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〈あのひとたち〉[2019年06月07日(Fri)]

DSCN1045.JPG
キンシバイ(金糸梅)

*******


川べり  南川隆雄

土手下の川べりに小屋をつらねて
放し飼いの豚といっしょに住んでいた
 あのひとたち
洗濯好きで 流水の近くについ寄り合ってしまう

流れに半ば沈んだ石に衣類をただんでのせ
薪ほどの棒切れでひたすら叩く
布が破れないのかな
学校の行き帰りに土橋から眺めたいつものけしき

あのひとたち としか呼びようのない
うまく日本語をしゃべれないひとたち
外との話は子どもにまかせるらしい

ジュラルミンの下敷き 字の書ける白い滑石
机に擦りつけると甘い香りが漂う
 戦闘機の防弾ガラスの割れ
小屋のこどもが見せびらかす

鉄かぶとに上流の水をすくって飯を炊き
壺漬けの赤いはくさいをのせて掻っこむ
喧嘩するときとくべつの力が湧くそうだ

土手と流れの間のせまい砂地
そこから出ると もう余所のくにだった
あのひとたち どこで焼け出されてきたのだろう
余所のくにどうしの争いで


南川隆雄『みぎわの留別』(思潮社、2018年)より

◆1937年三重県四日市生まれ、現在は相模原市に在住の詩人。

終戦後間もない頃の朝鮮の人たちの記憶。
貧しくもたくましく生き抜こうとしている人々の姿。
彼らの子どもたち、そしてその子らと同じ学校に通う自分。





〈涙はこぶしでぬぐうものか〉[2019年06月07日(Fri)]

DSCN1009.JPG
ホタルブクロ(螢袋)

*******

◆ケースワーカー、児童福祉司として数知れぬ親子の人生模様に向き合い寄り添ってきた詩人・青木みつおの詩をもう1篇――


涙   青木みつお

涙はこぶしでぬぐうものか
涙は五十にもなった男が
若造の前で流すものか
涙は悪いと知りながら
また飲んでしまう奴が流すものか
会いたくて
息子に会いたくて汽車に乗り
かれは故郷の駅頭で
ひとり無念の涙をこらえた
――あの子の将来を想うなら
  いま会わないで下さい
もう一度ひろげてみた恩師という人の
手紙の文字は同じだった
故郷を捨て
別れて十五年
妻と呼んだ人にも顔向けならず
踏みとどまってきた男は
夜汽車にポケットビンを抱いて帰った

涙はこぶしでぬぐうものか
うすい頭をして
涙はお願いのために流すものか
――もう一度入院さして下さい
  今度こそ
などと
人生がなんであるか
とっくにわかる歳をして

あんなにも望んだ病院の
自動車が出発する時
かれは
悲しい瞳になって
ぴょんと
頭を下げた
うす赤い頭だった

涙はこぶしでぬぐうものか
思えば
汗と涙にまみれた
日本の地図がある
涙はとっておこう
涙はとっておくのだ
もっと大きな悲しみのために
もっと大きな怒りのために


青木みつお『詩集 人間家族』 (あけび書房、1994年)
 *「詩集」に〈バラード〉とルビが付されている。




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