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「まる子はきいきがわるい」[2019年06月15日(Sat)]

◆昨日と同じく中川一政若き日の詩群から、もう一篇――


まずしき母子   中川一政

まる子はきいきがわるいので
お菓子を買ふてやるのだぞよ
お前はいまつかひしばかりゆゑ
またあとで買ふてやるぞよ

駄菓子屋のみせさき
母に寄り来し子をさとす
母はかせぎにゆくなり

をさな子よ、よくきゝわけよかし
なれは父なきもの
われのみなんぢを養はんず

母は涙ぐみつつ
やまひなる幼児を負ひて
道をよぎりつ
あとに立ちてみおくりし子は
またおのが野の友に
まじらんと走りゆきたり
 (一九一五・九)

  『中川一政全文集』第一巻(中央公論社、1987年)より

「きいきがわるい」…(体調・心臓の)具合がよくない
野坂昭如「火垂るの墓」に、(清太)「お母ちゃんちょっとキイキわるいねん、じきようなるよってな」、「お母ちゃんまだキイキ痛いのん?」(節子)のセリフがある。

◆今の我々に想像もつかないほどカツカツの暮らしであっただろうと想像される百年余りも前の母子の貧苦。
わが子を諭す母の苦衷、仕事に行く母を見送る辛さとひもじさを振り切るように遊びの輪に戻る父なき子……と書けば人情話の世界のようだが、今もあちこちに同様の母子がいるのではないか?

世を驚かす事件の陰に、手をさしのべるべき親子が黙したまま息を詰めて存在するのでは、と想像する。


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