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この地面に続く大地の端で[2019年06月01日(Sat)]

DSCN0960-A.jpg
ドクダミにコガネムシがとまっていた。
珍しい取り合わせにしゃがんで顔を近づけたら、花の香を載せた風が吹き上がってきた。

*******


石に成る  菅沼美代子

夏の匂いを運ぶ風が
行き過ぎる午後
楠の樹の下
このままでよいと思う

小鳥がちいさな声で歌い
幹を啄んでいる
蟻が大きな屑を掲げて
横切っていく

庭から見える景色しか知らない
私だが ふと
この地面に続く大地の端で
戦禍があることを想う
この梢の先に拡がる蒼空の繋がりに
空爆があることを想う

他愛も無い緑に憩う私が
異国の砂礫の町の
淋しい眼の住人を想う

毎日 新聞は事件を伝え
事実だけを伝え
写真は生を伝え
瞬間しか伝えない
動画はこれでもかこれでもかと繰り返される

今日も 殺害という耳障りなことばが
飛び交う

一握りの糧を頑なに握った子の
震えは収まっただろうか
怒りを顕にした母の訴えは
誰かの胸に届いただろうか
そして
置き去りにされた遺体は
埋葬されたであろうか

私たちは夜も日も明けず
サッカーの祭典に現を抜かし
私たちは分かっていることだけをやっている
分かっていることしかやっていない

やがて
耳順う年
楠は黄白色の可憐な花をつけたが
わたしのあたまとこころは
だんだん石に成っていく
若い緑が一層濃くなっていくことに
夢の続きを見る


「耳順う年」…六十歳。「論語」為政編、「六十而耳順(六十にして耳順う)」による。
聞くもの、何らの支障なく理解しうる、という境地。
作者は1953年生まれの由。

詩集『手』(思潮社、2017年)より。

◆楠は老木となっても若々しい花を咲かせ緑の葉を伸ばして行くが、己はその根方で樹に身を任せて転がっている石のように、あたまもこころも柔軟さを減じて行く。
「石になる」ではなく、「石に成る」と漢字を用いたところに、せめて相応の成熟も伴っているようにと己に念じる気持ちもある。
しかし、この石くれは、遠い異国の砂礫の上で、やせこけた子どもが身を震わせているのを確かに感じているのだ。
気にせずに入られぬあれやこれやで、石のごとき不動心に近づくことなどできやしない、と思い知ってもいるのだ。

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