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寝台車に浮かぶ夜[2019年05月09日(Thu)]

DSCN0643コメツブツメクサ.JPG
コメツブツメクサ。
名前の通り、小さな黄色い花。花の姿・大きさは金平糖のよう。

*******

天使  田村驤

ひとつの沈黙がうまれるのは
われわれの頭上で
天使が「時」をさえぎるからだ

二十時三十分青森発 北斗三等寝台車
せまいベッドで眼をひらいている沈黙は
どんな天使がおれの「時」をさえぎったのか

窓の外 石狩平野から
関東平野につづく闇のなかの
あの孤独な何千万の灯をあつめてみても
おれには
おれの天使の顔を見ることができない


*『言葉のない世界』 (昭森社、1962年)の一篇。
現代詩文庫『田村驤齊刻W』(思潮社、1968年)によった。

◆かつて寝台列車というものがあったことすらやがて伝説となるだろうが、伝説にふさわしい幻想の空間に「おれ」は黙したまま、まんじりともせず横たわっている。

横になっていれば駅のポイント(転轍機)を通過するたびに体全体が大きく揺さぶられ、車台のきしみもひときわ大きくなる。だが、その音や振動に全身が弄ばれていながら、「おれ」は沈黙の中に浮かんでいるしかない。
これ以上ない現実が自分を領しているのに、いま「おれ」を見舞っている「孤独」が何と現実から遠く、しかも絶対的なものと感じられることか。
ここで「時」が自分の思うままにならないことは現実界以上なのだから、それは天使のしわざと考えるしかないではないか?(無論、そいつを「悪魔」と呼んでも同じことではあるのだが。)


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