16〜17万円が標準。
これには大阪発の交通費、介助者の宿泊費なども含まれており、通常の旅行費用と比べてもそう高くはない。
現在、登録しているスタッフは16人。うち看護士が10人、ヘルパーが6人だ。
佐野さん自身もホームヘルパー2級の資格を持ち、
「雰囲気を壊さないように」と考えたユニフォームの甚平を着て、
入浴の介助などに奮闘する。
この1年で、受注したのは14件。ビジネスとしてはまだまだだが、今年10月には旅行
業に登録し、11月に法人化を予定している。
「行けるところへ、ではなく行きたいところへ。そこに手すりがなければ、私たち
がその代わりになります」と佐野さん。
同じ学生ベンチャーでも、どこかのIT起業家とは志が違う。
京都市下京区、☎075・229・6529、Eメールアドレス
info@tabi-raku.com
(写真説明)
(1)「人の手こそ本当のバリアフリー」という佐野さん
(2)(3)懐石料理を流動食に。ニーズから生まれた画期的なアイデアだ