• もっと見る
« 2019年08月 | Main | 2019年10月 »
<< 2019年09月 >>
1 2 3 4 5 6 7
8 9 10 11 12 13 14
15 16 17 18 19 20 21
22 23 24 25 26 27 28
29 30          
最新記事
カテゴリアーカイブ
月別アーカイブ
日別アーカイブ
ぼくのなかの宝珠[2019年09月04日(Wed)]

DSCN9846.JPG

市民病院上層階の窓辺に置かれたゆらゆら葉が上下するおもちゃ。ソーラーで動く仕掛けらしい。
バイパスを通りかかったタンクローリーが映っていた。
偶然のコントラスト。

*******

金色の鹿   村上昭夫

金色の鹿を見た
金色の鹿を見たと言っても
誰もほんとうにしてはくれない

僕が頼りにならない少年だったから
ぼくのなかの目立たない存在なのだから
誰もそっぽを向いては
足早に行ってしまう

でもその山ならばたしかにある
みなが五葉山と呼ぶ山で
東は直きに太平洋で
広がる午前の雲を背に深く負いながら
あの鹿はどの方向へ向ったのだろう
そのことをどのように説いたなら
ぼくが分ってもらえるのだろう

鹿が死んでしまうと
ぼくのなかの宝珠が死ぬという
言い伝え
ぼくはそのことを
夕凪の便りのように聞いた筈なのに


 ★野村喜和夫・城戸朱理 編『戦後名詩選  T』(思潮社、2000年)

*五葉山…岩手県南東にある山。標高1341.3m

◆村上昭夫(1927-1968)は18歳で迎えた敗戦後、シベリアに抑留、帰国後は結核と闘いながら詩集『動物哀歌』を遺した。




| 次へ
検索
検索語句
最新コメント
タグクラウド
プロフィール

岡本清弘さんの画像
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index1_0.rdf
https://blog.canpan.info/poepoesongs/index2_0.xml