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ヒロシマの女学生に[2019年08月05日(Mon)]

プリーモ・レーヴィの詩

◆アウシュヴィッツの生還者、プリーモ・レーヴィ(1919-1987)の詩集が出た。
1978年の作品に、核の犠牲となったヒロシマの女学生をうたった詩がある。

ポンペイの少女  プリーモ・レーヴィ

人の苦しみはみな自分のものだから
まだまざまざと体験できる、おまえの苦しみを、やせこけた娘よ、
おまえは激しく震えながら母親にしがみついている
またその胎内に入り込みたいかのように
真昼に空が真っ暗になった時のことだ。
それはむだだった、空気が毒に変わり
おまえを探して、閉め切った窓を通り抜けてきたからだ
頑丈な壁で囲まれたおまえの静かな家に
おまえのはにかんだほほえみと歌声で、幸せにあふれていたその家に。
長い年月がたち、火山灰は石となり
おまえの愛らしい手足は永遠に閉じ込められた。
こうしておまえはここにいる、ねじれた石膏の像になって、
終わりのない断末魔の苦しみとして、我らの誇るべき種子が
神々にはいささかの価値もないという、恐るべき証人になって。
だがおまえの遠い妹のものは何も残っていない
オランダの少女だ、壁の中に閉じ込められたが
それでも明日のない青春を書き残した。
彼女の無言の灰は風に散らされ、
その短い命はしわくちゃのノートに閉じ込められている。
ヒロシマの女学生のものは何もない、
千の太陽の光で壁に焼きつけられた影、
恐怖の祭壇に捧げられた犠牲者。
地上の有力者たちよ、新たな毒の主人たちよ、
すべてを壊す雷の、ひそかな、よこしまな管理人たちよ、
天からの災いだけでもうたくさんだ。
指を押す前に、立ち止まって考えるがいい。 

                     1978年11月20日

◆石膏像を前にして詩人は、1900年前、ヴェスヴィオ火山の火砕流によって埋め尽くされたポンペイの少女の最期を目の当たりにする。
想像は現代へと下ってアムステルダムの少女アンネ・フランクへ。彼女の短い青春は日記の中に辛うじて残された。そして、影以外、何一つこの世に生きた痕跡を残すことなく消えたヒロシマの女学生へ。

◆1行目「人の苦しみはみな自分のものだから」と、何ということばだろう。彼女らの苦しみを己の爪の先から体の深奥まで押し込んだまま、言葉の楯をもって「地上の有力者たち」に対峙する人間。


Pレーヴィ全詩集_0002.jpg
『プリーモ・レーヴィ全詩集 予期せぬ時に』竹山博英=訳。岩波書店、2019年



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