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底知れぬ空に堕ちていく[2019年06月03日(Mon)]

DSCN0974.JPG
枇杷が色づいた。

*******


私たちの内なる戦場   中村稔

砲弾が炸裂する、遠くで、
放心した難民が立ち竦んでいる、すぐそこで、
炎が渦をまいて走る、荒廃した都心の片隅で、
砲弾の破片が飛散する、私の内部で。

私たちは私たちの敵を飼育する、
私たちの肌の色の違いに由来する怖れを、
私たちが彼らと違うことに由来する憎しみを。
私たちの敵の飼料として蕃殖させる。

非難と差別を私たちは存在の証しとする。
肥大した敵は互いに狙撃しあっている、
ひからびた私の内部はすでに戦場になっている。

空は夕焼けにその躰を焦がしている、
底知れぬ空に堕ちていくものたちがある、
葬列がくる日もくる日も続いている。 


『中村稔詩集』より(菅野昭正=解説 芸林21世紀文庫、2003年)

◆肌の色、文化・習慣の違いから生まれる怖れや憎しみを飼料として我々は自らの裡に敵を飼育しているのだという。

ヘイトクライムは分かり易い例だ。
しかし自分はそんなことはしない、と決めてかかっているだけではその増殖を止めることは難しい。
「そんなことはしない」とわが身を棚に上げてそれに気づかないこともまた、差別にほかならないからである。

「底知れぬ空に堕ちていく」ということばに戦慄する。





ひとひらの影[2019年06月03日(Mon)]

DSCN0977.JPG
栗の花の盛んなる生。

*******

◆前回と同じ菅沼美代子の詩集『手』から、この季節にふさわしいもう一篇を。


黙約  菅沼美代子

大きく開いた横顔は
美しい容で そこにあり
緑陰の緑の濃淡の静もりに
ひときわ目立つ麗しさ

そよ吹く風に
頸をかしげ
濃密な匂いを届ける


どこからともなく
ひとひらの影が近づき
周りを巡り
花蘂にからだごと吸い込まれていく

かすかな羽音をたて
ふるえながら突進する黒揚羽
小刻みに揺れる山百合が
激しく反り返り葉ずれがする

みたされたあとは
いく度もいく度も廻って
会釈をするように挨拶する
それに答えるようにやさしく頷く

森がざわめく前に
雨脚が趐を濡らす前に
すっと どこかに居なくなる

雨が止むと
緑がことのほか濃くなる
光を集めたような美しい花になる



◆「顔/容」、「周/巡/廻」「会釈/挨拶」など、連想の促すまま類義語が反復されるが、贅言と意識されないのは音のくり返しを避けているからだろう。

主語を敢えてあいまいにすることで、見る自分と見られる黒揚羽がひとつに重なる。
無言の交感が黙契として了解されていることに、なまめかしさが漂う。

六月は、風に乗り風をあやつる小さな生きものたちから信号を感じ、魅入られてしまうことの多い季節かも知れない。

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